オトナのための国語キソ7 キミは本当の漢字を知らない? | 母親ひとり親の医療の学校の受験・修学手助けします

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昭和20年以前に生まれた人は今の漢字の多くがもともとの形ではないことを知っていると思います。

すべての漢字がそうではありませんが多くの漢字が今とは違った形をしていました。

 

今の漢字の多くが本当の漢字ではないとはどんなことでしょうか?

 

漢字の総数は少なく見積もると6万字、多く見積もると8万字を越えます。

(異字体と呼ばれるものを含めると10万字を軽く越えます)

それでも敗戦前は漢字に対する規制はまったくありませんでした。

 

敗戦による日本国の制度改革で

1946年(昭和21年)内閣が漢字使用を制限することを指示しました。

 

そのときに告示されたのが「当用漢字表」でした。当用漢字表に載っている1850字の漢字を当用漢字と呼びました。「当用」とは「さしあたって使う」という意味です。

なぜ、さしあたってかと言えば

当時、漢字廃止を強く主張する人たちの勢力が強かったからです。

流れとしては明日にも漢字が廃止されてもおかしくない状況でした。

 

その理由として

当時のGHQ(連合軍総司令部)の日本語ローマ字化の意向や

漢字が軍国主義と結びついていた印象がありました。

 

その時、政府は漢字制限ではなく漢字使用の目安を示していると説明しました。

一方、学習指導要領では義務教育の国語で読みを習う範囲として指示しました。

(当然、書く範囲もそうなりました)

 

役所で公文書で使う漢字も「当用漢字(常用漢字)」の範囲とされました。

それから現在に至るまで

日本の主な報道機関は新聞常用漢字表に基づき、各社で多少手を加えて、漢字使用の基準としています。

 

当用漢字の選び方の基本は第一に「日本国憲法」で使っている漢字をすべて収めるということでした。

だから、一見なぜという漢字も入っています。

有名なものには「朕」がありますね。(前文で使っています)

その上で必要な字が選ばれました。

 

その後

漢字廃止の流れはほとんどなくなり

2010年にさしあたってから

普段使うという意味で「常用漢字表」と呼び名が変わりました。

 

現在、「人名用漢字(863字)」と「常用漢字(2136字)」の合計は2999字。

 

「当用漢字表」では1850字のうち131字が簡易字体で示され

続いて1949年に告示された「当用漢字字体表」により約500字が簡易字体となりました。

1951年には当用漢字以外で子供の名付けに使うことができる漢字を示す人名用漢字別表が告示され

この中には「彦」「穣」「聡」「蘭」のように当用漢字に合わせて字体整理がされた簡易字体のものがあります。

1950年代以降活字の改刻が進むと、印刷物の漢字はほぼ全面的に新字体に切り替えられました。

 

そういう訳で

約680字ほどがもともとの形とは違った字体になっています。

 

「新字体」と「旧字体」の違いがあるものから「旧字体」を挙げてみましょう。(答えは最後に)

①     「龍」は人名用漢字にはいっていますから分かると思います。

では

 

②「聲」は新字体ではどの字?よく見たら何の字か分かります。

では、これは

 

③「盬」?

この字は実は平安時代のうちから略字が使われていました。そのことは徒然草に書かれています。

普段よく使う字のわりに画数が多すぎますから。

 

このように画数の多い漢字は覚えにくい、手書きにする時に効率が悪いという理由で画数の少ない字体に変更されています。

 

しかし

ややっこしいのは、すべての漢字に新字体が作られたのではなく、「当用漢字」(現在では「常用漢字」に変更)のみに新字体が作られたことです。

 

ですから

同じ構成パーツ(部首・旁など)からできている漢字でも当用漢字に含まれていないものには全く簡略化されていません。(正しい書き方の基準さえないのですから当然のことです)

 

さらに当用漢字内でも簡略化に一貫したルールがないということです。

 

「瀧」は「龍」を「竜」に簡略化して「滝」となったが、「襲」は簡略化されていない。

「獨」は「蜀」を「虫」に簡略化して「独」・「触」となったが、「濁」は簡略化されていない。

「佛」・「拂」は「弗」を「厶」に簡略化して「仏」・「払」となったが、「沸」・「費」は簡略化されていない。

 

そして

一画減らすために点をなくしてかえって混乱させてしまった字もあります。

 

器 → 器 淚 → 涙 臭と嗅

 

その上

コンピュータの性能が低かった時代に

会社の都合で勝手に作り替えられた漢字がありました。

その例として「濤」と「涛」があります。

「壽」は新字体では「寿」に変わっていますが

「濤」は表外の字なので放っておかれました。

 

今と違ってディスプレイに細かい字を表示できず、プリンターでも印字できなかったので

会社の判断でかってに漢字を作ったのです。

その内に実在する字として扱われるようになってしまいました。

 

このような事情を知ってしまうと本来漢字の書き方の幅が大きかったことが実感されます。

今回は詳しく説明しませんが

漢字を使うどの国でも文字改革がされるまでは漢字の書き方はかなりルーズでした。

 

確かにどの字か区別できない字を書かれると困りますが

本来、漢字は自由なものでした。

わたしは漢字をお手本からのわずかな違いで誤りとすることに違和感を覚えます。

 

【答え】①竜 ②声 ③塩