なんとも美しい木目のピアノ。

 

ヨーロッパのピアノ?

という声が聞こえてきそうです。

 

確かに欧州には今もこういった

古い木目のピアノが

普通に現役で活躍しています。

 

いえいえ、

信じてもらえないかもしれませんが

これは歴とした国産のピアノです。

 

しかも、

65年前の1958年(昭和33年)に製造された

ヤマハのアップライトピアノを代表する機種

あのU3の名を冠した初期個体なのです。

 

 

なんて昭和ライクな風合いのピアノ。。

 

 

 

これより6年前の1952年に製造された

一般家庭向けのアップライトピアノには

100号や200号といった番号が

機種名として冠されていて、

これらが「U型」の原型になりました。

 

さすがに100号とかの時代のピアノには

まだ出会ったことがない。

というよりヤマハ本社所蔵とか博物館級で

今は殆ど現存していないだろう。

 

その意味からもこのNO.U3は

非常に稀少性の高い楽器といえます。

 

 

 

U3の前には古いUシリーズの証である"NO."がこの頃から刻印されている。

 

 

ヤマハがアップライトの専用工場を建てたのが

この7年後の1965年(昭和40年)です。

まだ製造ラインが本格的に自動化される前の

手作り作業が多く残されていた環境で製造された

最後のU3といっていいかもしれません。

 

でこのU3の製造番号は久々の5桁アセアセ

今やカワイ含め5桁のピアノは殆ど見かけません。

 

 

 

 

僕がこれより古いヤマハに関わったのは

ちょうど2年前に出会った

ヤマハのミニピアノという楽器一回きりです。

この時のピアノは更に一年古く

昭和32年に製造された75鍵盤の

こちらも非常に珍しいピアノでした。

 

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そして何を隠そう、

僕が所有しているカワイのアップライトも

このU3と同じ1958年(昭和33年)製造のもので

製造番号も同じ5桁です。音はめちゃくちゃいいです。

 

 

上:今回のヤマハ。下:弊社所有のカワイ。共に昭和33年の製造。

 

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古い国産アクションは本体とアクションが

上部2ヶ所で固定されていることが多いのですが、

今回は足の部分にも更に2ヶ所ネジ留めされてます。

古い個体にはこの様なものがたまにあって、

これを知らずに力任せでアクションを外そうとして

悲惨な目に遭った方何人か知ってます..

 

上部二ヶ所を外して少し前に倒しても

アクションがまったく動かない場合は要注意です上差し

 

目立たないこのネジに注意!

 

 

 

今回のお客様のご友人宅に

誰からも弾かれることなく長い間

ずっと眠り続けていたこのピアノ。

元々はそのご友人の義母様のピアノだったそう。

 

お客様は小学4年生以来

ピアノをまったく弾いていませんでした。

曰く、ピアノを始めたくて泣き

ピアノをヤメたくて泣いたといい、

ピアノにはあまりいい思い出がなかったと。

 

そんなお客様がこのピアノを見た瞬間

なぜか独特なオーラを感じたといいます。

 

ちょうどご友人が引っ越しに伴い

このピアノをどうしようか悩んでいた、

そんな運命的なタイミングだっそうです。

 

かくしてこのU3を譲り受けることとなり、

あの小学4年生以来ピアノをリスタートする

大きな決心をしたというわけです。

 

 

 

昭和、畳、木目ピアノ、木製アクション。完璧な組み合わせ。

 

 

がしかし、最初に問い合わせた業者からは

「いやこれはとても無理」と言われた。

その様子からかなり驚かれていたそうですポーン

アンティーク家具を飾っておくように

このピアノを傍らに置いて楽しむならいい、

と匙を投げられました。

友人宅から倉庫にピアノを移動した後に宣言され

愕然としたそうですガーン

 

 

どうしたものかと途方に暮れていたら

別のご友人から

どういうわけか弊社の存在を知らされ

今回僕がこのピアノのメンテナンスを

行わせていただくことに相成った、

という流れです。

 

ちなみに弊社を紹介していただいた

大変親切なそのご友人様は

僕はまったく面識がありません。

人生不思議なことが起こるものですm(_ _)mアリガト..

 

 

鍵盤がぴったり床の間にはまった奇跡!なんかこういう現代アート作品みたい。

 

 

で実際にピアノを拝見した時の僕の見立ては

65年前のピアノ故アクションや内部の

メンテナンスは当然必須ですが、

楽器として成立しないような

致命的な傷みは殆どなく、

その最初に診た業者様の判断とは逆に

年代から考えたら奇跡的に状態はいいと感じた。

これはしっかりメンテナンスをすれば

今後の長い人生のお供として

演奏に耐えられるに違いない、

そう判断しました。

 

当時のヤマハがしっかりした楽器を作っていた

ということもありますがそれ以上に、

きっとご友人の義母様の管理がよかったのだと

そう推測しましたm(_ _)mアリガト..

 

 

飴色に変色はしているが深刻な響板割れなどもない。

 

多層でいいい木を使った鍵盤。

 

 

 

さて、少し遠方のためアクション引き上げ日に

内部のクリーニングを行わせていただきました。

今行っているカワイ同様最近多いパターンですm(_ _)mアリガト..

 

 

 

 

 

キラキラ

 

当然ペダルは2本ですが磨く側としては何気に有難いw

キラキラ

 

 

そしてそしてメンテナンスが終わった暁には、

様々なアーティストのお友達をお迎えし

ご自宅でささやかな演奏会を開催するそうです。

 

築50年の家屋と製造65年のピアノ。

ケーナにヴァイオリンにリコーダーにお歌。

 

ん〜なんとも壮大な。。

 

 

岩川光さんは日本における数少ないケーナ奏者の一人というすごい人。

 

 

昭和時代の木をまとった

ツヤのない木目ボディが

いかにも昭和の楽器といった風貌である。

 

ヴィンテージ家具

と言わんばかりの存在感で

そのピアノが畳の上に鎮座している。

ピアノは間違いなく西洋楽器だが、

改めて木目ピアノと和室が合うということを

再認識させられる。

 

 

すべての作業が終わった後

この楽器は果たしてどんな音を

鳴らすのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

今日も僕のブログを読んでくれてありがとうございましたm(__)m

 

OTO

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