
「キノコを乗せ忘れたこと、深くお詫び申し上げます!」
玄関先で、
赤いキャップに赤いエプロンを見につけた彼が頭を下げる。
「あ、はい。あ、もういいです。わざわざ持ってきてもらって、逆にごめんなさい」
「いえ、そんなことは。こちら、キノコになります!」
「どうも・・・」
「あと、ピザのお代もお返ししますので」
「いえ、そんな・・・」
「当然です、受け取ってください!」
「そうですか、じゃあ・・・」
お金を渡されるとき、
彼の手が、一瞬わたしの手に触れた。
「え、全額?」
「もちろんでございます」
「でも、あの、わたしポテトもチキンも食べちゃったし、コーラも飲んじゃったし・・・」
「構いません、オカダピザからの、せめてもの誠意と受け取っていただければ」
「でも、でも、それじゃわたしタダ食いになっちゃう・・・」
「ふふ、タダ食いって、そんなことないですって」
彼が少し笑う。
ドキッ・・・
かっこいい顔の彼が、
ほんの少しだけ笑った。
その笑顔にときめいてしまった。
ついさっきまでキノコが乗っていなかったことをあんなに怒っていたのに。
今は、クレームをつけた自分が恥ずかしくなる。
キノコくらい自分で乗せれたのに。
冷蔵庫にしめじあったのに。
「でも、でも・・・」
なかなかお金を受け取らないわたしに、
彼がやわらかく言った。
「じゃあ、こうしましょう」
「今日は、僕にごちそうさせてください」
「オカダピザの店員ではなく、ただの男として。ほら、こんなにも絶好のPizza日和。僕は女性にピザをごちそうしたくなったんです・・・」
まぶしい。
まぶしい。
まぶしい。
「ありがとうございます、岡田・・・准さん??」
「准一。岡田准一です」