新たな戦いの始まり | 僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

2次審査通過


そんな文字を私は冷めた目で見ていた。


これがきっと、自分自身の作品であったのら涙を流して喜んだに違いない。


季節は3月、3次審査通過の知らせが来た頃にはもう卒業式の準備に追われていた。


木村は結局、就職をする事をせずにそのままアルバイトをしながら小説を書くと宣言した。


同好会の中でもっと、多くの人間がそんな生活を選ぶのかと想ったがそんなに多くは無く・・


私と親しい数人だけで後の皆は現実を選んで就職をした。


4月に入り「扉」の4次審査が行われた。


残ったのは私を入れて4人。


その中には私の記憶の中で今年、この賞を取るはずである作家の顔も見える。


未来は変えられるのか???どうなのだろう・・・


今までの審査とは違い、4次審査は大掛かりな物であった。


文芸雑誌や新聞社の記者達が私達の前に陣取りカメラを向けている。


司会者が現れいよいよ今年の優秀者の発表が行われる・・・・


一瞬の沈黙・・


大げさに司会者が渡された封筒を開いた・・・


「今年の扉の優秀者は・・・・」


私の体が一瞬、緊張のあまりに小刻みに震える・・・


「今夜も何処かの星の下で・・を書いた坂本誠さんです!」


その途端・・私はシャッターの光に包まれた・・・


私は一応・・涙を流す・・


そして微笑を浮かべた・・・


私は賞金の一千万と受賞作品の出版の権利を手に入れた・・・


私の人生が変わった。


失った人生の忘れ物を私は1つ手に入れた。


その日の夜、私の自宅の電話と私の携帯は鳴り続けた・・


最年少受賞者!天才小説家登場


次の日の新聞の見出しはそんな文字で埋まった。


私は次の日からホテルに缶詰になる。


次回作の執筆が賞金を貰う条件なのだ。


鉄は熱いうちに打てではないが、話題になっているうちにもう一儲けって感じだろう。


ただ、原稿を書くのは簡単な事であった。


その時の私の頭の中にはまるで自宅の本棚が丸々入ってるような感じであった。


読みたい本を本棚から選ぶようなそんな感じで・・・


傑作と言われる私が今まで読んだ本の内容が頭に浮かんだ。


結局は小説などと言うのは早い者勝ちだ。


どんなに素晴らしい言葉を作家が考えても世に出さなくては意味が無い。


誰かが1度でも使った言葉は・・「猿真似」と評価される。


実に不可思議な世界なのである。


私は・・・


本来なら木村が書くはずだった小説「神の目・・悪魔の心」を書き始めた。


「今夜も何処かの星の下で・・」


「神の目・・悪魔の心」


この2作は木村と言う作家の代表作になる作品であった。


私は彼から作品のみならず・・・


未来をも奪った事になる。


しかし、最初は大いなる罪悪感に包まれたものの・・


書き始めるとその作品は何時の間にか私の作品へと変わって行った・・


人間の感情とは実に都合が良い・・


だから犯罪は無くならないのかもしれない。


私は「神の目・・悪魔の心」を書き終わったのは・・


私はホテルに入って一週間後の事であった。


その頃には多くの書店で私の受賞作の「今夜も何処かの星の下で・・」がうず高く積まれていた。


私は次々に人々が手に取るそんな光景を見ながらなんとなく・・


涙がこぼれた・・・


私は成功した・・・確かに・・・


しかし、私の脳裏に木村のある一言が思い出される・・


「成功すると言うことは・・

新たな戦いの始まりなんだよ・・」と


そう・・この瞬間が私の新たな戦いへの始まりの合図であったのかもしれない。


人生は辛すぎて私の手には負えない。