(1)用途的地域
① 近隣地域
近隣地域とは、対象不動産の属する用途的地域であって、より大きな規模と内容とを持つ地域である都市あるいは農村等の内部にあって、居住、商業活動、工業生産活動等人の生活と活動とに関して、ある特定の用途に供されることを中心として地域的にまとまりを示している地域をいい、対象不動産の価格の形成に関して直接に影響を与えるような特性を持つものである。
近隣地域は、その地域の特性を形成する地域要因の推移、動向の如何によって、変化していくものである。
② 類似地域
類似地域とは、近隣地域の地域の特性と類似する特性を有する地域であり、その地域に属する不動産は、特定の用途に供されることを中心として地域的にまとまりを持つものである。この地域のまとまりは、近隣地域の特性との類似性を前提として判定されるものである。
(解説)
〔図表6-3〕を見てもらいたい。
近隣地域と類似地域の関係を表した図であるが、まず近隣地域とは対象不動産の属している用途的地域であり、この用途的地域とは、用途的観点から区分される地域のことである。地域を区分する場合、行政的観点からの区分をしたり、自然的観点からの区分をしたりすることも可能である。しかし、鑑定評価を行う場合に地域の区分はあくまでも用途的観点から地域を区分していき、分析することとなる。
さて、対象不動産の属する地域を用途という観点から一区切りした場合に把握される地域を、近隣地域という。そして、そこには用途に関して同一性を認めることができる不動産が地域の構成分子として近隣地域を形成しており、地域の特性(用途)が生まれる。図の場合は戸建住宅であるため、住宅地域ということになる。この地域の区分は、都市や農村といった規模の大きなくくりではなく、一般には「対象不動産を中心に北へ50m、東へ30m、南へ50m、西へ20m(←これはあくまでも一例)」といったような範囲で把握されるものである。
一方、類似地域も、近隣地域と同様に用途的地域であり、用途に関して同一性を認めることができる不動産の集合体であるが、近隣地域の特性(用途)との類似性を前提に把握される。つまり、近隣地域が住宅地域であれば、住宅地域が類似地域として把握されるわけである。ここで一つ理解しておきたいことがある。この類似地域という概念は、あくまでも近隣地域の特性(用途)との類似性を前提に把握されるものであり、対象不動産と代替・競争関係の成立する不動産が存する圏域(同一需給圏)内にその類似地域が存するか否かを問わない。言い換えると、近隣地域の特性(用途)との類似性があればどこに存しても類似地域となる。
なお、近隣地域の地域要因や地域の特性は、対象不動産の価格形成に直接の影響を与えるのに対して、(同一需給圏内の)類似地域の地域要因や地域の特性は、対象不動産の価格形成に間接的に影響を与えるものである。
また、地域要因の推移・動向により、近隣地域や類似地域もまた常に変化するものである。
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