しばらくすると今日子はビールと適当な乾き物を載せた皿を持って現れた。
「どうぞ!まだ、冷蔵庫に沢山あるから、後は適当に・・・」
そう言いながら彼女は缶ビールのを開けると一気の飲み干した。
「それで?何を言いに来たの?」
「何があったんだい?」
そんな私の言葉に彼女は少しだけ意外そうな顔をした。
「別れましょう!って言ったの・・彼に昨夜、下田のホテルで・・」
「君と彼はやはり付き合って居たんだ・・で?何でだい?」
「何で?そうね!彼には奥さんも小さな子供も居るしね!まぁ~簡単に言えば疲れちゃったって感じかな!」
今日子はきっと、次に言う私の言葉を予測していたに違いない。
「そうか!良かったら話してみなよ!君の心の闇を!誰かに話したらきっと、少しは軽くなると思うから・・」
もう一度、今日子は意外そうな顔をして顔をしかめた。
きっと、彼女が予測していた言葉は、チャーリーと寄りを戻せという私の説得の言葉だったに違いない。
今日子は少しだけ口元をゆるめ冷蔵庫からビールを取り出した。
そしてひと口、口に含むと自分の心の闇を私に語りだした。
「彼と私が初めて出会ったのは今から6年も前の事よ!彼の一目ぼれだった!彼はまだ、独身でね会社なんか継ぐ気なんかまったく無くってフリーのカメラマンをしていたの。
実は私も彼が前社長の息子だなんて知らなかった。
二人が愛し合うようになるのにそんなに時間はかからなった!付き合い始めて直ぐに彼が私のアパートに転がり込んで来て同棲が始まって・・彼はまったく無名なカメラマンで経済力も無かったけど幸せだった。
でも、付き合い始めてしばらくすると一人の男が私のアパートを訪ねて来た。
私も良く知っている社長の執事のような仕事をしてる社員だった。
ドアを私が開いた瞬間に彼は少しだけ驚いたような顔をした。それと同時に少しだけニャって笑った。
その時、初めてチャーリーが社長の一人息子だと知った。
社長は一日も早く彼に後継者教育を始めたいと思っていたの!当時、アメリカの本社では色々とゴタゴタがあってね!だからだと思うんだけど・・・」
そんな話をしながら今日子はテーブルの上に置いてあったタバコに火を着ける。少しだけ興奮してるように感じられた。
「それでね!その社員が何度も何度もチァーリーを説得に来たわ!その裏で私に彼が実家に戻る事を説得するように頼まれた。報酬は役員にしてくれる事・・
正直、心が揺らいだわ!別に彼が実家に戻っても私達の愛は変わらないと思ったしそれよりなにより役員になれる事は凄い私にとって魅力だった!
でも、私の考えは甘かった。結局、私の説得で彼は実家に戻り専務として会社に来たの・・・
それからしばらくして私は異例の人事で役員になった。
まぁ~正直、見せ掛けだけの営業部長って感じよ!今でも実権は私には無いしね!
それでも私とチァーリーは幸せだった。でも、それから1年後、彼は結婚したわ!
何でよ!って私は彼を怒鳴りつけた!でも、彼は少しだけ悲しそうな目で私を見つめ呟いた・・
「君のせいだよ!」って・・でも、君と僕は別れたくない!って言われて結局は今まで付き合っていた。
君のせいだよ!その言葉が今でも耳から離れないのよ!
そう!彼が私を捨てたのは私のせいなの!
社長になると言う事は奇麗事だけじぁ無いのよ!そうなの・・私は当時、それを知らなかった。
私は彼から逃げるようにアメリカから日本に移動届けを提出したの!
彼がそれで諦めてくれると思ったから・・でも、ダメだった・・」
「彼と実は温泉で会ったんだ!彼は言っていたよ!私には日本人の妻が居るんだと!
だから、日本語が上手なんだとね!」
「フフフ・・ッ!坂本さん!あなたも少し甘いわね!彼はあなたが私の接待の相手だと事前に知っていたのよ!
だから、そんな事を言った!あの女は俺の女なんだぞ!って感じよ!
彼、本当は凄いヤキモチ焼きで寂しがり屋なのよ!なんか、かわいそうな人なの・・」
「そうか!それで・・別れようと?でも、何で別れようと?今のままでも良かったじゃ無いか?
どうにもならない恋だけどお互いが愛し合っていたんだろ?」
そんな私の言葉に今日子は少しだけ悲しそうな顔をして呟いた。
「あなたのせいよ!あなたに出会ってしまったせい・・私ね!あなたを愛してしまったようなの・・・」
私はそんな今日子の言葉に何も言えずに2本目のタバコに震える手で火をつけた・・