「失礼ですが、ご結婚なさってどれくらい… 」
「あ、えぇと…2年くらいです。再婚です」
「お互いに? 」
「いえ、彼女は初婚です。私が再婚になります。元嫁とはその少し前に離婚しました」
「少し前… 」
自分で言いながら下唇を噛んだ。今、目の前にある事案は、あくまで現在の奥さんの事であり、どんな理由があるにせよ、前の奥さんは関係無いと言えば関係ないだろう。余計な事を聞いた気がして少し後悔してしまう。
「いつ頃から今の奥様の様子がおかしいと? 」
「気付いたのは先月でした。結婚当初からよく友達と遊びに行く事は多かったのですが、最近では深夜や朝方帰ってくる事も多くなって」
「…… 」
「気になってLINEを見たんです。いけない事とは分かっていたのですが… 」
「それで? 」
「驚くほど生々しいやりとりが続いていました。ただ… 」
「ただ? 」
「男とのやり取りが始まっていたのは私と婚姻した時期とそう変わらないのです」
「どういう事ですか? 」
「私にも分からないのです… 」
河原氏はそう言ったきり俯いてしまう。所謂「彼氏ありき」で結婚したというのだろうか。狩野省吾弁護士の方へ視線を移すと、先生も隻眼を開いて口を真一文字に結んだまま、何かを考えているように見えた。
「分かりました。凡そで結構ですが、どのくらいの頻度でお帰りが遅いのでしょう? 」
「特に決まってはいませんが…週に2,3度だと思います」
「結構な頻度ですね…相手についての手掛かりは? 」
「LINEもニックネームの様ですし、今の所は… 」
河原氏はそう言って助け舟でも求めるかの様に狩野省吾弁護士の方を向いた。すると、先生は軽く頷き口を開く。
「梅ちゃん」
「はい? 」
「まさかとは思っているが、一応気になる事はあるんだ」
「何でしょう? 」
「Bというドラッグストアは知っているかな? 」
「はい、勿論…行きつけは河原社長のAですが」
「そうか。実はね、最近そのBの様子がおかしいんだ」
「様子…ですか? 」
「あぁ、ドラッグストアの広告には、毎日それなりの目玉商品…言わば『客寄せ』の商がある。これはスーパーなんかと一緒なんだ。もっとも今は、ほとんどがネットなんだが」
「はぁ… 」
「赤字にならない程度にギリギリまで値段を下げて他の商品の購買も促し、利益を上げるんだが、それが最近、Bも同じ商品を更に価格を下げて広告をぶつけてくる事が何回もあったらしい」
「…… 」
「その時期が河原さん曰くだが、全て重なっているらしいんだ」
「全てって…? 」
「彼女と婚姻した時期、男性とLINEでのやり取りが始まった時期って事さ」
「そうなんですね… 」
ここまでは、単なる「偶然」として片付ける事も想像した。そもそも、いくら企業間で熾烈な価格競争があるにしても、そこまで工作染みた真似はしないだろうと考えていたからだ。
「分かりました。頭の中には入れておきます。河原さん、暫く奥様の行動確認をさせて頂ければ本当の所が分かると思いますよ。安心なさって下さい」
「……はい… 」
目を真っ赤にして頭を下げる河原氏を見ていると少し気の毒になってしまう。ここで詳細を聞く事は無かったが、彼が若い女性に入れあげて前妻と離婚した事は想像に難くなかった。
とりあえず1週間。その約束で了解を得て、通常の「浮気調査」を進める事にした。
(続く)
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