「おや、雨ですね… 」
さっきまで曇天を保っていた天気なのだが、予報に反して雨粒が窓ガラスを叩き付ける音が聞こえてくる。
「まいったなぁ… 」
私はそうぼやきながら、狩野省吾弁護士の方を再び見る。先生は隻眼の瞼を開いて、何かをじっと考えているようだった。こんな時は決まってこの案件の「真実」を見定めている様に思えてしまう。
不思議なもので、毎回こんな時には、既に先生が頭の中で思い描くストーリーが出来上がっていて、私達は、そのストーリーの中にあって、先生が思い描く通りに動かされている様な錯覚を覚えてしまう。もっとも、先生が何かを話した訳では無いので、その結末なんて分かりようもないのだが。
「先生! 」
「んっ!? 」
そんな緊張感を振り払う様に私は先生を呼んだ。
「どこまでいけるか分かりませんが、可能な限り先生が懸念されている事柄についても調べてみます。それで宜しいですか? 」
「…… 」
先生は口元を緩め、フッと一息ついた。
「あぁ、頼りにしているよ梅ちゃん」
その後、私が疑問に思う事を河原氏では無く、先生に質問して、先生も自身が知り得る限りの情報を私に提供してくれた事柄をメモに残し、事務所を後にしたのだった。
事務所の外へ出ると、変わらず雨が降り続いている。梅雨の雨は、調査に良い影響も悪い影響も与えてくれるのだが、この日の雨だけは不便そのものにしか感じない。私はひとつ深呼吸すると覚悟を決めて、車が停まっている場所までの数十メートルを駆けていく。
「だぁぁぁ!濡れちゃった!! 」
訳の分からない独り言を叫びながら私は車へと乗り込んだ。
常備しているタオルで濡れた背広を拭いながら、クライアントから頂いた書類を見る。本社は隣県なので今からすぐに確認のしようも無かったが、自宅は車で30分も飛ばせば行ける場所にある。
迷う事無く、ナビにその住所地を入力して、アクセルを踏んだ。
国道3号線へ出るが、不意打ちで降ってきた雨のせいか、慢性的な渋滞が起きている。こうにも車が進まないと行く事自体を躊躇ってしまうが、事務所に帰って、見飽きた顔の連中からイジメられるよりは幾分かマシだと自分に言い聞かせた。
やがて国道も2車線から細い1車線の対面道路へ変わり、渋滞は深刻になってくる。既に狩野先生の事務所を出てから30分が経過していた。
「はぁ… 」
この溜息は雨へのうんざりか渋滞へのものなのか、いや、その両方だろう…
会社へ帰って憂き目を見たくないくらいのモチベーションでは、この状況には勝てないと、私は頭の中でこっち方面のスィーツを思い浮かべる。
「見えたぁぁ!! 」
一度食べ損ねた「ブルー色のソフトクリーム」がこちら方面だった事を思い出す。すっかり忘れていたが、いつか征服しなければいけないと心に決めていたヤツだ。それを新しいモチベーションアップへと転嫁して、車を走らせていく。
やがて熊本市の境目へと差し掛かり、交差点でハンドルを右へ切る。ナビへ目をやると目的地まではほんの1・5キロくらい。ここまで来れば、どんなに意思の弱い私だって、もう後戻りはしない。
『目的地へ到着しました… 』
ナビが指し示す方向へと目をやった。
(続く)
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