【10時00分】
店員が一礼した後に自動ドアを開くと、いつの間にか長い列を作っていたパチンコファン達が一斉に店内へ入っていく。別に打つ気の無い私は柏原幸広と女性がパチンコを始めるのを見届けるだけなので、まるで人の流れに逆らう様にダラダラと2人の後をついていくだけだ。
暫くすると2人は別れて、それぞれに台を探し始める。あくまで調査対象者は柏原幸広だ。彼が椅子に腰掛けたのを見届けると、彼に背中を向けて店の外へ出ていく事にした。
遊んでいる2人を監視するだけの仕事もなかなかもどかしい。
張り込みをしている最中には、色んな事を考える。どうせここを動かないのなら、もっと他の案件を見に行ってもいいんじゃないかとさえ思えてくるのだが、こんなもどかしい時間こそが私達の「仕事」であって、万にひとつ、2人が出て行ってどこに行ったのか分からなくなったでは許されない。
長時間の張り込みが続く現場だからなのか、私もYくんみたいに軽い「眠気」を感じていた。しかし、ヤツにそんな弱みを見せたならば、一体何をされるか分かったもんじゃない。
店を出て、チラリと車の中を覗くと、Yくんがガンギマリした目で私の方を見ている。ヤツが今日、私に隙を見せる可能性はまず無いだろう。そんな事を考えながらドアを開けた。
「なんでテメェが助手席に座ってんだよ。今日は私が尾行班だろうが」
「何言ってんすか?今日は僕はなんもしないって言った筈っす! 」
「だからって、もしも2人が店を出たらいちいち運転代わんなくちゃいけないから手間だろうが! 」
「いや、これでいいっす! 」
「ケッ! 」
ブツブツ愚痴を言いながら、シートに腰掛ける私。Yくんは余裕の一服を楽しんでいる。
「今夜は早く終わるっすかねぇ… 」
「知らねぇよ… 」
疲労が溜まっているのは2人同じだった。今夜は2人が帰宅すれば、すぐに私達も引き上げるつもりだ。しかし本音はコイツに朝まで見張らせたいっっ!
【12時00分】
定時で2人の様子を見てくるのも、今日は全て私の仕事。いっそ店中にある休憩室のマッサージチェアにでも座って、時間まで思いきり眠ってやろうかと思いながら車を降りた。
そろそろ今日の戦果がある程度見えてくる時間だろう。素人の私にでもそれくらいは分かる。
店内へ入り、柏原幸広が打っていた島へと歩く。遠目だったが、すぐに彼の椅子の横に、山ほどのドル箱が積み上げてあるのが見えた。
「ゲッ!?マジか… 」
今日の柏原幸広は絶好調。彼のにやけけた横顔を見ていても明らかだった。それを見た瞬間、私の早く帰りたいなんて願望は脆くも打ち砕かれた気がした。
「ハァ… 」
大きく溜息をつきながら女性の方へも足を運んだが、これまた絶好調。柏原幸広ほどでは無いにせよ、こちらもなかなかの戦果を挙げている。この調子なら2人とも食事と言わず旅行にでも行きそうな雰囲気だった。
(続く)
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