臨時電車「特急 踊り子号」(今日子編)№3 | 僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

修善寺線は次の停車駅の「韮山駅」に向かい走り出していた。


私は少しの切ない感情に身を包んでいた・・


ふと、前の男を見ると私が、手渡したヘンケチを自分の上着のポケットに仕舞い込もうとしていた。


何と常識が無い男だろう???何と・・


ただ、冷静に考えれば、あんな事があった後に私にハンケチを返しに来る事は至難の業なのかも??


男のプライドの事など、考える余裕はその時の私には無かったのかも知れない。


私はそんな彼の非常識な行為を軽蔑するかのように1度、彼を睨みつけると・・・


ハンケチの行方など別に気にもしていなかのようにまた、文庫本を読み始める。


それに、返されても困る・・


あんな、オヤジの涙と鼻みづが付いたハンケチなど・・


とても汚くって自分のポケットに入れる気にはなれなかったからだ。


列車が「韮山駅」に到着すると私の横のドアから1人の女性が車内に入って来る。


その瞬間、今まで悲しみに包まれていた彼の顔が一瞬、変わった・・


そして、車内に居る全ての男子の視線が彼女に注がれているのがわかる・・


私の何気無く横を振り向く・・


童顔のわりには胸が大きい・・


Dカップはあるだろうか?私は不覚にも自分の胸の膨らみと見比べてしまった・・


嫌みったらしく薄いシャツからピンクのブラジャーが透けて見えている・・


男を釣るエサには申し分が無いエサである・・


それもきっと、彼女は意識しているに違いない・・


まんまと、そんなエサに引っかかっている男たちのアホ面が何とも笑えた・・


ここが、彼女の定位置なのか、またしても私は睨まれてしまった・・


どうも、乗りなれない電車は居心地が悪くて仕方が無い・・


彼女は、友人と一緒のようで、2人で向かいのドアの前に移動する・・


2人で笑いながら何か話し出す・・


私は思わず耳を澄ましてしまった・・


「だから・・寝るもの良いけど・・無駄は止めた方が良いって!

寂しいオヤジ狙いの方が効率が絶対に良いんだから・・

今度のお見合いパーティーで試してみなよ!

お店でチンタラ、お酌してるより絶対に効率が良いんだから・・」


私は思わず苦笑いをした・・


それは彼女達の会話にではなく、その話を聞いていた前の席の彼の顔があまりにも落胆したからだ・・


きっと、密かな恋心だったのか?いや・・早朝の列車のマドンナって感じなのか??


私の斜め前に座っている巨漢の男も悲しそうな顔してもう1つおにぎりのラップを開き出す・・


男とは・・何とも可愛い生き物だと思った・・


何とも・・・可愛い・・・


私は3年間、会社の上司と不倫をしていた。


彼は私の部署の部長で奥さんと高校生になる娘さんが1人・・・


社内ではアットホームパパで通されていて・・


奥さんや娘さんの写真を仕事場のデスクの上に置いてある・・・


そんな彼と不倫関係になったきっかけは、彼からの猛烈な誘いからで・・


アットホームパパも裏を返せばただの男である。


散々、私に美味しい言葉を呟いておいて、奥さんにばれそうになるとポイ捨てなのだ・・


正直、まさか、私はあの男にあんな、酷い捨てられ方をされるとは思っても居なかった・・


私が嫌がる彼を誘惑した・・


自分が出世をするために・・・


自分が認められる為に・・


彼と言う立場の男を使って・・


それが社内の人間が私にかした・・評価であった。


彼の為に・・1度、子供までおろした私に・・・


最後に彼に会った晩に、彼は私にぶ厚い封筒を手渡した。


「悪い・・これで、別れてくれ!出来れば、会社も辞めてくれると助かる・・

君ほどの能力があれば、きっと、何処でも雇ってくれる・・

なんなら、推薦状を書いてあげても良い・・

もう、これ以上、私の家庭を壊さないでくれ・・」


ふ・・ふざけんな!・・


私の心に一瞬、殺意が芽生えた瞬間であった・・


こんな奴・・殺して・・私も死んでやる・・


どうせ、もう、この会社には居られない・・


あんたに言われなくても辞めてやる・・


でも、最後の彼のこの言葉と手切れ金を出された瞬間・・・


本当に・・あなたを愛していたのに・・・


そんな言葉が私の脳裏を駆け巡った・・


そして、無意識に私は大粒の涙を流しなら何度も店のテーブルを叩いていた・・


彼はそんな私に何とも厄介だというような顔をして無言で立ち去った・・・


男なんか・・所詮はこんなものである・・


その瞬間から・・私は愛とか恋とか・・そんな戯言を夢見る気持ちを捨てた・・


何時か独立して自分のデザイン事務所を立ち上げる!


そして・・全ての男を見下ろしてやるのだ・・・


それが、私のこいつへの復讐である・・


「原木~~次は原木でございます・・・」


列車は次の原木駅に到着しょうとしていた・・