2023年10月のテーマ

「映画を観て連想したクリスティー作品」

 

第三回は、

「アクロイド殺し」

アガサ・クリスティー 著、羽田詩津子 訳、

早川クリスティー文庫、 2003年 発行

 

 

です。

 

今月のテーマでいうところの"映画"とは、先月公開された、「名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊」です。

 

「アクロイド殺し」はクリスティーが1926年に発表した作品でポアロシリーズ三作目の長編です。

『ロンドン・イブニング・ニュース』の連載小説だったものを単行本化した作品だそうです。

この「アクロイド殺し」と「オリエント急行殺人事件」「そして誰もいなくなった」「ABC殺人事件」の4作品(だったと思う!)はアガサ・クリスティーの作品の中でも発表当初に"ミステリーとして斬新すぎる"として物議を醸した作品だと何かで読んだことがあります。

 

それはさておき「アクロイド殺し」のあらすじとまいりましょう。

深夜にかかってきた電話で駆け付けた医師のシェパードは、村の名士であるロジャー・アクロイドが殺されているのを発見します。事件は迷宮入りになるかと思われましたが、最近村に越してきた変人が名探偵のポアロだと分かり、被害者の身内の娘フローラがポアロに事件を解明してほしいと依頼。引退してかぼちゃの栽培をしていたポアロですが、再び事件に着手することになります。

 

この作品は、シェパード医師の手記の形をとっており、それまでヘイスティングス大尉が担ってきた語り手の役をシェパード医師が行っています。彼には詮索好きでおしゃべりな未婚の姉がおり、姉弟で暮らしていますが、この姉のおしゃべりがすさまじくて、物語のいいスパイスになっています。

 

映画ではポアロが引退したという設定だったので、この作品をにおわせるような小物遣いがされていました。

なにせ、ポアロが引退していたというシュチュエーションの作品は他にはありませんから。

ポアロの住居の屋上でテーブルにかぼちゃが置いてあったり、ポアロが植物に水をやっているシーンが挟み込まれていたり。

あんな場所でかぼちゃの栽培ができるとは思えませんので、「アクロイド殺し」へのオマージュを挟み込んだというのを感じました。

 

なにせ、この作品はクリスティーの作品の中で最も議論の対象になった作品といってもよく、ミステリー小説におけるフェア・アンフェア論争を引き起こしたので有名な作品です。

日本では2018年に三谷幸喜さんが「黒井戸殺し」というタイトルでドラマ化しています。

ポアロにあたる名探偵は勝呂武尊(すぐろたける)野村萬斎さんが演じました。

クリスティー作品を舞台を日本に移してドラマ化したものは他にもあり、私も以前記事に書いたことがあります。

なので、ドラマを通じてこの作品をご存じの方もいらっしゃると思います。

 

 

この作品については、詳しいあらすじも感想も、読んだことない方に語るのはご法度だと思っていますので、これ以上は書けません。

ただ、すごく有名な作品であり、推理小説界に議論を巻き起こした作品であることのほかに、ポアロが引退して田舎でかぼちゃ栽培をしている時期というものすごく珍しい設定のお話なので、読む価値があると思います。

読んだことない、内容を知らないという方は、絶対に検索なんかしないでまっさらな状態でこの作品を読んでください。

それが一番面白いので。(経験者は語る。)

おすすめいたします。(*^▽^*)