国土交通省 外壁タイル等落下物対策の推進について 「外壁仕上診断技術者」の育成について
建設省住指発第二二一号
平成二年五月一九日
特定行政庁建築主務部長あて
建設省住宅局建築指導課長通達
外壁タイル落下防止対策に関する通知内容の要約
通知の目的
- 北九州市での外壁タイル落下事故を受け、再発防止策を検討し、その報告を通知すること。
- 建築物所有者等に対し、外壁タイル等の落下防止について積極的に指導すること。
- 既存建築物の外壁落下防止改修に係る融資制度や特別償却制度の積極的な活用を指導すること。
- 外壁仕上げ診断技術者の育成のための講習が実施される予定であることを周知すること。
主な内容
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再発防止策の検討
- 北九州市での事故を受けて、昨年12月より安全対策の検討が行われ、その報告が取りまとめられた。
- 今後は、この報告に基づき、建築物所有者等への指導を強化する。
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建築物所有者等への指導
- 既存建築物における外壁タイル等の落下防止については、「442号通知」で既に通知されている。
- 今後も、この通知に基づき、積極的に指導を行う。
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融資制度・特別償却制度の活用
- 既存建築物の防災改修に係る融資制度や、建築物の落下物対策のための改修に係る特別償却制度が既に存在する。
- これらの制度の積極的な活用を指導する。
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外壁仕上げ診断技術者の育成
- 今秋、(社)建築・設備維持保全推進協会において、外壁仕上げの診断を行う技術者を育成するための講習が実施される予定。
- 関係団体への周知を依頼。
箇条書き
- 北九州市の外壁タイル落下事故を受け、再発防止策を検討。
- 検討結果を報告し、建築物所有者等への指導を強化。
- 既存建築物における外壁タイル等の落下防止については「442号通知」に基づく。
- 融資制度や特別償却制度の活用を促進。
- 外壁仕上げ診断技術者の育成のための講習が今秋実施予定。
- 関係団体へ講習の周知を依頼。
補足
- 442号通知: 既存建築物における外壁タイル等の落下防止に関する基本的な指針。
- 融資制度: 既存建築物の防災改修費用の一部を融資する制度。
- 特別償却制度: 建築物の落下物対策のための改修費用を、一定期間にわたって全額損金に算入できる制度。
先の北九州市で発生した外壁タイル落下による人身事故に係る当面の対策については、「既存建築物における外壁タイル等の落下防止について(平成元年一一月二九日付け建設省住指発第四四二号(以下「四四二号通知」という。))」により通知したところであり、かかる事故の再発を防止するため、昨年一二月より当職において安全対策の検討を行ってきたところであるが、今般その報告を別紙のとおり取りまとめたので通知する。
今後は、当該報告を活用し、左記により、建築物所有者等に対し、外壁タイル等の落下防止について積極的に指導されたい。
また、既存建築物の外壁落下防止改修に係る融資制度及び特別償却制度については、「既存建築物の防災改修に係る融資の運用について(平成元年一〇月三〇日付け建設省住指発第四一二号)」及び「建築物の落下物対策のための改修に係る特別償却制度の創設について(昭和六二年五月二三日付け六二国防震第二〇号、建設省住防発第一一号)」により既に通知しているところであるが、今後とも、これらの制度の積極的な活用の指導に務められたい。
三 外壁仕上診断技術者について
今秋を目途に(社)建築・設備維持保全推進協会において、外壁仕上げの診断を行う技術者を育成するための講習が実施される予定であるので、関係団体への周知方お願いする。
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別添 建築技術審査委員会 外壁タイル等落下物対策専門委員会 報告書 平成2年3月 建築技術審査委員会 外壁タイル等落下物対策専門委員会 報告書 目次 第1章 建築技術審査委員会「外壁タイル等落下物対策専門委員会」の概要…1291・420 第2章 タイル外壁等剥落事故事例…1291・422 第1節 住宅・都市整備公団住宅のタイル外壁剥落事故の概要…1291・422 第2節 最近のタイル外壁等剥落事故の事例…1291・422 第3章 タイル外壁等の現状とその診断に係る問題点…1291・425 第1節 タイル外壁の現状と問題点…1291・425 第2節 タイル外壁等診断の現状と問題点…1291・431 第4章 タイル外壁等の剥落防止のための当面の対策…1291・442 第1節 総論…1291・442 第2節 タイル外壁等剥落による災害防止のための診断指針の策定…1291・442 第3節 外壁仕上診断技術者の育成…1291・458 第4節 診断機器の評価、認定に関する基本的方針…1291・459 第5章 タイル外壁等剥落事故防止のための設計・施工上の留意事項…1291・461 第6章 タイル外壁等の剥落防止のための対策の今後の課題…1291・466 第1節 行政上の対応…1291・466 第2節 技術の開発と統計データの整備等…1291・466 第1章 建築技術審査委員会「外壁タイル等落下物対策専門委員会」の概要 第1節 設置の目的 平成元年11月21日に発生した、住宅・都市整備公団住宅の外壁タイルの剥落による死傷事故は、落下物対策の重要性を改めて認識させるものであるが、今後このような事故の発生を防止するために、外壁の診断及びタイル張り・モルタル仕上げ工法の現状の問題点を洗い出すとともに、外壁タイル等の剥落防止のための診断指針、診断技術者の必要性等について検討することを目的とする。 第2節 設置の期間 平成元年12月~平成2年3月31日 第3節 委員構成 次頁委員名簿参照 第4節 検討内容 (1) タイル外壁等の診断指針の現状の検討 (2) タイル外壁等の診断者の現状と問題点の抽出 (3) タイル外壁等診断指針の策定、診断技術者の育成、診断機器の評価・認定の検討 (4) タイル外壁等の設計、施工上留意すべき事項の検討 第5節 委員会の開催 第1回委員会 平成元年12月8日(金) 第2回委員会 平成2年2月19日(月) 第3回委員会 平成2年3月23日(金) 建築技術審査委員会 外壁タイル等落下物対策専門委員会 委員名簿 (アイウエオ順) (建築技術審査委員会委員) ◎岸谷孝一 日本大学理工学部教授 青柳幸人 住宅・都市整備公団建築部長 今泉勝吉 工学院大学工学部教授 坂本功 東京大学工学部教授 (専門委員) 池本孝 (社)日本左官業組合連合会常任理事 池本工業(株) 佐野紘一 (社)建築業協会代表 (株)竹中工務店東京支店技術部長 谷口哲彦 (社)建築・設備維持保全推進協会専務理事 田村茂 (社)全国タイル業協会副会長 不二窯業(株)取締役副社長 難波連太郎 工学院大学工学部教授 楡木尭 建設省建築研究所第2研究部長 迫英介 日本電信電話(株)建築部建築技術開発室主幹技師 馬場明生 建設省建築研究所第4研究部施工技術研究室長 吉原朋之 東京都都市計画局建築指導部長 米田修 建設省大臣官房官庁営繕部建築課長 第2章 タイル外壁等剥落事故事例 第1節 住宅・都市整備公団住宅のタイル外壁剥落事故概要 1 事故概要 (1) 発生日時 平成元年11月21日(火)午前11時18分頃 (2) 発生場所 北九州市小倉北区昭和町14番20号路上 (3) 建物名称 住宅・都市整備公団昭和町市街地住宅 (4) 事故の状況 昭和町市街地住宅の塔屋の国道3号線側外壁の躯体とタイル下地モルタル(縦約5m、横約8m、厚さ約3.5cm)が剥落し、31m下の歩道上の通行人の上に落下し死傷者を出した。 (5) 死傷者 死亡 男(71歳) 死亡 女(68歳) 重傷 女(42歳) (6) 建物管理者 住宅・都市整備公団 2 建物概要 (1) 構造、規模等 鉄筋コンクリート造 敷地面積 3,805.16m2 延べ面積 15,216.54m2 (2) 階数、高さ 地下1階、地上10階、塔屋2階 (3) 外装仕上げ 47二丁掛タイル張り
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