2020年7月のテーマ
ちょっと古典文学
第二回は、
「文庫版 少年探偵(1) 怪人二十面相」
江戸川乱歩 作
ポプラ社 2005年発行
です。
日本を代表する推理、怪奇物の作家、江戸川乱歩が子供向けに書いた小説の第一弾です。
江戸川乱歩というペンネームは作家エドガー・アラン・ポーにちなんでつけられたというのは有名な話ですが、ポーと同じく推理、怪奇物の作家(私の見解です)として有名になったというのが、乱歩のすごいところだなあと思います。
元々は大人向けの小説を書いていた江戸川乱歩ですが、少年向け雑誌「少年倶楽部」に1936年に連載した少年探偵シリーズが人気を博し、以来、このシリーズはたくさんの作品が続いていきます。
前回の「ルパン対ホームズ」
に続き、こちらも怪盗と名探偵の知恵比べが面白い作品です。
和製「ルパン対ホームズ」といってもいいかもしれません。
怪人二十面相は変装名人の美術品泥棒ですし、探偵の明智小五郎はホームズばりの名探偵ですからね。
シリーズの作品では毎回好勝負を繰り広げる二人ですが、その二人の初対決がこの作品なのです。
先程、和製「ルパン対ホームズ」といいましたが、「怪人二十面相」シリーズならではの特色もあります。
まず、ちょっと怪奇色が取り入れられていること。
「怪人二十面相」ではそれほどでもないですが、以降のシリーズ作品では、魔物か妖怪か…とにかく人知を超えた不思議な存在が事件に関与しているのでは…という不気味な演出がされています。
みんなが「不思議だ。」「不気味だ。」と言っている現象を明智探偵が鮮やかに説明していくのがこのシリーズの醍醐味でもあります。
もう一つは、探偵の助手にして愛弟子である、小林少年(本名:小林芳雄)の立ち位置です。
推理物では、ホームズに対するワトソンというようなパートナーがよく登場します。ポアロだったらヘイスティングス大尉とか、中禅寺秋彦なら関口巽とかですね。
探偵が最後に謎解きをするまでは黙っているので、読者が感じるであろう疑問を述べたり、探偵の代わりに読者にヒントをもらしたりしてくれることが多く、読者に近い目線で物語を引っ張っていくというような役割をしているように思います。
小林少年の場合、作品がそもそも子供を対象とした読み物なので、この役割が子供になっていると考えることもできるのですが、先に挙げたコンビの例とは違って、探偵の代理を務めたり、他の少年たちを取りまとめて少年探偵団なるものを組織したりと非常に有能です。
明智探偵にも頼りにされていますし、探偵不在の時は自分で判断して色々策を講じます。
物語の中で小林少年の比重が非常に重く、主人公は明智小五郎ではなく小林少年のほうだといっていいでしょう。
名探偵コナンの構図とちょっと似てますね。ただ、毛利小五郎と違って明智小五郎は小林少年からすると神のような存在ですが。
コナン関連の小ネタをもう少し。
名探偵コナンで毛利小五郎の得意技といえば柔道の一本背負いですが、明智小五郎の得意技も同じです。さすが名前をもらっているだけあります。
また、「怪人二十面相」には出てきませんが、シリーズ二作目の「少年探偵団」では、小林少年率いる少年探偵団が団員の証であるBDバッジ(徽章)を持っています。これもコナンの少年探偵団メンバーがもっているバッジと同じです。使い方はずいぶん違いますが…。
前回ご紹介した「ルパン対ホームズ」と同じく、こちらも名探偵コナンと関連する要素がいくつもあります。
怪盗vs名探偵の知恵比べに加えて、そちらも楽しめるのではないかと思います。
おすすめいたします。(*^▽^*)


