オトナのための数学キソ32 数学教育をめぐる「伝達」と「創造」 そして第三の道へ | 母親ひとり親の医療の学校の受験・修学手助けします

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『算数教育の理論と実際(山口武志)』で山口さんは数学教育の大きな二つの流れを手際よくまとめています。

 

A「もし,数学を人間とは独立して先在する絶対的な知識体系であると捉え,その知識体系を効率よく生徒に伝達することが大切であるという指導観に立つならば,知識の伝達を中心とした数学の授業になるかもしれない。」

 

B「一方,数学は人間が創造したものであるから,授業では生徒による数学の創造過程を重視すべきであるという指導観に立つならば,生徒の活動や多様な考えを重視した授業になると考えられる」

 

「このように教師のもつ数学観や数学教育観はその教師の授業構成や実際の指導に決定的な影響を及ぼす。」

 

ただし

ここでは数学の専門家ではなく、標準的な子が普通教育で学ぶ数学ということに限って話を進めます。

普通教育は「能力教育」であって「才能教育」を求めるものではないことに注意しましょう。

Aを「伝達的数学観」とBを「創造的数学観」と呼びましょう。

 

みなさん日本のほとんどの教員がAの考え方をしていることを経験していると思います。

この場合小・中学校で教わる内容が身についていないと高校での数学には全く歯が立たないことになります。

 

高校での数学の授業を例に取るなら

入試レベルの低い学校では

授業時間の都合上

実質高校での数学をあきらめ小・中学校の学び直しをするか

単なる計算問題として解き方を丸暗記させているのが現状です。

 

数学の授業は単に必修科目の卒業単位を満たすためにやっていることになります。

 

それに対して

Bの立場から考えると

小・中学校での積み重ねがなくとも高校での数学教育は可能であるということになります。

 

「できるだけ多くの数学上の定理や公式とその使い方を教えこむという姿勢でなく,数学的認識の世界を広げる体験をつみ重ねることを重視する。この体験を重ねることなしに文化としての数学をつかみ数学的思考を形成することは困難である。卒業後も機会さえあれば数学とつきあってみたくなるような出合いをつくることをめざす。」

『数学バンザイ! : これでいいのか、高校での数学教育(増島高敬)』より (amazon Kindle Unlimited 会員はただで読めます)

 

わたしは増島さんの考え方は大変好きなのですが

AかBどちらかが正しいのではなく

現実にはAもBも両立させなければ数学教育は成り立たないと考えています。

(Aだけの考え方をすればどれだけレベルが高くとも数学は実用の奴隷になってしまいかねません)

 

実際に数を扱うときには数に慣れることは大切なのです。

わたしは「数」を一種の言葉、「数言語」としてとらえています。

記号を使っての観念・概念のやりとりをする点では自然言語(普通の言葉)と全く同じものです。

 言葉を身につける初歩では学ぶよりも慣れることの方が効果があります。

考えるよりも慣れる方が大切、効果的であることが多いのです。

そして何よりも限られた時間の中で時間の節約になります。

 

たいてい習慣になると考えるのではなく脳での「反射」という働きに変わります。

それが慣れるということです。

特別な訓練をしなければ人は考え続けることはできません。

人にとって考えるということは大変気力を必要とするものだからです。

 

ですから

子ども大人にかかわらず

まず、基本になることは慣れることで反射に変える必要があるのです。

そうして初めて考えることを始めることができます。

ここでの慣れるとは百マス計算のようなことだけを指すのではありません。

その点ではインド式計算のように一定の法則性と反射行為を結びつけた方法の方が合理的です。

実際に、インド式計算では発見が大切な要素になっています。

 

考えるための反射を作ることが数学(言葉)を学ぶときの大切な基礎になります。

基本概念を形として身につけることは考えるためには必要なことです。

これまでそのことが訓練としてあまり合理的に行われてこなかったのでAとBの考え方を対立させることになったと考えます。

 

わたしはすでに数学を捨ててしまった子、大人たちに受験のために数学の基礎をどう訓練するかここ十数年来考え続けてきました。

そのための訓練方法を考えてきました。

これからもより効果的にできるように改良していきます。