こんな気持ち | 一条の光~ダブルストーマ(人工肛門・人口膀胱)と日常と

一条の光~ダブルストーマ(人工肛門・人口膀胱)と日常と

大腸がん治療のため骨盤内臓全摘術を受け、人工肛門と人口膀胱(ダブルストーマ)を持つことになった41男が、ストーマや日々のことをつづります。17年11月に局所再発が見つかり、現在そいつと向き合っています。

痛みは、日に日に、ほんの少しずつ楽になってきました。一昨日は近所を散歩し、昨日は少し仕事に出かけることができました。その間ひどく痛むことはなかったのですが、東京での通勤となると人も多く立ちっぱなしで、どこかに横になって休める場所がある訳でもなく、下半身に疲労を感じました。

そして今朝も電車に乗っています。今日は病院で診察があります。がん細胞の遺伝子検査の結果が出ているはずで、それを聞くのと、どの薬剤を使うのかという話があるはずです。でも本当は行きたくないです、こんな日には。
クスリ関係の仕事をしている友人とも話しながら、抗がん剤のことはずいぶん調べ、考えました。分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などについてもいつものごとく勉強しました。抗がん剤治療されている方のブログの記録も参照させていただきました。

抗がん剤を作る方の立場からいえば、切除不能の進行がんの増殖を抑えることをクスリの主目的としていること。その目的のために、生じるリスク、例えば皮膚や神経や免疫、造血関係の障害をはじめとして、重篤な疾病、消化管の穿孔など致命的なものに加えてさらにがん原性があることも医療者向け取扱説明書には明記されています。がん原性というのは新たながんを生じさせる原因となりうるという意味です。

実際に抗がん剤を使われている方のおおかたの傾向を見るに、開始から3、4ヶ月の間に期待された効果が生じる場合が多い、しかし6ヶ月ころから効果は横ばい、止めるとまた悪くなると医者に言われて、クスリを変えたりしながら投与を継続するという流れが多いように見受けられます。1年を越えて年単位で断続的にでも続けた場合は、がんとは関係のないところで重篤な障害が生じる、あるいは転移に転移を重ねて手をつけられない状態になることは、ほぼ確実のように見えます。

初期には効果があるとはいっても、場合によっては、たった数回投与しただけで内臓に重大な欠陥を生じさせて入院手術となったり、がんを急激に進行させたりして切除可能だったものが不可能になる、手術の対象範囲が増えるというケースもあります。かくいう私も骨盤内臓全摘の前にゼロックスをやりましたが2回目の途中で敗血症になり、死にかけました。

ですから、当初から抗がん剤の説明に書かれているように、4、5ヶ月程度の延命があれば奏功、というのはクスリの効果に対する妥当な評価、あるいは期待のように思います。

ただ主治医は今日、術前に抗がん剤をして、それから手術をするよう強く勧めてくるでしょう。主治医の考えも分かります。標準治療としては手術・抗がん剤・放射線と3つの選択肢しかない中で、再々発を防ぎ、手術の切除範囲を小さくする、そして周囲の組織に「浸み込んでいる」がん細胞をいちかばちか叩く。放射線は腸に穴を開けることがあるから勧められない。主治医とて、私を故意に壊すことを意図していないと信じていますし、主治医にとって採りうるギリギリの手段なんだと思います。

でも、それでも、上記のリスクを含めて丸々背負うという覚悟には、今は至っていません。その覚悟は、もうそれしかない、やるか死ぬか、という状況になって初めて生まれるものではないでしょうか。これが今の正直な気持ちです。

抗がん剤について何にも知らなければ、こういう気持ちにはならないかもしれません。でも、そんな人は、本当はいないのではないかと思っています。我が命に関することを、完全に無知でいられるでしょうか。
だから抗がん剤に立ち向かっている方は、それ相応の覚悟を持っているのだろうと思っています。