国道1号線を三島から芦ノ湖方面に上って行く。
きついカーブが何度も連続してありバイク乗りには何とも楽しいコースである。
芦ノ湖を過ぎるとそのまま強羅方面に向かい途中のレストランで食事をした。
「芦ノ湖まで戻って遊覧船に乗りましょうよ!」
今日子のそんな提案で強羅方面から再び芦ノ湖に戻り1時間ちょっとのクルージングとしゃれ込んだ。
「これから何処に行く?」
時計を見ると2時を少しだけ過ぎていた。
「見せたい物があるんだ!このまま伊豆スカに乗って一気に稲取方面に行くけど大丈夫かい?」
そんな私の言葉に「馬鹿にするな!」と言いたげに今日子はガッツポーズをしながら笑った。
お気に入りの場所があるんだ!凄くステキな夕日が見れる・・
昔はよく行っていたんだ!一人で・・
辛い事や生きる事に負けそうな時・・そんな景色が僕に勇気をくれた・・
丁度、海に太陽が傾き始めた頃・・私達は目的地の岬に到着しょうとしていた。
海面に真っ赤な夕日が沈もうとしていた・・
「うゎ~~~~~綺麗・・」
それを見た今日子は感動の雄叫びを上げた。
「綺麗だろ!ここの夕日・・・なんとなく心が洗われる気がしないか?
そして、自分の悩みなんて凄くちっぽけな気がするんだ!」
二人で何も話さずにただ、夕日を見つめていた。
不意に私の右手に温もりを感じた・・・
柔らかい今日子の手が何時の間にか私の手をしっかりと握っていた・・
真っ赤な夕日が今日子の横顔を赤く染めていた・・
「綺麗だ!」
思わずわたしは呟いてしまった。
「えっ?」
今日子は驚いたようにそう言うと私の顔を見つめた。
「い・・いや!夕日が、夕日が綺麗だと言ったんだよ!」
そんな私の苦しい言い訳に今日子は楽しそうに笑った。
「そろそろ行きましょうか?キャンプ場はここから1時間くらいかかりますから・・」
私はそんな重い空気を誤魔化すかのようにそう呟いた。
午後の6時・・
私達は綺麗に舗装された山道をひたすら頂上に向けて走っていた。
村おこしなどと言われ一時期のキャンプブームに乗っかって村が完全装備のキャンプ場を作ったのは10年程前の事である。
しかし、夏などは多くのキャンパーで活気がある山奥のキャンプ場も今の時期はすれ違う車さえ無い。
深い森を抜けると急に大きな近代的なキャンプ場が目の前に広がった。
こうこうとナイター設備の大型ライトがキャンプ場を照らしトイレやバーベキュー施設も充実している。
こんな設備をタダ同然で使えるのだから何とも有難い。
キャンプ場には2台の大型キャンピングカーと数個のテントが立てられていた。
まるで何処かの戦場の常駐キャンプのようである。
それを取り囲むように30台ほどのバイクが止まっていた。
私と今日子はバイクを降りるとゆっくりとテントに向う。
もう、酔っ払ってるライダーも数人見かけた。
「勝又!なんだ!随分と大掛かりに集まったじゃないか!」
「ああ・・最近、ここで宴会やってなかったからな!連絡入れたら皆、早退して大集合だよ!
まったく!ライダーって奴は・・」
ライダーって奴は・・しょうもない!
それが勝又の口癖だ!一番、しょうもない男の口癖がこれなんだから、目も当てられない。
女性グループが夕食の用意をしていた。今日子は自然とその輪に紛れ込みバーベキューの用意を始める。
「坂本!まぁ~一杯飲めよ!」
勝又が私にビールを差し出す。
「すまん!これでも一応は接待中なんだ!酔っ払う訳にはいかない!」
そう私が言うとあまりにも勝又が寂しそうな顔をするので、私は居たたまれなく「今夜は!無礼講だ!」と叫んだ!
そう、その言葉は自分自身に言った言葉・・
それに、ここまで皆がやってくれたのにくだらない事でへそを曲げる女ならこちらから願い下げだ!
「乾杯!坂本!お帰り!!」
あちらこちらでそんな乾杯の言葉が聞こえる!
「奥さん!おめでとう!幸せになってね!」
食事の準備をしていた今日子に皆がビール片手にそう言いながらビールを注ぎに行く!
オイオイ・・披露宴かよ!思わずそう突っ込みたくなったが、何だか嬉しくなって、そんな野暮な事を言うのは止めにした。
今日子は今日子で楽しんでいるようであった。
そうやら、何気に私のサプライズ接待は成功したように思えた・・・
「花火やろうぜ!」
静寂に包まれた森の中で・・季節外れの花火が何とも綺麗に咲き溢れていた・・・
「楽しいね!」
「ああ・・楽しいだろ!」
私達二人は、そう言い合いながら万遍の夜空の星を見上げた・・