数本の飲み干された缶ビールの空き缶がテーブルの上に散乱していた。
今日子は何処からかウイスキーのボトルを持ってくる。
そしてグラスを私と自分の前に置いた。
そしてグラスにウイスキーを注ぎながら呟く。
「あなた・・奥さんを愛してるの?」と
愛してるのか?そう聞かれて私は即答出来なかった。
そんな私に追い討ちをかけるように今日子が呟く。
「さっき、色々とあるって言っていたけど・・
奥さんとの事??」
私はまるで蛇に睨まれた蛙のように身動き出来なくなった。
「ああ・・実はあいつ浮気をしてるようなんだ」
そんな私の言葉に今日子はまるでその事を知っているかのように
眉一つ動かさない。驚きもせずに言った。
「そう・・こんなに良い男が旦那でも女は違う男を捜すのね!
女って・・いや!人間って欲張りだね・・」と
そう呟くと今日子は私の隣に座りなおし私の顔を自分の胸に引き寄せ言った。
「別れられないの?」と
答えに困って沈黙してる私に唇に今日子の唇が重なる。
そして唇を離すと今日子は言った。
「忘れさせてあげるから・・おいで・・」と
私の理性はその言葉でぶっ飛んだ・・
私はまるで獣のように今日子に覆いかぶさる・・
そして涙を流しながら今日子の胸を愛撫する・・
今日子の息が妖艶に荒くなる・・
「おいで・・誠・・」
私は何をしてるのだろう?これでは妻と同じではないか?
いや・・違う!私は悪くない!私をこんなにしてしまったのはあいつだ!
俺は悪く無い!俺は・・俺は悪くない!
私はそんな奇麗事を心の中で何度も何度も叫びながら今日子を抱いた。
「タバコ・・くれる?」
乱れた息を整えるように今日子がそう呟く。
私はタバコを一本・・今日子に手渡しライターを手にした。
「何時もと反対だね!あなたが火を付けてくれるなんて!」
そう笑いながら今日子は言った。
私は・・何も言わずにただ、自分もタバコを取り出す。
「別れてくれない?奥さんと・・」
突然の今日子の言葉・・
「別れて・・純のお父さんになってあげてもらいたい。
私なら絶対にあなたを悲しませたりしないから・・」
タバコの灰が自然と灰皿に落ちる。
今日子は返事を強制するかのように私を見つめる・・
もしも、今日子が何かを企んでいるとするならば・・
その瞬間、私はこいつの企みにまんまと、はまってしまったのかもしれない。
でも、それは自分の思い過ごしである事を願っている自分・・
今日子が私の事を愛してくれていると信じたい自分がそこに居た。
「少しだけ考えさせてくれ・・」
その言葉を待っていたかのように今日子の唇が私の唇に重ねられた・・
キャスターマイルドの味がした・・
そんな大人のキスであった。
「シャワーを使わせてくれないか?」
「えっ?泊まっていけないの?」
「ああ・・帰るよ!今夜は・・」
「そう・・帰るの・・」
私は今日子の顔を見る事が出来なかった・・
いや・・もしも見てしまったら帰れないと思った。
シャワーを浴びて私は洋服を着て玄関に向かう。
「連絡・・してよね!お店にもまた着てよね!
そして・・また、純と遊んであげてね!」
そう今日子は私を見送りながら言った・・
そして私の唇に真っ白な長い人差し指を当てながら・・
「また・・抱いて・・」と微笑みながら呟いた・・
愚か者だ!私は・・私は・・愚か者だ!
友美と結婚した時に誓ったはずなのに・・
もう過ちは繰り返さないと!一生、友美を愛し続ける誓ったのに・・
私は静かに玄関をしめた。
何で・・何でこんな風になってしまったのか?
何で・・何で・・
俺は友美を愛していたのではないのか?
友美を幸せにしてあげたいと誓ったあの日の俺の思いは偽りだったのか?
死んでしまいたかった。
自分が・・本当の自分が見えなかった。
私は・・愚か者である!そしてそんな俺に妻を責める資格は無いのかもしれない。