2025年3月のテーマ

「するっと読めちゃう!エッセイ」

 

第三回は、

「事象の地平」

川原泉 作、

白泉社文庫 2003年発行

 

 

 

です。

 

うーん、今は中古でしか手に入らないのか…。

Pickで探して気づいたものの、時すでに遅し。

この本を選択から外す気がないもので…すみません。

ちなみに、真ん中に張り付けた単行本版は、私は見たことなかったので、ちょっと新鮮です。

 

以前に何度か記事に書いたことのある漫画家・川原泉さんのエッセイです。

 

 

 

 

以前の記事でも書いたように思いますが、川原泉さんの作品はユーモラスでハートフル。お気楽な主人公だけど実はなかなかにつらい境遇だったり…。それでもお気楽でのんきに、幸せに生きていこうというお話が多いです。しかも作中にはいろんな知識がぎゅうぎゅうに詰め込まれていて、作者の哲学的な思索が垣間見えることもあり、文体はリズムにもこだわった川原泉節になっています。

また、絵にはニュートラルなかわいらしさがあり、世代を問わず好感を持たれることと思います。

そして、知識の宝庫と言える漫画を描かれていることから、ファンの間では、"川原教授"と呼ばれています。

 

その"川原教授"のエッセイであるこの本には、実はエッセイ以外にもエッセイに書かれた内容に関連付けた豆知識のページや、偉大な哲学者たちをイラスト付きで紹介したページ、対談などなど、川原泉さんの漫画が好きな方にとってはサービス満点の一冊になっています。

正直、哲学の話なんかは難しいと言えば難しいし、興味のない人にはただただ眠くなっちゃう類のお話ではあると思います。

でも、川原漫画は難しいことを難しく考えないというか、身近に感じさせてくれる描き方がされています。

逆に、難しいことを真面目に語るキャラクターのセリフに対しては、「なんかかっこええな。」みたいなツッコミが入ったりとかします。

この本の哲学者紹介のイラストにも、そういった川原節がきいていて、例えば、ソクラテスのページでは、

 

ソクラテス先生はチビでブ男だったそーな。

でもがんじょうな心と体を持っていた。

そのうえユーモアのセンスも抜群だ。

こーゆーおじさんが近所に一人いると、そこの町内会は活気があって、手強い。

 

と添えてあります。

で、肝心のエッセイの内容はと言いますと、競馬育成ゲームで育てた馬の話とか、自宅のベランダで行っている園芸の話など、小難しいことなどない日常のつれづれを洒脱に軽妙に綴ってあります。

長年のファンにとってはまさしく大好きな漫画家の素顔を覗き見られる楽しさがありますし、漫画を読んだことない方も、川原節ってこういうことか~とわかってもらえる独特の文章が味わえます。

 

個人的には、漫画を読んでいる方がより川原ワールドを楽しめるんじゃないかという気がします。

で、漫画を読んだことないという方には、この本の前に、川原泉さんのエッセイ漫画「追憶は春雨じゃ」を読むことをおすすめします。このエッセイ漫画は25ページくらいの読みきりで、多分1980年代に描かれたものだと思います。

白泉社文庫の「中国の壺」(川原泉 作)に収録されています。

作者が漫画家になって上京していた頃に描かれたもので、地元の友達とのエピソードや、夜中にコンビニの鮭弁当を食べたらのどに鮭の骨が刺さって病院に行った話など、エッセイなんだけど、ファンからすると川原漫画そのものです。

 

どちらの本も今では手に入りにくいかもしれませんが、それでも、おすすめいたします。(*^▽^*)