ホテルに着くとロビーに既に桜と本間が座っていた。
「ご苦労様でした!つまらない事をお願いして悪かったな!」と
そんな私の言葉に桜は不機嫌そうに私を睨みつける。
「処でお前は何で一緒に来たんだ?今日の午前中に来るはじゃ無かったのか?」
そう私が本間に聞くと本間はバツが悪そうに言った。
「実は昨夜、偶然に飲み屋で桜先生にお会いしましてね!友美の家を知らないので連れて行けと脅迫されまして!」
なんとなく桜らしいと私は思った。
「それではこれで邪魔者は退散いたします!302が私の部屋なので何かありましたら先生!ご連絡をしてください!」
そう本間は言うと深々と頭を下げてその場を去って行った。
「可愛いわね!あの子!なんとなく好きよ!あんな感じの子・・」
そんな本間を見つめながら桜はそう呟いた。
「お前にしては珍しいな!編集者嫌いで有名だぞ!いじめも程ほどにしておけよ!」
そう私が言うと桜は怒ったように言う
「アホばかりでね!使えない奴が多いだけよ!別にいじめてなんか無いわよ!
失礼ね!こんな心優しい美人に向って!」
そう言うと桜は静かに立ち上がる。
「夕ご飯はまだなんでしょ!ここの中華は結構、評判が良いのよ!レストランに行きましょうよ!」
そう言うと勝手に一人で歩き出した。
レストランのテーブルにつくと直ぐにお酒を注文する。
「お前、少しはセーブしないと肝臓をやられるぞ!」
そう私が言うと笑いながら桜は言った。
「そんな柔な女じゃ生憎、無いもので・・」と
桜が勘定はあなた持ちね!なんて言いながら勝手に料理を注文する。
次々に高そうな名前も知らない料理が運ばれて来た。
「ねぇ~あんた、何であの女に肩入れするの?」
不意に桜がうつろな目で私を見つめそう問いかけた。
「いや・・別にそんな深い意味は!隣同士だろ声が聞こえるんだ!彼女、相当、旦那に酷い目に合わされているようで!今回の山梨の件でも・・」
そう私が言うと桜は・・
「そう、随分と優しくなったのね!離婚したせいかしら?」と言った。
「お前、よく知ってるな!俺が離婚した事を・・」
「ええ・・匂いがするのよ!あんたからそんな匂いがね!」
そう言いながら桜はタバコに火をつけた。
「本間ちゃん!だっけ!あんたあの子の事はどう思ってるのよ?」
「本間?別に何とも思っていないよ!あいつは唯の俺の担当者だもの!」
「あらあら・・相変わらず鈍い男ね!本当に・・こんな男が恋愛小説書いてるなんて知ったら読者は幻滅ね!」
「何だよ!それ・・失礼だぞ!」
「ふっ・・そうしてむきになる所も昔のまんまね!ねぇ~一つ聞いて良いかしら?」
「なんだい?」
「あなた、何で私の前から消えたの?私が離婚した頃から私を避けていたでしょ?」
「そんな事は無いよ!別に避けていた訳ではない。あの頃から丁度、忙しくなって来たし君も忙しかっただろ?頻繁に新刊を出していたじゃないか?」
そう私が言うと一瞬の沈黙が流れた・・
「周りの皆があなたの悪口を言っていたわ!あなたは冷たい男だと!器が小さい男だと!」
「君もそう思ったのか?私が君に嫉妬して君を避けるようになったと・・」
「いいえ!私は知っていたから!あなたが苦しんでいた事を、でもね!誠、結果的にはあなたは逃げたのよ!私と言う人間からね!そして勝手に自分で思い込んでいる罪から」
私は震える手でタバコを取り出すと火をつけた。
「俺が逃げてたって君から?」
「ええ・・そう、私から逃げたのよ!自分を守るためにね!」
「それは侵害だな!だから言っただろ忙しくなったって!」
「だから私も言ったでしょ!あなたの気持ちは全部、知っていたと」
私の心をえぐるようなそんな桜の言葉・・
私の目から何時の間にか涙が溢れ出す。
「俺の苦しみを全てお前は知っていたと言うのか?」
「ええ・・そうよ!あなたの勝手な思い込みの苦しみをね!」
「戯言だな・・それを優しさと感じろとでも言うのかい?」
「違うわよ!私の憎しみと感じて欲しいだけ・・」
そう呟いた桜の目から涙が一筋だけ流れた。