「洲本ですが… 」
電話の声は友好的には聞こえない。どちらかと言えば「迷惑」を匂わせる様な暗い声だった。
「こんな時間にすみません。今、施設に来ていて… 」
「園に? 」
洲本啓二の声色が変わるのが分かる。
「はい、どうしてもお話したい事があって」
「だったら電話で今、言えばいい」
突き放す様な言葉だった。思わず怯んでしまいそうになったが、勝手な使命感がそれを押しのける。
「すみません。良かったら今から会えませんか? 」
「今から? 」
「はい、迷惑かも知れないけど、そう思って熊本から出てきました」
「…… 」
家へ行くと申し出てみたが、彼はそれを拒んで渋々ここへ来る事を承諾した。そしてほんの数分後、近くへ住んでいるのだろうか洲本啓二は歩いて私の元へ来る。
「すみません。こんな時間に」
そう言って頭を下げたが、彼は無言のままで、表情はどちらかと言えば不機嫌そうに見える。
「あの…今回の事、まだ家族にも話してないんだよね。だからいきなりそんな事言われると困るんだけど」
そのひと言を聞いて、未だ木下幸代さんが彼にとって「家族」でない事を悟らされる。心中では頭を抱え込むが、そんな態度はお首にも出さず話を続けた。
「本当にこの間から何度も申し訳無いとは思っています。だけど、どうしても話しておかなくてはならないと思って… 」
すると洲本啓二は私が考えもしなかった事を口にした。
「なんだ?あんた、そうまでしないとその木下さんとやらに金貰えないのか? 」
思わぬ方向から飛んで来た言葉につい、カチンときてしまったが、彼の身になれば分からない話でも無い。そう自分に言い聞かせ、冷静に対応する事だけを心掛けた。
「そんな事ありません。実際に依頼された仕事の料金は木下さんから頂きました。そうじゃないんです。私が言いたい事は… 」
「だったらそこから先は俺の好きにさせてくれよ! 」
私の急な思い付きと勝手な行動が、彼を怒らせてしまった。そう思い多少後悔もしたが遅い。昔、悪かったらしい彼の目には私を委縮させる為のギラギラした光が宿っている。これまでとは違った緊張感が、2人の間を支配していた。
何とかこの空気を変えたかったが妙案も浮かばず…内心は焦るばかり。しかし、どうしても伝えるべき事は伝えたくて、思わず言った言葉だった。
「あの…私の事が信用出来ないのは分かります。いきなり現れたご家族の話を不快に思われる気持ちも分からないじゃない!だけど…こっちにも時間が無いんです… 」
頭を深々と下げたまま言う私に対し、洲本啓二は問いかけた。
「……時間? 」
「はい、時間です。今日、彼女から呼ばれて入院されている市立病院へ行ってきました。だけど、私が思っていたよりも深刻らしくて、彼女は鼻腔に管を通された状態で身体も自分では起こせないんです!だから… 」
一方通行でも仕方が無いと諦め、自分の見た事、考えた事を一頻り休む暇なく話した。そんな私の勢いに押されて、洲本啓二はその後ずっと黙ったままだった。
(続く)
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