それは・・それで良いんじゃないの? | 僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

「部屋に戻ってもう少し飲まないか?」


そう私は、何時もはお客に絶対に言わない自分の希望を言った。


なぜに私が今日子にそんな事を言ったのか自分でもよく解らない・・


もしかしたら、その時の時間が12時前だったからかもしれない。


12時を過ぎれば、また、彼女はお客様に変わってしまう。


今日子の今日は休日だから、無礼講で!と言う言葉を忠実に守っていた訳でないが・・


それは、私が仕事をする上での信念とでも言うべきものかもしれない。


「そうね!飲み直しましょうか?でも、汗だけ流したいのよ!お風呂に入る時間を頂けるかしら?」


「ならば、1時間後に君の部屋に行くよ!」


「いいえ・・30分後で結構よ!」


そんな会話を済ませ私は自分の部屋に戻った。


部屋に戻り私の大浴場に行き着替える事にした。


大浴場に入ると先客が一人、気持ち良さそうに温泉につかっていた。


どうやら外国人のようである。


私は手早く体を清めると「ソ~リ~」と申し訳なさ程度の英語で温泉に入った。


「旅の方ですか??」


そう流暢な日本で聞かれ私は一瞬、驚いたような表情をした。


「日本語がお上手なのですね!」


そう私が言うと彼は嬉しそうに・・


「ワイフが日本人なものでね!自然と覚えてしまいました!」と呟く。


年のころは40歳を少し過ぎた頃であろうか?何となく貴賓を感じる男である。


「自分の部屋にも内湯があるのですが、どうも狭い風呂が嫌いでね!」


内湯と言う事はどうやら、スイートの客らしい、ある程度の地位か金がある人間に違いない。


「私は仕事なんですよ!接待と言う奴です!なんとも色気が無い話で・・・」


「ほぉ~仕事ですか・・それはお忙しい。もう、終わられたのですか?」


「いいえ・・これからまた、飲まなくていけないんです。でも、明日でお役御免ですから・・」


「そうですか!それはお可愛そうに・・もしも、予定が無いのなら一杯、お付き合い頂こうと思っていたのですが!

残念です!それでは、私はこれで・・」


そう言うと彼は温泉を出て脱衣場に向った。


私は彼が脱衣場から出るのを確認して温泉を出た。どうも、旅先のこのような交流は苦手である。


温泉を出ると今日子の部屋に向った。


何度か呼び鈴を押したが返事が無い。ドアは開いていたので勝手に入らせてもらった。


「だからね!仕事なのよ!無理よ!会えないわ!今から担当者が打ち合わせにくるの!

チャーリー我侭を言わないで!お願いだから・・」


仕切られた襖の向こう側で今日子のそんな声がした。


どうやら誰かと電話をしてるらしい・・


チャーリー?何処かで聞き覚えのある名前であったが思い出せない。


しかし、電話の相手が美代子が言っていた今日子が付き合っている厄介な男に違いが無い。


どうやら聞いてはいけない電話を聞いてしまったらしい・・


私はもう一度、静かに部屋を出ると数回、呼び鈴を押した。


すると何食わぬ顔で今日子が部屋のドアを開ける。


「ビールとつまみを買ってきましたから!」


そう私が言うと嬉しそうに彼女は笑った。


私服の時は違い、浴衣に着替えた彼女はより美しさを増してるように思えた。


浴衣から見え隠れする胸の膨らみになんとなくドキドキ感を覚える。


「さら~飲みましょう!誠!」


「そうだな!今日子!」


私はそう言いながらチラッと時計を見た。あと、三時間程で今日が終わる。


12時を過ぎたら、今日子は消えてしまいお客の木村今日子になってしまう。


少しだけ寂しいと思ってしうまう自分をなんとなく哀れに感じた。


それにしてもチャーリーと言う名前が気になる・・


いつたい、何処で聞いたのだろう?


そんな感じで私達二人の最後の夜が始まった。