注意
この記事はオランダの公教育の紹介であり、わたしは全面的にオランダの公教育を支持するものではありません。
オランダの公教育の理解はリヒテル直子の『公教育をイチから考えよう』『イエナプラン教育 共に生きることを学ぶ学校(1)~(3)』、水島治郎『オランダモデルの光と影』によります。
オランダの公教育の目的は「人としてよりよく生きること」すなわち、福祉と同じ目的になります。
まず、福祉とはwelfareの訳ですが、日本の福祉はwelfareではありません(わたしの感想)
「welfare」は「well 健康である、健全である」+「fare 〔人がある様態で〕やっていく」からできている。→「よりよく生きること」
「福祉」は日本国憲法でいう「健康で文化的な最低限度の生活」をからきています。
「welfare」の本来のニュアンスは「健康で文化的な(=よりよい)生活」にある。
ところが、日本では「最低限度の生活」の方に重点がいっている。
もともと「よりよく生きること」を目指すのは人として当然のこと、だから、法がそれを守ろうとしただけです。
ところが、日本では国家が貧乏人にほどこすものが「福祉」であると読み違えられています。
自営業者には異様なまでに「福祉」が嫌いな人がいるが、その拒否反応の理由はいわゆる「福祉ただ乗り論」にあります。
法人(企業)なら法人税は一定で、赤字なら税制でいろいろな保護があり、自分や家族を従業員にしてしまえば給与所得者になり特典がある。
ところが、自営業者は困ったとき国が助けてくれないので、もうかったときに少しでも財産を残しておきたい。それなのに、個人として累進課税されます。努力してもうけるほど税率が高くなるわけです。
その税金から福祉の財源になります。感情では自営業者が反福祉になるのは自然だと思います。
(わたしも自営業なので、この考え方に賛成はしませんが、確かに同感はします)
話を戻しましょう。
オランダでは、人が「よりよく生きるため」の手段が教育であり、だから、教育の最終目的が「福祉=よりよく生きること」になる。
そのオランダの教育(学校教育・社会教育)の基本的な考え方になっているのが「イエナプラン教育」です。
『教育は学校だけの独占物ではなく「社会において、平和で民主的な社会を共同で築いていくことができるようになるために学ぶ」。
子どもたちは「自分自身を大切にすることや、自らが属する集団を大切にすること」ことを学び、「自分が何をどう学ぶかについては自分自身で決める自由を多く与えられる」』という考え方です。
◎イエナ プラン・スクール で 働く人たちが自らを振り返るための枠組としての8つの基本原則
()内はわたしが解説部分を要約したもの。
1. インクルーシブな考え方を育てる(自分の利益と集団の利益をいっしょに図る)
2. 学校のあり方を人間的で民主的なものとする(子どもも大人も皆で一緒に決定する)
3. 対話(お互いに話しかけられ説明される)
4.教育の人間学化(子どもを養い育てることが、教育よりも優先される)
5.ホンモノ性(大人も子どもも、可能な限り、あるがままのホンモノの自分自身でなければならない)
6.自由(みんなで一緒に責任をもつ)
7. 批判的思考を育てる(答えを問い直す)
8. 創造性(創造性が共感にとって重要である)
実は「教育福祉説」はわたしが公立学校の現役教員だったころ別の意味で使っていました。
『高校には「教育」の対象の学校と「福祉」の対象の学校がある。福祉の対象の学校は学歴を与え、貧困の再生産を最低限防ぐことに目的がある。』
この現実を否定しませんし、批判も拒みません。
ただ、子どもたちのために仕事をしてきたことだけは決して否定する気はありません。
わたしはどちらかといえば、イエナプラン教育には好感をもっています。
ただ、全面的に支持するわけではないとしているのは、わたしが訓練優先主義をとっているからです。
ヒトは自然の状態で自分をコントロールすることはありません。
ヒトは訓練で人になるのです。
自律とは訓練の成果なのです。
人にとって大事なのは学習以前に自律の能力です。
このことがわたしの事業の根本にあります。