屋根上PPA太陽光の盲点「電気保安上の責務は建物側に」、責任分界点は?
竣工前から建物側との綿密な協議が重要
日経BP 2024/04/17
屋根上PPA太陽光発電の責任分界点
概要
- 屋根上PPA太陽光発電における責任分界点は、完工後の最初の点検で見つかった不具合の対応で問題となる。
- 電気事業法に基づき、保安上の安全確保の責務は建物側の電気主任技術者にある。
- PPA事業者や需要家側が保安規定を把握していない場合、責任分界点の協議が難航する。
問題点
- 完工後の最初の点検で見つかった不具合の対応で、建物側とPPA事業者の間で責任の所在が不明確になる。
- 電気事業法に基づく保安上の責任は建物側にあるが、PPA事業者や需要家側が認識していない場合がある。
- 保安規定の変更は建物側の電気主任技術者が保安監督部に行う必要があるが、PPA事業者や需要家側が手続きを怠る場合がある。
解決策
- 竣工前から建物側とPPA事業者との間で綿密な協議を行い、責任分界点を明確にする。
- PPA事業者や需要家側向けに、電気事業法に基づく保安上の責任に関する説明会を実施する。
- 保安規定の変更手続きを建物側とPPA事業者で分担する。
その他
- エネテクは、屋根上PPA太陽光発電の点検やO&Mサービスを通じて、責任分界点に関するトラブル解決に貢献している。
- 今後も、屋根上PPA太陽光発電の普及に伴い、責任分界点に関する問題はますます重要になると考えられる。
箇条書き
- 責任分界点は、完工後の最初の点検で見つかった不具合の対応で問題となる。
- 電気保安上の責任は建物側にある。
- PPA事業者や需要家側は、保安規定を把握する必要がある。
- 竣工前から建物側とPPA事業者との間で綿密な協議を行う。
- PPA事業者や需要家向けの説明会を実施する。
- 保安規定の変更手続きを分担する。
- エネテクは、責任分界点に関するトラブル解決に貢献している。
- 責任分界点は、屋根上PPA太陽光発電の普及に伴い、ますます重要となる。
日経BP
このシリーズでは、エネテク(愛知県小牧市)が、太陽光発電所の点検やO&M(運用・保守)サービスを担う中で対応してきたトラブル事例を取り上げている。同社は、2007年に創業した電気設備工事会社で、太陽光発電の施工も多く担当している。
企業経営におけるESG(環境・社会・ガバナンス)の重みが増してきていることに加えて、電気料金が高止まりしていることによって、商業施設や物流施設、工場といった建物の屋根上を活用した太陽光発電所の新設が活況を続けている。
エネテクのEPC(設計・調達・施工)サービスの受託実績でも、直近の1年間ではオンサイト型のPPA(電力購入契約)による案件が大半を占めている。次いで、同じくオンサイト型の自家消費案件となっている(図1)。いずれも屋根上を活用することが主流である。
図1●エネテクがEPCサービスを担当した屋根上の自家消費案件の例
(出所:エネテク)
加えて、新規に受託した点検サービスの大半も屋根上を活用した太陽光発電所となっている。
EPCサービス会社の多くは、自社で施工はしても、20年間またはそれ以上という長期間にわたる太陽光発電所の保守・管理についてのノウハウに乏しいためである。そこで、完工後の引き渡しと同時に遠隔監視と点検を請け負う屋根上の案件が増えているという。
このような中、とくにPPAによる屋根上太陽光において、完工して施工会社からの引き渡し後、最初の点検で見つかった不具合の対応には、これまでにない注意が必要な場合が出てきている。
PPAによる屋根上の太陽光発電所に対する点検サービスでは、一般的に発電事業者(PPA事業者)から点検を請け負う。このため、点検で不具合を見つけると発電事業者に報告する。これが通常の対応である。
しかし、太陽光発電設備は屋根上に設置されている。このため、電気事業法に基づく保安上の安全確保の責務は、建物側の電気主任技術者にある。PPAによる太陽光発電設備の竣工時には、必要となる保安規定の変更も建物側の電気主任技術者が保安監督部に届け出なければならない。
この決まりを発電事業者(PPA事業者)や需要家側(建物側)が把握していないことがある。
こうした状況で太陽光発電設備の不具合が見つかった場合に、建物を管理する電気主任技術者と発電事業者(PPA事業者)の間で、事後的な責任分界点などの協議が難航してしまうことがたびたび発生しているという