『目的地です』
そうナビの案内を聞いて目をやると、確かに先程狩野弁護士の事務所で見た黒塗りの外車がカーポートの下に停めてある。しかし、ここは一時的に車を停める為だけの言わば「来客用」みたいなもので、屋敷の奥にはしっかりしたシャッター式のガレージが鎮座していた。
どうやらガレージから自宅の中へは直接雨に濡れる事無く入れそうな造りになっている。
そして、河原氏が乗る車の横には、河原氏から知らされていた、ブランドの違う外車が停まっている。こちらは真っ赤なボディで如何にも若い女性が乗りますといった雰囲気だ。
河原京子(29歳)
職業:会社役員(Aドラッグストア)
身長:約165㎝ 体重50㎏弱 容姿は写真参照etc.
登記上は専務取締役になっている。余計だが、零細企業の私なんかより、何倍も役員報酬を貰っているのだろう。そう思うと何だかやり切れない……
この場所からだったら、車以外の交通手段を使う心配は無さそうだ。しかも京子女史が車以外を使う事は、まずあり得ないというのが河原氏の意見だった。
「んっ!? 」
屋敷のドアが開くのを見たので、停めていた車を先へと少し動かす。無関係な場所に路肩に停車していると、真っ赤な外車が私の向いていた方向と反対に出ていくのが見えた。
「…早速かよ! 」
せっかく彼女が外出したのに追い掛けない選択肢は無い。私は、そのまま彼女の車が見えなくなったタイミングで転回し、車の後を追い掛ける。
彼女の乗った車は国道へ出ると右折し、県を更に北へと向かう。もしもドラッグストアAの本社に向かうのであれば、最寄りのインターチェンジは左折になるので会社に出勤する訳でも無さそうだ。
初見なので運転の「癖」を見る。尾行を行う上では大切な作業。
「意外に荒っぽいな… 」
とにかくスピードが出ている。前に車が走っていようものなら、あおり運転とまでは言わないが、車間距離を詰めてあからさまに「圧」をかけて走っている。
前を走る車には申し訳無いが、私には楽な対象者だ。一歩間違えば、追突事故を起こしそうなほど車間を詰めているという事は言い換えれば「後ろを見ていない」という事にも繋がる。ある程度は近付いて尾行が出来る。
彼女がどこへ向かうのか想像すらつかないが、棚ぼた的な結果に結びつかない可能性もゼロでは無い。
「わっ! 」
いきなりハンズフリーに着信があったので尾行に集中していた私はナビの画面を見る。そしてふと、視線をバックミラーへやるとヘッポコYくんとすれ違っていたのが分かった。
「何だよ尾行中か? 」
「いや、今帰る途中っす!社長こそ何やってるっすか? 」
「もしかして、今前を走ってた赤っすか? 」
「そうだよ」
「あからさまに運転しながら携帯で誰かと話してたっすよ。これって… 」
「あぁ、先生から預かった案件だ」
「やっぱりっすねぇ… 」
こいつの話はいつも取り留めが無い。五月蠅かったので「じゃあ、切るな」と言って電話を切った。
(続く)
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