2021年7月のテーマ

「大人気SF小説」

 

第二回は、

「三体Ⅱ 黒暗森林」(上)(下)

劉慈欣(りゅう・じきん/リウ・ツーシン) 作、

大森望、立原透耶、上原かおり、泊功 訳

早川書房、2020年発行

 

 

 

 

です。

 

前回の記事『三体』の続編で、シリーズ第二部となります。

致命的なネタバレは避けて書きますが、前作を踏まえての紹介となりますので、まっさらな状態から読みたいという方は、ここで引き返してください。m(_ _)m

https://ameblo.jp/ossmtosyo/entry-12685196895.html

 

 

 

 

 

 

前作のミステリー調から一転、ハードなSF小説となっています。

人類世界vs.三体世界の対立と攻防を描いているのですが、これまでに私が映画で観たり小説で読んだりしたことがある「異世界と接触した人類の物語」や「宇宙戦争のお話」とはまるで違ったストーリーでした。

物語の中でこれからどうなるのか不安に駆られている人々と同じように、先の予測がつかない不安を感じながら読みました。

特定の登場人物に感情移入して読むことはありますが、今回のようにこの本の世界を生きる一市民のような気持ちになって読むということは、私にとってはこれまでになかったことでした。

 

前作に続き、たくさんの登場人物がいますが、主人公といってもいいんじゃないかなという人物が二人出てきます。(私の主観です。)

羅輯(ルオ・ジー/ら・しゅう)章北海(ジャン・ペイハイ/しょう・ほっかい)です。

二人は作中で出会うことすらありませんが、三体世界への対抗策である二本柱それぞれに深くかかわっており、私の場合はこの二人が出てくるとテンションが上がりました。

私にとって、科学理論や技術の説明部分は読むのに時間がかかるパートであり、危機に際して人類社会が変化していく様や大衆心理の恐ろしさなどは興味を持って読めるものの、読み物として面白いメインストーリーの部分とは言えないのです。

やっぱり小説は登場人物の心の動きやそこから発生する行動、それに伴う結果を読むのが楽しい。

というわけで、この二人に焦点を当てつつ読んでおりました。

 

しかし、キャラクターでいうと、一番のお気に入りは史強(シー・チアン/し・きょう)です。

第一部からの登場人物で、元警察官。この人のメンタルの強さ。この状況で自分がすべき行動は何かということを瞬時に判断して行動ができるところ。自分にとって物事をシンプルにすることで、迷わず行動することを可能にしているように思います。それが、混乱する社会の中ではとても頼もしく感じられて、いいんだなあ。

 

さて、人物のことばかり書いてしまいましたが、この本のメインはやっぱり人類世界と三体世界の攻防です。

人類世界の切り札とされる策、面壁計画。この計画に携わる面壁者に対抗する三体世界の切り札が破壁人です。

面壁者と破壁人の頭脳戦はこの作品の大きな見どころといっていいと思います。

第一部と比べると格段にスケールが大きくなっている本作は、人類世界の団結や分裂といった問題も含まれているので、小説の中の話とはいえ、これからどうすればよりよい世界が作れるのだろうかと考えさせられます。

そして、副題の『黒暗森林』の意味を知ったとき、私は恐怖で震えました。

この本には本当にいろんなものがぎゅうぎゅうに詰まっています。

人間ドラマ、人類世界の行く末、科学技術の発達、頭脳戦、宇宙への想い、大衆心理が社会情勢を動かす様…。

それらのどこに心を動かされるかは人によって全く違ってくると思います。

では小難しいばかりの本かというと、そうでもなくて、エンターテインメント性が高いのです。

第一部も面白かったのですが、第二部はそれに勝ります。

長いですが、おすすめいたします。(*^▽^*)