今日からゼミ合宿だというのにプレゼン資料がまとまらない。1時間にも及ぶプレゼンなど、学生風情には土台無茶な話なのだ。
大方の外形は出来上がり、大分煮詰まってきたものの、細部を見ていくと次々に不安要素が出てくる。教授に質問攻めにされること間違いなしである。
こんなときは気分転換に限る。パソコンの前から離れ、傍らで健やかに眠る大宜見さんを確認してからアパートを出た。外気が冷える。近頃は夜間めっきり涼しくなった。そろそろ夜中にクーラーをつけて寝る必要もないのだろうか。
1人色々と考えながら朝もやに包まれかけた町を歩いていると、なんだかやけに寂しくなった。このままでいいのだろうか。これからどうしたらよいのだろうか。
ふと新聞配達のバイクの走行音が懐かしく響いてくる。こんな時間帯に人の姿を見かけ、なぜか普段感じない安心感を覚えた。
いつもの風景が見えてくる。愛すべき我がボロアパートまではもうすぐである。
階段をのぼり、鍵の閉めていないドアを開けた。
部屋の中へ入ると、そこには大宜見さんが相変わらず健やかに眠っていた。