プランターの中 -12ページ目

小学校の思い出

実家に帰省した際に久しぶりに兄と話した。

兄は僕と同じハンドルネームでラジコンの
ブログをやっているらしく改造に改造を重ね、
ついには部品まで自作してしまうほどの凝りようだとかで。
それ以外にも岩山を昇ってみたり、サバイバルゲームに
興じたりとアグレッシブにやっている。
弟の僕は過去の記憶と街の歪みを眺めてはニヤニヤ笑うだけの
インナーな性格であって、20年近く一緒に暮らしながらここまで
真逆な趣味になるってしまうのか不思議に思う。

それでも小学校の頃は当時流行したミニ4駆で
一緒に遊んだりもした。それはラジコンを手のひら大に
縮小さた、小さなモーターを単三電池二本で動かす
おもちゃの事。家の廊下を走らせ向こうとこっち
でキャッチボール的に車を行き来する事に飽きた頃、
家から少し離れた場所に巨大なミニ四駆のコースも
兼ね備えたプラモデル屋が誕生した。

正確には小さな模型屋が店舗拡大しただけなのだが
ミニ4駆の流行もあり、そこは一瞬で子供の社交場に
なった。店舗で高性能のモーターや部品を買い
自分のマシンに搭載改造させた後、即コースで
試乗できる夢のような場所だった。

そんな子供の国にある日、アラキさんと呼ばれる
すごく速いミニ4駆を持った大人が通っているらしいと、
そんな情報が飛び交った。

僕がアラキさんを初めて見たのはいつだか忘れたが、
フロントにUFOキャッチャーで獲得したと思われる
ぬいぐるみがぎゅうぎゅうに並べられた黒いバンに乗って
現れる。髪の毛を肩くらいまで伸ばしたやせ男で
いつも黒っぽい格好をしていた。店員と二言三言交わした後、
コースでマシンを走らせる。で、そのマシンの速い事。
子供達が先に走らせていたミニ4駆をいとも簡単に追い抜く。
子供の頃の思い出なので定かではないが、
速すぎて車体が見えないくらいだったと記憶している。

走らせ終わると専用の工具箱から部品を出し、
簡単な改造をした後、再度コースに車を置くと
更にスピードアップさせたりしていたりしたから、
子供の尊敬を集めていた。が、風貌が不気味で無口
たまにクックックと笑うためだいぶ近寄りがたい存在だった。
中にはアラキさんにマシンの改造方法を教わったり
場合によっては車内のぬいぐるみをもらっていた肝の据わった
者もいたが、大概の子供達は彼を不気味に思っていた。

恐怖を与えるほどの不気味なキャラクターが気に入ったのか、
兄はどこからかアラキと彫られたシャチハタ印を手に入れ
僕のノートやビックリマンシールに捺印するという
不気味なイタズラを流行させた。後に我が家で問題になり
アラキ印は母が没収することとなる。

で、最近ラジコンに熱中している兄にアラキさんの話をしたのだが
その店にあまり行かないので、どうしているのかは知らないとの事
しかし、今日兄からメールが届いた。

アラキさんは未だに存在していて、常連客の中では話題の人らしい。
気味が悪くて近づき難いが……(原文ママ)

アラキさんはもはや人物としてでなく存在としての扱いに
なっているところが彼らしくていいなあ、とか思った。

高校生時代の思いで

先日おこなった呑み会で遇然にも別の席に
同級生が数名いて、ちょっとした同窓会になった。

その時に僕と同じ高校に通った友人がおり
当時、共に体験した喧嘩の話で一方的に
盛り上がってしまった。

僕の通っていた高校は県下でもガラが悪い部類の学校で
そういう学校は往々にして中学生時に不良と呼ばれる
子供達が集まる。頭が悪く社会適応も難しいクズ人間を
一箇所に集めて少しでも社会の役に立つように教育する
施設だったと思う。もちろんそこから立派な人たちも
巣立った事だろう。

同校の不良達に言わせると、ウチはまだ普通の工業高校だ。
あそこの学校はもっと悪い。どこそこの誰は鬼のように強い。
と、上を目指そうとするもの特有の謙虚さと、
不良特有の情報網が織り成す、最凶学校談義に花が咲く。

ちなみに僕は不良だったからではなく、
頭が悪く、学校の選択肢がここしかなかったから、と
ブレザーの制服を着てみたかったから。

比較的穏やかな日常が続くある日、
帰宅の電車内で同級生の友人に会った。

友人は妙にぎらぎらした目でそこいらを睨みつけていたが
僕を見つけるといつもの顔に戻り、挨拶をしてくれた。
彼と帰りの電車で一緒になる事は少なく、その遇然の出会いの
理由を尋ねてみると、どうやら僕が降りる駅で他校の不良達と
喧嘩の約束があるらしい。彼の周囲には同級生の不良達が
僕と会う前に友人がしていたように周囲を睨みつけたり
つばを吐いたり、シャドウボクシングめいた動きをしていた。
(シャドウボクシングはコミカルなものでなく
人を殴る為の凄みのあるイメージトレーニング)

同級生8~9人程いただろうか。
皆、個性的な不良で、ろくでなしブルースというマンガを
愛読していた僕は、皆の個性に憧れに似た羨ましさを抱いた。
途中、駅に止まるとそこから乗車してくる仲間の不良がいたりして
皆のテンションが上がる。どうもそこで乗ってきた人物は
喧嘩が強いらしく、皆に気合を入れるなどリーダーの役割を
荷っていた。

そんな中、どうも今回の喧嘩は大規模なものらしく
さらに人数が欲しいとの事で、メンバー外であったが
僕も参加させられるハメになった。とんだ災難だ。
少し格闘技をかじっていた僕の経歴を友人が皆に伝えると
不良達の中でも特に人当たりの良い人物が、期待しているよ、
と気さくに話しかけてくれたりした。

正直迷惑な話だし、僕は気が小さいので喧嘩などした事はない。
怖い顔をした接点のない他者を殴ったり殴られたりする勇気など
これっぽっちもないし、その後の報復に巻き込まれたり
家を調べ上げられ焼き討ちされたりしたらコトなので、
その場から逃げ出したかったが、ここで逃げたら学校中の
不良を敵に回してしまう可能性すらあるので、そういう気持ちを
顔に出ないようにしていた。それ以前に現場が僕の下車する駅
なのでそれすら出来ない。まあ、不良の仲間入りできたような
気持ちがあって、それはそれで勝手に強くなったような気に
なったり妙な連帯感が心地よかったりもしたのだが。

現場である駅に降りると、我先にと相手を探し、
殴りつけるのかと思ったのだが、実際は改札を出たところで
敵は待っているとの話であり、皆、便所に向かい小便をしたりする。
手を洗った後の指に残る水を使い髪をオールバックにしたり
リーゼントにしたりとおのおのの志気を高めていたのが
印象的だった。

ここまでは非常に漫画的であるが、その後が実に日本的。

味方の不良リーダーがかなり腕の立つ者だったらしく
敵のリーダーが喧嘩をする前から握手を求めて即時和解。
僕も逃げ道を発見し、じゃあまたね、と気さくな不良に一言残し
足早に現場を後にした。

という思い出話を、同じ現場にいた友人に話したところ
そういうのは何度もあったからどの話だか憶えていない、
との事。

一月のお酒

僕はとてもネガティブで心配性という性格の持ち主。

中国だかどこか、たぶんアジア大陸で古くから伝わる
話があって、その話をまとめた四文字熟語があったような
気がするが、それは忘れてしまった。

で、その話の内容は、ある武将がいたがその男も非常に
心配性であり、飲料用の水がめを見ると毒が入っている
のではないか、とか、壁をみればその裏に敵が潜んで
いて弓矢で集中砲火を浴びるのではないか、など
そんな事を考えていながらどんどん内にこもってしまう。
ひょっとしたら、権力を使って心配事を一つ一つ
排除していったような気もする。で、

もう大丈夫、心配要らないから、外に出よう、
とお付の者に言われたときに

空が崩れて落ちてきたら危ないからやっぱり出ない、
と言い、相変わらず内にこもりっぱなしだった。

と、まあこんな内容のお話で、それは笑い話のように
扱われていた記憶もある。

月日はたち29歳である僕は、この武将の気持ちが
よくわかるほどの、過剰なまでの心配性になっていた。

そんな自分が旧友を集めて大きな呑み会を開催したので
それはそれは他者にとってはどうでもいいような想像力で
脹らんだ恐怖におびえていたのだ。

例えば、酔っ払った人物がビンを持って暴れだし、
いつしか僕達の席にまでやってくる。同席者を殴りつけ、
挙げ句店内を破壊し始る。一人の狂気に客達が触発され、
度数の強いアルコールを撒き散らし笑いながら火を放つ
そんな事が起こったらどうしよう。

とか、

ちょっとした口論から呑みの席のテンションが下がり
ひとりまた一人とその場を静かに離れていく。
結局、その場に残されたのは、僕と、口論をしている人物の
三人であり、この後口論を制し三人で小さく
仲直り会をさせられる役割になったら、困るなあ

など、想像しうる全ての不条理を心配し
いつも怯えている。が、そのような事が起きた試しは一度もない。

呑み会に限らず、他者と合う時は大概そんな事を想像しているが
それはお前に心の壁があり、皆を信用していない証拠だ
と言われても仕方が無い、それとは別に、あいつは心配性だから
という感じで笑ってもらえれば御の字。

で、今回最も心配した事は、例えば乾杯の合図に
「ルネッサーンス!」とか、まあ、バラエティ番組で
芸人がやるような面白いギャグが今回の席に出てきたら
どうしよう、というところ。これはどうでも良さそうでいて
重要な部分だと思う。たとえばそのようなスタートで
会合が始まってしまうと、皆、無意識の内に自分の中に
キャラクターをつくり始め、それを守り続けながら
個人を出さぬまま終わってしまう。そうなれば、
別に誰が集まろうと、どこで呑もうと変わりなくなってしまい
それこそ皆で集まる楽しみが消えてしまうのではないか。
こんな心配をしていた。たぶんこれも極論だと思うのだが
これが一番の恐怖。

そんな心配をよそに、と言っても上記した事が起こりえる
メンバーで無いのだが、新年会は大いに盛り上がる。
気が付くと、男性用ブラジャーの必要性とは、とか
プライベートの性交において目隠しや手錠を使う事はありやなしや、
等、もっと露骨な性談猥談で盛り上がり、
なんて居心地がいいのだろう、と感じながら帰路に着いた。