2022年6月のテーマ

「大学教授のミステリー」

 

第一回は、

「オリジン(上)(下)」

ダン・ブラウン 作、越前敏弥 訳、

2018年発行、角川書店

 

 

 

です。

 

以前おすすめした、『ダ・ヴィンチ・コード』ラングドン教授シリーズの第五弾です。

 

 

ハーバード大学の宗教象徴学の権威、ロバート・ラングドン教授が主人公の推理小説シリーズ。

『オリジン』ではスペインが舞台となっており、主人公がビルバオ・グッケンハイム美術館やサグラダファミリアなど実際にある名所を訪れて謎解きおよび暗殺者や警察との追いかけっこを繰り広げます。

 

ラングドン教授は、元教え子、エドモンド・カーシュ主催のイベントに招待されてスペインのビルバオ・グッケンハイム美術館を訪れます。カーシュはコンピューター科学の天才で億万長者。"預言者"と言われるほど先を見通し、新しいことにチャレンジし続けています。その彼がイベントで人類最大の謎「われわれはどこから来たのか、どこへ行くのか」という問いへの回答を示すという…。

カーシュが示した答えをめぐり、宗教界やスペイン王家、全世界を巻き込んだ騒動へと発展していくのが今作のあらすじです。

 

『ダ・ヴィンチ・コード』でもそうでしたが、象徴学の教授という立場から専門知識を活用して暗号を解き、手がかりを辿っていくという学術的な謎解きと、殺人だったりテロだったりといった現実の事件の犯人を捜す謎解きの両方が同時進行するという楽しみが、ラングドン教授シリーズにはあります。

そのうえ、世界の名所旧跡を巡りながらその建物の建築学的、歴史的、芸術的価値まで解説してくれるという盛りだくさんさ!

 

『オリジン』では「われわれはどこから来たのか、どこへ行くのか」という問いに対しカーシュがいったいどんな答えを出したのか、その根拠は何なのか。宗教 VS 科学の対立を絡めてこれまでこの謎についてどのような議論が繰り広げられてきたのか、果たしてカーシュの出した回答はこの議論に終止符を打つことができるのか。読んでいてワクワクすると同時に、自身の価値観に基づいて、カーシュの意見(もし現実ならばと仮定して)が受け入れられるかどうかという点でも考えさせられます。

また、この作品ではカーシュがコンピューター科学の天才として現在の科学技術のかなり先を行ったことをやっているので、私としては、近未来SFに近い感覚でも読んでいました。

スーパーAIが登場したり、想像を超えたシュミレーションをコンピューターで行ったり、結構なSFだと思います。

それでもラングドン教授シリーズの真骨頂である謎解きや薀蓄は変わらず…素晴らしいバランス感覚でシリーズに新風を吹き込んだ作品だと感じます。

 

また、お堅い謎解き一辺倒というわけではなく、スペイン皇太子の婚約者が登場することで、ロマンスの要素もしっかり入れてあります。スペイン王家の代替わり問題とか、どこまでサービス精神旺盛なんだって感じ。

 

実はこの作品を読んでいて、私は結構早い段階で犯人の予想がついてしまったのです。が、犯人捜しだけじゃないのがこのシリーズなので、退屈することなく作者に振り回されながら最後まで読み終えることができました。

ミステリー小説なのに、犯人の目星がついても退屈しないって、すごくないですか?

 

ラングドン教授シリーズは第一弾の『天使と悪魔』からこの第五弾まですべて読んでいますが、私的には『ダ・ヴィンチ・コード』と甲乙つけがたい好きな作品でした。

知的好奇心を刺激するラングドン教授シリーズの『オリジン』、おすすめいたします。(*^▽^*)