卵を投げつけられた王貞治が放った驚きのひと言——元侍ジャパン監督・小久保裕紀が振り返る | 致知出版社公式アメーバブログ

 

 

 

 

 

3度の日本一を経験、400本塁打・2000本安打を達成して2012年、19年間の現役生活にピリオドを打った元福岡ソフトバンクホークス選手の小久保裕紀さん。2017年に行われた第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では監督として侍ジャパンを率いた名指導者としても知られています。そんな小久保さんが師と慕う、王貞治監督(当時)の知られざるエピソードをご紹介します。

 

 

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■練習の時に楽をするな 練習の時に苦しめ

〈小久保〉
僕がプロで成功した一番の要因は王監督との出会いだと思っています。

 

亡くなられた根本陸夫監督の後を引き継いでダイエーの監督に就任された

のは僕がプロ2年目の時でした。その出会いからトータルで15年、王監督の

下でプレーさせてもらったんですけど、僕はその教えを忠実に守ることを心

掛けてきました。

 

王監督からは例えば「楽をするな」って教わったんですよ。

 

「練習の時に楽をするな。練習の時に苦しめ」と。

 

練習は普通センター返しが基本と言われていて大方の選手はそうしているわけ

ですけど、僕の場合は王監督から「ボールを遠くに飛ばせ。それにはバットを

振った時、背中がバキバキと鳴るくらい体を120%使え」と言われました。皆、

練習の時は適当にやって、試合で100%の力を発揮しようとするのですが、これ

は間違いだということがいまはよく分かります。

 

王監督のことでは強く印象に残っていることがあります。

 

怒ったファンからバスに卵をぶつけられたことがありました。96年5月の日生球

場での公式戦最終日です。

 

負けが続いていて、怒ったファンの方がたくさんの生卵を僕たちのバスに投げつけ

られたんです。卵が飛び散って外の景色が見えないくらいだったのですが、そんな

時でも王監督はどっしり構えて絶対に動じられなかった。後ろをついていく人間とし

てリーダーがここまで頼もしく思えたことはなかったですね。

 

帰ってからのミーティングでも

 

「ああいうふうに怒ってくれるのが本当のファンだ。あの人たちを喜ばせるの

が俺たちの仕事なんだ。それができなければプロではない」

 

とおっしゃいました。僕はまだ人間が小さいですから「あんなやつらに」とついつい

思っていたのですが、それだけに絶対に言い訳をしようとしない監督の姿には学

ばされました。

 

これは原辰徳監督から聞いた話なんですが、ジャイアンツの監督だった頃のミーティ

ングはきつかったらしい。選手たちは内心「それは王選手だからできたんでしょ」と

反発したことが結構あったらしい。おそらく王監督はそこで何かを感じ取られたんだ

と思うんです。

 

ダイエー時代、王監督は自分の話をする時、必ず最初に一言「手前みそで申し訳

ないけど」と断っておられました。これは上に立つ人が下の人に話す時にとても大

切なことではないでしょうか。

 

■目の前のことに100%力を注ぎ込め

どんな小さな仕事であっても、それを天職と自分で思って全身全霊をかけてぶつか

り、目の前の課題を一個一個クリアする中で次の展開が見えてくる。僕の座右の銘

である「この一瞬に生きる」はそこに繋がってくると思っています。

 

王監督からは「二度とないこの一球という意識を強く持て」と教わりました。同じ

一球でもなんとなく見逃すのと確信を持って見送るのは大変な違いです。

 

ただ、野球は勝負なのでこの言葉がピンと響くんですが、ユニホームを脱いだ後は、

よほど強く意識しない限り、一瞬一瞬の勝負がなくなってしまう。だからこれからは、

講演でも取材でも野球教室でも、すべての仕事を試合と考えて全身全霊で打ち込

もうと思っています。

 

それに一つ加えるとしたら、プロ野球でもなんの世界でも「思い」の強さはとても大

事だと思います。

 

プロに入ったことで夢を叶えたと考えるような選手はやはり育たないですね。

僕の場合は「絶対にレギュラーになる。絶対に名を残してやる」という思いが半端

でないくらいありました。だからこそプラスになると思うものはなんでも吸収してき

ました。

 

いまの若い選手には「僕は将来、絶対にホームラン王になる」と言い切る者が少

ないんですよ。逆に結果が出ていないのに謙虚な選手ばかり増えてきました。僕

はそんな選手に

 

「俺は天狗になって、その鼻を折られた。それでも折れた鼻を再び生やした

から成長したんだ。伸びもしないうちから謙虚になるな」

 

と言うんです。特に若い頃は寝ても覚めても夢でも、常に願望を抱いていることが

伝わってくる迫力が必要だと思います。

 

 


(本記事は月刊『致知』2013年3月号 特集「生き方」より一部を抜粋・

編集したものです)

 

 

◆小久保裕紀(こくぼ・ひろき)
昭和46年和歌山県生まれ。青山学院大学時代にはバルセロナ五輪で銅メダル

獲得、大学野球日本一に輝く。平成6年福岡ダイエーホークス入団。翌年レギュ

ラーを獲得し本塁打王に。その後も本塁打を放ち続けてリーグ優勝に貢献。平成

15年巨人にトレード。19年古巣のソフトバンクに移籍し23年には日本シリーズ

MVPを獲得。24年通算400本塁打2000本安打を達成し10月に引退。著書

に『一瞬に生きる』(小学館)がある。

 

 

 

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