2025年6月のテーマ

「かっこいいヒロインが登場する本」

 

第三回は、

「スカーレット・ウィザード」(全5巻、外伝)

茅田砂胡 作、

中央公論社、 1999年~発行

 

に登場する、

 

ジャスミン・ミリディアナ・ジェム・クーア

 

です。

 

 

 

 

茅田砂胡さんといえば、「デルフィニア戦記」というとても大きな代表作があるので、そちらでご存じの方も多いと思いますが、私は「スカーレット・ウィザード」を先に読んで、あの作者のファンタジーなら「デルフィニア戦記」も読んでみてもいいかなって流れで手に取った人間です。\(*^▽^*)/

 

 

 

 

文庫版も出ていますが、私が持っているのは上に貼ったC★NOVELS版です。

初読は25年くらい前かな。「剣客商売」みたいに何度も読み返している作品ではなく、せいぜい1回読み返したくらい。

「精霊の守り人」みたいに初読が5,6年前で記憶にも新しく、その後アニメやドラマで再び作品に出会ったわけでもない。

どちらかというと、遠い記憶の中にキラキラと輝いて存在している作品です。

それでも"かっこいいヒロイン"というと真っ先に思い浮かんでくるのが「スカーレット・ウィザード」

これまでの本の断捨離でライトノベルはかなり切り捨てられたものが多かったんですけど、どうしても手放すことができなかった本です。

 

ではまず、あらすじから。

人類が宇宙に進出し、ゲートという自然にできた宇宙のワープポイントを利用して行き来している世界。ワープポイントは入ってみないとどこにつながっているかわからないため、発見されてかつ使用されているものはごくごくわずかです。海賊王と呼ばれる一匹狼の凄腕ゲートハンター(ゲートを発見する人)であるケリーの元にあるとき奇妙な依頼が…。

宇宙エネルギー産業を担うクーア財閥の総帥であるジャスミンとの偽装結婚(ただし一年間だけ)です。ケリーは宇宙船レースで自分を捕まえることができたらと条件を出しますが、ジャスミンもまた凄腕の宇宙船乗りだったのです。

規格外の二人が織りなす、SFラブコメです。

 

ラブコメって書きましたが、お話としては割とアクションエンターテインメントな感じなので、全然スイートではありません。ただ、追いかけっこで捕まえたら依頼を受ける(=結婚する)って、「うる星やつら」やんけ!と思うのは私だけでしょうか??

それと、ケリーもジャスミンも二人ともかっこよすぎて、甘い雰囲気なしなのに恋愛ものってとこが既にコメディだと思います。

 

まあ、ラブコメの定義はさておき、ジャスミンのカッコよさについて語らせていただきたいと思います。

ジャスミンはクーア財閥総帥で28歳。出自を隠して十代の頃から軍に入隊。鍛え上げられた軍人で凄腕の戦闘機乗り。

身長は190㎝越えの体格の良い迫力ある美女。性格は豪放磊落なところがあり、しゃべり方やら思考、態度まで男勝りというより男性そのものな感じです。実物はあまり人目に触れることがなく、画面越しだったり映像としてテレビに映ったりが多いため、世間的には身長175㎝くらいの可憐な女性と思われています。(公式な場では身なりが良いし、美女ですから。)

ケリーも190㎝越えの長身なので、二人が並んだビジュアルはちょうどよく、映像上はお似合いのカップルに見えますが、実物を前にすると"壁"みたいだし会話を聞いていると男同士の会話みたい…とギャップがすごいです。

 

クーア財閥は大企業なので、総帥と言ってもジャスミンに全ての権限があるわけではありません。実際には重役たちがほとんど仕切っていて、ジャスミンをただの添え物にしておきたい思惑もあったりして、権力闘争と陰謀が渦巻いているという実態があります。ジャスミンは前総帥の一人娘なので、財閥を事実上乗っ取りたい重役たちからすれば、ジャスミンが死んでしまえば都合が良いわけで、彼女は自身の身辺に気を付けて生活しなくてはならない状況にあります。

ジャスミンとしては早急に跡継ぎを残す必要があるし、配偶者には頼りになる味方になってもらわねば困るので(…敵に懐柔されるような人間は論外)、白羽の矢が立ったのがケリーというわけ。

 

それから、このお話はケリーの目線から描かれている部分が多いですし、ケリー自身非常にかっこいいキャラクターなんですけど、「スカーレット・ウィザード」というタイトルが赤毛のジャスミンを表しているように、ジャスミンが主体のお話なんです。財閥内での権謀術数も、刺客のターゲットとして狙われるのも、ジャスミン。

前面に立って問題と闘っているのもジャスミン。どうしたいか、どうするのか、自分の運命を決める決断もジャスミンが自分で決めています。

ケリーはケリーで己の判断で行動するので、決してジャスミンの添え物ではないですが、ジャスミンがかっこよすぎるので、この女性の横に並ぶなら、ケリーくらいの器量がなければ無理だと思います。

 

財閥の総帥の一人娘のお嬢様が、凄腕の軍人で…ってそんなことある?っていう設定ですが、ジャスミンがなぜこういう経歴を辿ったのか、なぜ期限付きの偽装結婚なのか、その辺のことは物語で少しずつ明らかになっていくので、そこは読んだときのお楽しみとして書かずにおきます。そもそも、ネタバレを避けるのがこのブログのポリシーですので…。

 

というわけで、SFラブコメの「スカーレット・ウィザード」、おすすめいたします。

今は漫画化されたものもあるようですし、その後のお話も出ているようです。

その後のお話はいくつか私も読んだことあるのですが、「スカーレット・ウィザード」を知っているからこそ楽しめると思うので、ぜひ先にこちらをお読みいただきたい!(*^▽^*)