2020年4月のテーマ
初心者でも面白かったSFの本
第二回は
「ブレーメンⅡ」(全5巻)
川原泉 作
白泉社ジェッツコミックス 2000年発行
です。
川原泉さんは子供のころから大好きな漫画家さんです。
彼女の作品は、シリアスな設定のわりにほんわかした雰囲気がいつも漂っていて、読みやすいながらも考えさせられることも多くて、子供のころの私にとっては色んなことを勉強させてくれたものでした。
また、漫画の中でいろんな分野の知識をぎゅうぎゅうに詰め込んであって、しかも難しいところは適度に端折ってくれているので、普段触れない分野の知識を得られました。
例えば、山梨県のワイナリーを舞台にした作品では、ワインの作り方や、赤、白、ロゼの違いについて知りましたし、フィギュアスケートのお話では、当時(昭和期)のフィギュアスケートのルールや、ペア部門の現状について知りました。
今回お勧めするブレーメンⅡは、1998年に連載が開始された作品なので、川原作品の中では新しい部類に入ると思います。
人類による宇宙開発が進んだ未来のお話なのですが、ご多分に漏れず宇宙開発の歴史(創作ではない)のエピソードが盛り込んであって、ためにもなります。宇宙船の仕組みなどの科学的な知識や物理学の難しい理論は作者のことわりつきですっ飛ばしてありますけどね。
ストーリーは、人類の宇宙開発が進み、銀河系間の行き来が盛んになった未来、宇宙のあちこちに人類は進出して散らばっています。その一方で、女性の社会進出が進み、晩婚化・少子化の波が押し寄せ、早い話が人手不足。その反面、環境保護などの活性化により絶滅危惧種の動物たちが救われて動物の数は増えている。そこで、ある博士が動物の知能を高め、人間と同じように二足歩行して話し、生活できるようにしたのです。こうして人間に代わる働き手として、動物たちが活躍する社会が誕生しました。
主人公のキラ・ナルセは宇宙船をたくさん所有するスカイ・アイ社で宇宙船の船長をしています。彼女が昇進して初めて任された大型輸送船が<ブレーメンⅡ>。船員は艦長以外みんな動物です。<ブレーメンⅡ>が初航海で巡り合う様々な出来事を描いた物語なのです。
ブレーメンⅡでは人間も動物も対等に暮らしていますが、まだまだ社会では差別されているという現実が垣間見えるシーンがちらほらあったり、失敗した生物実験のダークサイドがみえたり、シリアスな内容も織り込まれていますが、コメディタッチのほんわかムードでストーリーが進んでいく川原節は健在です。
実はこのお話は、「空の食欲魔人」(白泉社文庫)に収録されている「アンドロイドはミスティーブルーの夢を見るか?」という読みきりの続編にあたります。読み切りの方を読んでいるとより楽しめますよ。
面白くてためにもなる川原泉さんの長編SF漫画。おすすめいたします。(*^▽^*)