人生から意味を問われる
2019年の11月10日のこと
その年の台風はとてもしつこかった。
台風19号が関東地方を直撃して、北上し、ノロノロと進み、通過しないのだ。
その結果、台風19号が近くの秋山川を氾濫させ、近くに住んでいた元義母Kのアパートが水浸しになった。
その後、街を復旧するために自衛隊が派遣され、
一時住んでいる地域は混乱状態に陥ったことがある。
元夫(Yとする)は
おそらく、Kの居住区の清掃作業に追われ、イライラしたのだろう。
Kとたわいもないことで喧嘩していた。
いつもなら仲のいい二人なのだけど、この日は違っていた。
イライラした雰囲気をまとっていきり立ったYはいきなり階段を駆け上がると、
二階にいた私に、ありったけの暴言をぶつけてきた。
H(娘の名)をどうして風呂にいれないんだ!
さっさと入れろよ!
に始まって、延々とそれは続いた。
もう、わけのわからない暴言なので、ここに細かく記すことはやめておくが、
とても聞き捨てならないことを口走りはじめた。
「一体お前は大学で何を学んできたんだ・・・・!何を学んだんだよ!!
娘を風呂にもいれられないのか?え!?
どこが大卒なんだ!
変わってるし・・・・家族も変わっているじゃないか」
ふだんなら、
いつもの暴言を聞き流す私は、この日はもう怒りでいっぱいになった。
いつも仮に腹が立っても、その感情を放置しておくのだが、
どうにもならない怒りに震えた。
その日、暴言は延々と続き、私はとうとう警察を呼ぶことにした。もしも警察を呼ばなかったら私は殺されてしまうのではないか、という恐怖が芽生えたからである。
携帯を持つ手が微かに震え、
もし、この携帯で110番すれば、これまでの人生が大きくかわるだろう・・・。
そしたら娘のHはどうなるのだろう・・・・。
ここまで考えた末、どうしようもなく逡巡した後に、
警察を家に呼んだ。
・・・・その後、私は家を出て、離婚手続きに踏み切り、私の人生は大きく変わることになる。
一時期、私は虚無感にも襲われた。
これまで、自分の心の状態を見つめることはしなかったが、
改めて心の中を見てみると、暴言で踏みにじられた箇所がたくさんあった。
これまでの私の努力は一体何だったのか、正直なところ、真っ黒な思いに駆られることが多々あった。
フランクルは『夜と霧』の中で次のように叙述する。
人生から何を我々はまだ期待できるかが問題なのではなくて、
むしろ人生が何をわれわれから期待しているのかが問題なのである。
われわれが人生の意味を問うのではなくて、われわれ自身が問われたものとして体験される
私の状況はまさにこのような状態で、
この時、私が自分の人生の意味を尋ねたとしても、
あまりいい答えは出なかっただろう。
この経験を経て、
これから何をするのか、によって私の人生は意味を持ってくるのであって
今後の自分の能動的なアクションによって、
人生のあらたなページが出来上がっていくのだ、ということを頭の片隅で理解していた。
この時ほど、人生から生きる意味を問われたときはなかっただろう。
この時は、本当に苦しかった。そしてどん底であった。
しかしながら、この時がこれまでの人生を変える大きなチャンスだ、ということも分かっていた。