多分!続く・・№21(新たな出会い・・) | 僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

私は数ヶ月住んだ東京を後にし静岡に帰る事にした。

仕事の上は東京に残った方が便利は良かったのだがなんとなく現実から逃げたかったのかもしれない。

東京の仕事場を解約して静岡の三島に戻って来たのは10月の事で新たな生活が始まろうとしていた。

三島の直ぐ隣に伊豆の国市と言う市がある。そこの伊豆長岡と言う町に私はマンションを借りる事にした。独身の30男で至極曖昧な職業に駅を降りて直ぐに店を構えている不動産屋の主人は少しだけ顔をしかめる。

しかし、なんとか無理を言って2LDKのコーポタイプのアパートの契約に辿り着く事が出来た。駅から徒歩12分!2LDKの駐車場付きで家賃は6万6千円なり!

しばらくはこの部屋が仕事場兼住居になる。もう少し落ち着いたら修善寺の温泉付きマンションでも買って仕事場にしょうか?などといらない妄想を膨らませながら引越しを済ませる。

引越しをした当日の夜に簡単な挨拶の品物を持ってアパートの住人の家を挨拶に廻った。

アパートには8組の部屋があり小さな子供が居る家が3軒であとは独身者のようである。

最近は引越しの挨拶などする人間は珍しいようだ!そんな珍しい事を丁寧にする私は住人たちは物珍しそうに笑顔で迎えてくれた。

7軒を右から順番に訪れ最後に私は隣の部屋のチャイムを鳴らす。

玄関が開き中から一人の男が不機嫌そうに顔をだした。

そしてその後ろには一人の女性が立っていた。

男はめがねをかけていて痩せた神経質そうな顔立ちである。そして後ろで私を見つめている女性は髪の長い痩せ気味の美人であった。

新婚夫婦なのか?表札に名前は書いてない。子供のどうやら居ないようである。

「この度、隣に引っ越して来ました。坂本と申します!ヨロシクお願いいたします!

これはつまらない物ですがご挨拶代わりに・・」

そう言いながら差し出した菓子の箱を見つめその男は不機嫌そうに言った。

「つまならない物ならいりません!持って帰ってください!」と

私は思わず顔をしかめてしまった。それと同時に厄介な隣人の登場に何とも言い表せない不安を感じた。

「あなた!何を失礼な事を!申し訳ございません!本田と申します。ヨロシクお願いいたします。」

そう慌てて妻らしき女性の方が私に頭を下げる。

それが友美との最初の出会いであった。

私はバツが悪そうに彼女の菓子の箱を手渡す。そして嫌味交じりに呟いた。

「東京の有名店のお菓子です!結構な値段のするお菓子です!美味しいですよ!」と

そんな私の言葉に旦那は苦虫を潰したような顔になり友美は楽しそうに笑っていた。

引越しが無事に終わり数日後過ぎ私の生活はまるで何事も無かったように普通に戻りつつあった。朝は4時に起きてテープレコーダーを片手に散歩に出かける。そして歩きながら頭に浮かんだ言葉を録音しながら1時間程の散歩を楽しむ。それは昔からの習慣だ。

家に帰るとシャワーを浴びて米を炊き朝ごはんを食べてから散歩の時に録音した言葉をノートに書き写す。いつもならここで仕事場に出かける。

何も変わらない生活。一つ変わったと言えば、そこに娘の喧しい泣き声と笑い声が聞こえない事だけであろうか?

今は仕事場に向う事も無いので朝食を済ませるとコーヒーを飲みながらボォ~っとテレビを見つめる。7時を過ぎた頃、今日は火曜日で生ゴミの日であることに気がつき急いでゴミ袋をゴミ箱から取り出し外に出た。

ゴミの置き場は家から少し歩いた所にあり肌寒い中を肩をつぼめながら歩いていると目の前に一人の女性がゴミを出していた。

隣の奥さん・・「おはようございます!」そう私が声を掛けると私の寝巻き姿を見つめ彼女は不思議そうな顔をして挨拶を返してくれる。

あなたは?仕事に行かないの?きちんと化粧をして高そうなスーツを着こなしているこれから出勤しょうとしている彼女からしてみれば私のこの服装はなんとも不思議に感じられたに違いない。

「失礼ですけどお仕事って何をされているのですか?」

それは多分、隣人の素朴な疑問だったのだと思う。私は笑顔で彼女に答える。

「一応、出版関係の仕事をしております!」

そう私が答えると彼女は安心したように言った。

「私の友人にも数人、出版関係の人間が居るんですよ!時間が不規則だと嘆いていました!大変ですね!編集の方ですか?気難しい小説家のお守りも!」

そう、私がその気難しい担当泣かせのダメ小説家です!

思わずそう白状したくなったが、私は苦笑いを浮かべ「本当にね~」と軽く答えその場を立ち去る。

なんとなく甘い香水の香が鼻につく。そして少しだけ疲れやっれた彼女の美しい顔をなんとなく私の興味を引いた。

「ふざけんじゃね~~よ!この糞女!!」

まるで静寂に包まれた世界をぶち壊すようなそんな怒鳴り声にキーを打つ手が一瞬止まった。

「ごめんなさい!あなた!謝るから大きな声を出さないで!ご近所迷惑だから!」

「迷惑!誰が迷惑だって言ってるんだ!迷惑なのはお前の存在だよ!この役立たずが!」

バシッ!バシッ!!!何度も何かを叩く鈍い音が聞こえる・・

それに合わせて聞こえる彼女の悲鳴・・叩かれているのは彼女らしい・・

そして叩いてるのは旦那なのか?悲鳴はその日、深夜まで続くのであった。