The Night of the Milky Way
「ではみなさんは、そういうふうに川だと言われたり、乳の流れたあとだと言われたりしていた、このぼんやりと白いものが ほんとうは何か ご承知ですか」
先生は、黒板につるした大きな黒い星座の図の、上から下へ白くけぶった銀河帯のようなところを指さしながら、みんなに問いをかけました。
このセンテンスで始まる宮沢賢治著の名作『銀河鉄道の夜』。
私がこの本を読んだのは小学生の高学年だった気がします。
正直なところ、いつかは覚えていないのですが、面白そうなファンタジーだと期待して読み進めたのです。
・・・・でも、話が展開しても、なんだかつかみどころがない不思議な物語だなあ・・・・と思ったのを覚えています。
主人公は病気の母親と一緒に住んでいるジョバンニ。とても母親思いです。
そして親友のカンパネルラ。この二人の関係を中心に物語は進んでいきます。名作ですのでご存知の方は多いと思います。
The afternoon class
冒頭の午後の教室のシーンでは
「ではみなさんは、そういうふうに川だと言われたり、乳の流れたあとだと言われたりしていた、このぼんやりと白いものが ほんとうは何か ご承知ですか」
という問いをしながら、
この天の川には無数の星の集合体で、遠くに見えるものだけど、実は私たちもこの天の川に存在する地球という天体に住んでいるのですよ、ということを先生が示唆しています。
そして
「今日はその銀河のおまつりですから、みなさんは外へでてよく空をごらんなさい。」
との言葉で締めくくられています。
私たちが普段見ている星空。
一見遠くにあるもののようだけど、実は、私たち地球人も遠くに見える天の川の一部。
・・・・夜空に浮かぶ白いすじは「川」や「牛乳」(milky way)という表現がされているけれども、本当は何なのか?
この問いは本当に奥深く、これから展開する物語を象徴しているはじまりだと感じます。
実は「物事の本質とは何なのか?」という深いメッセージがこの問いかけに含まれている、と私は思います。
『銀河鉄道の夜』のストーリー展開を矢印で表現してみますと
教室
→ジョバンニの家庭
→お母さんにあげる牛乳
→星まつり
→銀河ステーション
→銀河の旅
→現実の世界に戻り牛乳を手に入れる
→川でおぼれた子供
この『銀河鉄道の夜』のストーリー展開が、この先生の問いに集約されていたのですね。
物語を読み込んでいくと、現実と空想のような話が交錯して、つかみどころのないように感じますが、実は宮沢賢治自身の深い洞察力が反映されている物語なのだと、大人になって気づいた作品です。
受け取り方は読者の自由ですし、特にきまりはありません。私は、それが文学を読む醍醐味だとも思います。
what 's the real?
だんだんと暖かくなり、夜空を観察するには良い季節になりました。
現実世界は疲れることが多いですし、そんなときに外に出て星空を観察すると良いかもしれません。
・・・・実は私たちが現実と思っていることが仮想で、仮想の世界が現実の世界かもしれません。
そういう問いかけをしてくれる『銀河鉄道の夜』。時代を超えて大人も子供も楽しめる一冊ですね。
で読むことができます。