「私・・あなたに何処かでお会いした事ありますか?」
そう私が加藤に尋ねると加藤は少し困惑をしたような顔をした。
「いいえ・・あなたとは初対面だと思いますよ・・
私はテレビや雑誌であなたのお顔は何度も拝見した事がありますけどね・・
今を時めく大作家の先生ですから・・あなたは・・」
私はこの男を知っている・・
絶対に・・
しかし、それが何時?何処で会ったのかと聞かれたらまったく覚えていなかった。
ただ、根拠無い自信があった。絶対に私はこの男を知っている。
「ほら!大学時代に純子・・覚えている??」
「ああ・・同好会に居た!純子だろ・・」
「そう・・彼ね!彼女のお兄さんなのよ!
そして何を隠そう・・私の会社の上司でもあり私の小説の先生なの!
ほら、純子が1度、「扉」の一次を通過したじゃない!
あの時、どうしてそんなに文章が上手くなったの?って彼女に聞いたのよ!
そうしたら、私の小説の師匠は天才だから!なんて言っていて・・
凄く天才師匠が気になっていたのよ!
そうしたらなんと、彼だって言うじゃない!
そして純子のお兄さんだって言われて二度ビックリよ!」
今日子はそう笑いながら興奮して言った・・
「そう言えば・・純子って今、何をやってるの??」
「ああ・・純子は今、出版社で編集の仕事をしてるのよ!
何時か、きっと、誠にもお声がかかると想うわ!
どう?うちの社から本を出しませんか?なんてね!」
純子・・・
ふと、私はあの時の純子の不気味な微笑を思い出した・・・
忘れようとしていた・・あの微笑を・・・
「処で誠はどうなのよ??付き合っている人は居るの??」
「あ~ボチボチね!」
私がそう渋い顔をしながら今日子に呟くと今日子は笑いながら・・
「あんたは・・何時もボチボチね!」と言った。
「それでは新郎新婦のご入場です!
皆様!盛大な拍手を!!」
そんな司会者の言葉の後にドアが開き新郎新婦が入場してくる。
「素敵ね!友美・・やはり美人は違うわ!」
私の周りの席の人間が口々にそう呟いていた・・
笑っていた・・
何年ぶりだろう・・笑った友美の顔を見たのは・・
何年ぶりだろう・・・あんな幸せそうな友美を見たのは・・
あ~そうだ・・俺たちの結婚式以来だな・・
私は1人、そう呟くとグラスのビールを一気に飲み干した。