No.86  共用部分の修繕ではない変更決議を円滑化 |  NPO法人日本住宅性能検査協会 建築・不動産ADR総合研究所(AAI)

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No.86

 

===共用部分の修繕ではない変更決議を円滑化===

 現在は共用部分の変更は、特別決議(4分の3以上)が必要です。この要件を満たすことは容易ではありません。そのため必要な工事が迅速に行えない場合がありました。今回の改正では、多数決割合を単純に引き下げる案のほか、外壁崩落のおそれなど一定の客観的要件を満たした場合には多数決割合を規約で緩和することを認めるよう審議されます。

 

===建て替えを円滑化するための仕組み===


 ①多数決要件の緩和

 現行は、建て替え決議の多数決要件(5分の4以上)という高いハードルとなっています。このため建替えでなければ再生が難しいマンションで、建替えが行えない場合があります。特に築50年を超えるマンションの場合は、1981年以前の建設で旧耐震基準で設計されているため「耐震性不足」が指摘される場合があります。

 そこで一定の要件「要除却認定マンション等」があれば、(4分の3)で建替え決議されることが検討されています。

 

 ②賃借権の消滅

 現行の法規では、建て替え決議がされても専有部分の賃借権等は消滅しないため、賃借人が拒否しますと、建て替え工事の円滑な実施を阻害する場合があります。建て替え決議がされた場合には、一定の手続を経て賃借権を消滅させることができます。

 

===区分所有関係の解消・再生のための新たな仕組み===

 

 ①多数決による建物・敷地一括売却や建物の取壊し等
 建物・敷地一括売却や建物の取壊し等を行うには、区分所有者全員の同意が必要であり、事実上困難なため、多数決による一括売却や取壊し等を可能とする仕組みが、審議されています。

 

 ②多数決による一棟リノベーション工事
 既存躯体を維持しながら、専有部分を含む建物全体を更新して、実質的な建て替えを実現する「一棟リノベーション工事」が技術的に可能になっていますが、区分所有者全員の同意が必要で事実上困難です。建て替えと同等の多数決による一棟リノベーション工事を可能とする仕組みです。 経年マンションでは、上階の上下水道管が下の階の天井にあり、改修工事ができないことや、エレベーターの止まらないフロアの階などバリアフリー工事が困難でした。「一棟リノベーション工事」では、専有部分の面積の変更なども可能となります。