この夏の出来事 |  お転婆山姥今日もゆく

 お転婆山姥今日もゆく

 人間未満の山姥です。
 早く人間になりたい。

聞いてください。

 

夫は義父の死後、相続手続きだなんだと頭が沸騰したような状態が続いている。

私は助言はしても手は貸さない。

「私は両親、伯父伯母4人分の相続に係るアレコレを、全部ひとりでやって来たんだ。しかも、親たちは皆貧乏だったから、謄本一通とるだけでも負担なほどだった。家を片付けるのも業者など頼めなかった」

 

言葉は飲み込みつつ、最初の部分だけは言う。事務手続きの書類一つ書くのもブツブツ言うのだから、先が見えないのは当然だ。

それでも、「心を鬼にして」手伝わないのは、お互いのためなのである。この先を考えるといずれにせよこういうことはやらなくてはならない時が必ず来るのだ。つくづく感じるのは

「便利なものを持ち過ぎたあまり、それに苦しめられる」

 

気を付けよう便利便利の後始末

 

非日常な事に振り回されつつ、なんだかんだと少しずつは進んでいる。

 

立秋を迎えた後のある晩、夜8時に夫のスマホが鳴った。

夫の実家のお向かいのオバサンからで、その日は日本海側各地に甚大な被害が出るほど豪雨だったが

「実家の二階の窓、開いてる。カーテンがバタバタ・・・」

 

私はもうため息も出ないのであった。

いつからよ、合鍵誰も持ってないの?

葬儀が済んで帰宅してひと月になるじゃないのよ・・・

 

最近になって、わが夫はしっかり者のようで実に単純なところが抜けていることに気がついた。

今回もそれである。

「そんなはずは・・・」

といちいち言い訳するが、

「どのみち窓開いてるんでしょ、だから電話来たんでしょ」

という私の声にも棘があるのを自覚する。

すぐ近くならまだしも・・・

夫の実家までは、車で最速でも4時間かかるのだ。

 

すぐさま私の車で私の運転で行きましたとも。ええ、躊躇いなどゴザイマセン。

私はその時物凄く眠かったが、明日も仕事という人に

「行ってこい」

とは言えません。

 

日付が変わってすぐ実家に着いた。

辺りは寝静まっているようでもあり、そうでもないようでもあり。

 

道すがらの土砂降りには恐怖を感じたが、何とか潜り抜けた。

しかし実家に着いた途端激しい雨が落ちてきた。県をまたいだ先では、緊急避難指示まで出ているという。

 

「わざわざ来たんだから他の部屋も確認してきてよ」

 

滞在18分。

すぐ帰路についた。

 

行きの道中、コンビニでコーヒーを買っただけで、往復とも私が運転した。

何故かちっとも疲れないのだ。

 

理由は車である。

2年前に買い替えた車だが、超長距離というのを未だしたことがなかった。

盛岡の娘のところまで60キロ往復するのがせいぜいで、コロナでそれもほとんどしなくなっている。

 

夫が運転を代わる、とか、車載の機能が何か検知するため、時々

「長い時間の運転お疲れ様です。少し休憩しませんか?」

とメッセージがお茶のマークとともに表示されたりするのだが、

「大丈夫」

 

これまでであればハンドルの向こうには、スピードメーター、タコメーター、オイル計、時計、水温計が設定、表示されるだけであったので、マルチメーターにあれこれ出てくるのは非常に気が散るではないか。

 

 

平均燃費が24キロ、しかも、上りでもちっとも負荷を感じず、スムーズに加速する。

何も期待していなかった車が実に良い仕事をしてくれているのを実感した。

夜間、わざわざ出かけても景色すら堪能できなかったのだが、車の性能に歓喜し、帰路は行きより早かった。

午前4時に帰宅。

平時だとあと一時間ほどで起床時間である。

私は朝ごはんと夫のお弁当の支度をし、犬猫の世話をし、その日1日ついに昼寝することもなく過ごしたのであった。

 

それにしても戸締り用心ですぞ・・・夫よ・・・。