《ギャレー美舟(荒木町)》
荒木町車力門通りを道なりに進むとギャレー美舟という店がある。日本的な、木材による簡素な造りを生かし、清廉された店である。料亭の多かった荒木町には少なくない印象の店である。
一見金額の高そうな店だが、荒木町の相場どおり、ランチは1000円以下だったので、一度入って見たくなった。
格子の扉が客を招くかのように開いている。一歩踏み込むとそこは土間であり、靴を脱ぐべきか迷うってしまう作りになっている。その土間で、ふと振り向くと落語の本が一様に並べられている。専門書と思われるものから、落語家による解説書、箱入りや文庫など、高価そうなものから普通のものまで様々だ。それを一通り眺め、関心を持った後、180度反対側の扉を開ける。この扉は閉められてあり、中と外の結界のように思えてくる。
ダウンライトの暗めの空間が眼前に広がる。とてもムードがある。その右側に構えるカウンターは、店の半分くらいの面積を締めており、太くて広い、そして、くの字に湾曲している。カウンターに垂直に置かれた棚にも落語の本がすらりと並べられている。
中に調理人と思しき人が一人、料理人らしく着物の袖をまとめている。
カウンターの調理人の位置は、テーブルと座敷が見渡せるすべて見渡すことが出来る。
テーブルは4人席と2人席。椅子には、太い木の手すりが付いており、背は、立て横に編まれてた皮の豪華な椅子だ。奥になる座敷は、そこだけの個別の箱になったおり、大きめのテーブルが2つある。覗き込むんで観てみると、大きめで、掘りごたつ式になっている。
店内には静かな音楽が流れているだけだ。私のほかに2組の客がいるが、お互いの頭をこするかのように、うつむき合っており、声を抑えて会話をしている。低い音のみが空気の波に乗る。
ランチのメニューは日替わりの温玉カレーうどん、刺身定食、まぐろ山かけ重などがある。その中でも一番面白そうな三食丼定食なるメニューをいただいた。三食丼定食とは鉄火丼、鳥そぼろ丼、鮭いくら丼がセットになった定食だ。900円。
料理人はカウンターの奥と、さらにその奥の調理場であろう場所のみを行き来している。暖簾のみで仕切られているので、ついつい調理をする様子を想像してしまう。
注文した定食が来た。3つの茶碗のような入れ物に、それぞれ3種の丼となっている。ちいさなドンブリの、かわいい定食だ。みそ汁と冷奴、御しんこ、煮物という組み合わせ。
丼はそれぞれ良い味付けである。鮭など大きめのそぼろで噛み応えがある。鉄火丼はとけるように滑らかだ。煮物は冷たくなってはいるが、とてもよく煮込まれ、甘くなった里芋と人参、きりたんぽまでが入っていた。
それにしても室内はやっぱり静かで、噛み砕くことで音をたてることがはばかれる。気を使い、噛むたびに奥歯に意識を集中する。
このブログのために携帯で写真を撮ってみたところ、注目をあびてしまった。それほどに静かなのだ。
よせばいいのに店内も料理人の目を盗んで2枚撮ってしまった。そのたびに注目をあびてしまった。
もう要注意人物視されているに違いない。
この雰囲気、この厳しい雰囲気、実はこの店は定期的に寄席になるようだ。それゆえのたたずまいであろうか。奥の座敷がその時のみ開放されるのだろう。この店は若手の舞台として落語普及に努めているのである。
この店がどの位昔からあるのか解らない。
かつて花街だった荒木町だけに、もしかしたら噺家と芸者の実話から生まれ出ていたことがあったかもしれない。そんなイキサツを想像するとわくわくする。
しかし静まり返った店内もにいると客の目も厳しくなりそうである。つまらないネタでもよく笑う客なんてのは、なんだか想像できなくなってきてしまう。
荒木町9
Tel: 03-3357-8177
≪麺屋 とみ吉(四谷3丁目)≫
四谷3丁目に駅を信濃町方面に入って偶然見かけたのが、この店麺屋とみ吉。
赤いちょうちんと白い暖簾のある小さな店で、隣の小さな蕎麦屋とともに、そこの通り沿いにそこだけポツンと密接してある。このラーメン屋の店構え自体、もし表のちょうちんに「○○そば」と書かれていたとしても全く違和感のないと感じてしまった。まるで、どちらがが目立つか競っているかのように張り紙やらのぼりやらが煩い。
そこに寄せ集められた中の、『鶏ガラスープ 北海道大豆100%の味噌らーめん』だったかの文字に心を奪われ、思わず入ってしまった。
北海道大豆100%であるので、とても濃厚味噌だろうと期待した。
店内の自動販売機で迷わず味噌ラーメンの食券を購入。
すぐに店員の女性によって座るべき席を指示され、その席にはすでに水とおしぼりが置かれていた。
けして込み合っていたわけではない。
ひとつのテーブルを除き、ポツリポツリの背中があるだけだ。
店内にはクラシックが流れ、静かであり、白い木肌の椅子やテーブルが、より一層空間を広く見せる。
丸太の椅子が、カウンターに沿って幾つも立っている。不思議とどの椅子も一本ずつひび割れ、中心に向かって割れている。
テーブルは4人席3つ。残りはカウンターとなっている。
席を案内した女性の店員以外は、料理する人も客もすべて男性だけである。
壁には有名人のサイン色紙が数枚貼られていた。ダチョウ倶楽部だけ認識できた。確かこの近所に有名なスタジオはあるが、それでも色紙が並ぶほど立ち寄るものだろうか。やはり隠れた名店か。と期待が膨らんでしまう。
壁の掲示には自家製ラードとある。別の張り紙には、スープは鶏ガラをベースに豚骨、野菜を数時間かけて煮込んだ。と言う意味のことが数行に渡り説明されている。それらを読みながらどんどん期待は膨らむばかりだ。
黒い丼に黒いレンゲ。ほのかに味噌の香りがする。そしてスープに背脂が浮かび、透明な膜を作っている。
麺の上にはワカメとチャーシュー、メンマ、カイワレ。
口に含むとややぬるめか。見た目よりあっさりしており、味噌味は薄く甘め。しかしだいぶ背脂が口の中に残る。さらに残るのはワカメの味だ。出汁もワカメであることが解る。
麺は卵縮れ麺で、よくスープを絡めている。金山製麺と書いてあった。
食べ進めるうちにひき肉の塊がひとつ、ふたつ、と出てきた。この塊は焼いたものなのか解らないが、焦げたようでもあり旨い。
最後にこういうおまけが隠してあるというのは、計画的なものなのだろうか?
総合評価では、とても旨いとも言えないが、不味いということはない。普通という言葉がぴったりだ。
実は、見て見ぬふりをしようとしたのだが、壁の張り紙に、「ラウス産の塩を使った塩らーめん」と、書かれている。ここの店、いろいろ試してはいるのだろうが、味噌も塩もというのは節操がない。
味噌が普通だったとなると、なおさら気になってくる。
それにしても、味噌でよかったのか、もしかしたら塩のほうが良かったのか、
気になってしかたがない。
左門町3-1 左門イレブンビル1F
03-3350-8810
≪十割そば 蔵や(四谷1丁目)≫
JR四ッ谷駅から三栄町通りに入ってすぐのところに十割そば 蔵やという蕎麦屋がある。ビルの1階に位置し、店先の入り口の左右にある黒い柱につけられた照明器具は、弱く灯っている。白い壁に黒い雨よけのフードがある。いかにも日本を代表する伝統的な食であるということを主張するような、奥ゆかしくもモダンな造りだ。
店内に入るとすぐに客たちのざわつきが聞こえる。店員はいつでも対応できるように数人が動ける位置に立ち尽くし、そのときに備えている。勝手に座るわけにはいかない。案内に促される通りにする。どこかのファミリーレストランのような対応である。
店内には、幾つものテーブル席があり、どれもこれも黒だ。テーブル席ごとに個室となっているので、他のグループは気にならない。かなり奥の方まで席があるようで、どのくらいの収容ができるのかが検討が付かない。入ってすぐのテーブルは、太い一本の木から切り出した切り身で、中心に板を付け仕切ることによりカウンターと成している。これが一人客用に、共同で座ることの出来る、一番大きなテーブルだ。
メニューはせいろ、讃岐うどん、それらと丼のセットという種類に分けられる。
小海老の天ぷらせいろを注文。880円。
待ちながら、なんとか店内の写真を撮れないものかと、仕切りの隙間から覗いてみるが、よいポジションでないばかりか、どこからでも店員が見えてしまう。そうでなければ壁だ。無理に撮ろうとするものなら不審者として注意されそうだ。既にそのしぐさは不審者のようだったかも知れない。見事な警戒態勢だ。
小海老せいろは見栄えがとてもよいものだった。黒く四角い入れ物に蕎麦が盛られている。その脇に海老天5つ。ゴマとねぎがヤクミとして添えられている。
蕎麦全体はまったくまじりっけが無いような、一点の曇りも無い綺麗すぎるくらいの蕎麦だった。普通なら混ぜ合わせたような色をしてそうなものである。テーブルの上の解説によると、「つなぎを一切使わない、自然の純そば粉のみで打つ十割そば」とある。期待が出来そうだ。
コシがある。むしろ一口というより一塊という表現がしっくりくるコシの強さだ。上品に少しずつ味わえ!ということか。十割蕎麦と言えば、細かく切れてしまう印象があるが、全くそのようなことがない。そのコシの強さは冷たさによるところが大きいように思う。
さらに汁も冷たい。汁に至ってはかなりの薄味であるので、蕎麦そのもののもつ淡い味を味わえるということだろう。
次に小海老の天ぷらであるが、これはいただけません。衣が柔らかく、海老も普通。これで衣が厚かったら、家で食べている天ぷらにそっくりだ。
蕎麦そのものは美味しくいただけるものと思うので、暖かいそばで試してみたい。という課題を残し、店を後にした。
四谷1-4-2 綿半野原ビル1F
Tel:03-3356-7571





