四ッ谷満腹情報 -3ページ目

≪小泉豆腐と米永(しんみち通り)≫

しんみち通りにはためく「手作りどうふ」ののぼりが気になってしかたがない。ひょいとそののぼりのあるビルの窪んだところを覗くと小泉豆腐という豆腐屋があった。建物のコンクリートをくりぬいたような、小さな入り口の前で近所の人と思われるおばさんと、華奢だが活発そうなこの店のおばさんの立ち話。世間話に花が咲いている様子を度々目にする。

店先に冷蔵庫の機能を持つ縦長のガラスケースがあり、その中には豆かん、豆乳などいくつかの商品名が書かれている。それらは専用のパックのような洒落たものに入っているわけではなく、豆乳などはパッケージを破った2リットルのペットボトルに入っているので、透明のプラスチックに乳白の液体が入っているという一見してみすぼらしい状態だ。持ち帰りでも、その場でいただくことも可能だ。「さむいからねぇ」といいながらペットボトルから専用カップに注いでくれた豆乳は、豆乳というより飲む豆腐といったほうがしっくりくる。それほど濃厚だ。



この店は実はこのビルのオーナーの店である。豆腐も豆乳も、このビル中で、すべて手作りで作られている。しんみちで30年、豆腐屋としては100年以上になると言う老舗だ。

豆腐を作ることに世代を越えて長年に渡りこだわってきた。都内の若い豆腐職人の集まりがあり、常に美味しい豆腐をつくるための研究が進められているそうだ。良い水でなければ良い豆腐も作れない、と説明された。

豆乳を飲んでしまったら、手作りの豆腐の濃さと言うものが良くわかった。この豆腐で料理が食べてみたくなってきた。


実はすぐ下の店でこの豆腐と使った料理を食べることが出来る。

階段を下る。階段の頭上に「豆腐料理 米永」の幕がでかでかと貼りつけられている。それを道案内として進む。まだ綺麗な入り口だ。花瓶に花が生けてある。

実はこの店は12月に出来たばかりの店だ。夫婦での経営だと思われる。ランチに至っては1月からはじめたそうだ。


ランチメニューとしては5種類ほどがあったが、豆腐料理が目当てだったので肉豆腐定食にした。

手元に運ばれて来てはじめて解ったのだが、冷奴とみそ汁、そして肉豆腐という豆腐三昧になってしまった。豆腐料理の店なので、わざわざ肉豆腐にしなくても付きものだったのだ。みごとに様々な豆腐が並んだ。少し壮観。


中心に位置する肉豆腐は四角く切ってあり、肉と一緒に煮込込んだ結果、汁と絡んで甘さとともに適度に焼け、歯ごたえのある素材になっている。素直に美味しい。肉と豆腐とごはんを変わり代わりに食べる。食が進む。

冷奴とみそ汁の豆腐は手でちぎったように切ってある。

冷奴はとてもきめが細かく、箸を挿すだけで崩れそうだ。箸ですくい、口に入れるとそのそばから溶け込むような舌触りだ。


みそ汁の豆腐は肌がすべすべで、滑らかだ。硬さはちょうどよい。ダシが良く出ているのでとても旨い。

どの料理方法の豆腐も美味しいことは間違いない。料理人の腕が冴える。

豆腐料理ばかりの定食を選んだ誤算が思わぬ発見をすることになった。

豆腐と言うものは、こんなにも料理によって違ってしまうものか!


こだわった良質な素材と腕の良い料理人のこれ以上無いほどの幸せな出会いがあったと言えるだろう。


実はこの店に入ってメニューを見たときに、控えめな印象のあるこの店の女将にレディースランチという煮物と刺身の定食でも良いと言って薦められた。この定食の呼び名に腰が引けてしまったが、よくよく聞けばここの料理人は築地で修行を積んだそうだ。料理人としての本領は、煮物や刺身に発揮されるのかもしれない。

男性である私が、いきなりレディースランチを頼んだらどんな顔をするだろう。それを考えると少し楽しく思えてくる。


四谷1-20 小泉ビルB1F

Tel:03-3351-1028

(下4桁がトーフヤだ。)

≪四万十(荒木町)≫

ネットで調べていたら、とても好評を得ている店があった。一人二人だけではない。何人もの人が絶賛し、高評価としている。きっととんでもなく旨いに違いない。

四万十と言う店だ。


荒木町と聞くだけ心が躍るようになった。その店は荒木町の柳新道通りにある。

荒木町のメインストリートである車力門通りを脇に入ると、その通りと平行にまっすぐ伸びた細路がある。左右に店舗が並び、看板やちょうちん、暖簾が垂れている。夜になると賑わうであろうことは想像できる。すぐ頭上にある電光掲示板などが、上下不規則に遠近し、暗闇の中に仄かな光を放つことだろう。

そのほとんどは居酒屋という種類の店であるのだが、モダンな外観であるものも、アルファベットの店名もある、なにかの教室もある。ジャズバーの店もある。これが時代の流れかと実感する。昔はもっと店はたくさんあったかもしれない。純和風の風景であっただろう。


四万十は、その通りの新宿通り沿い側からは奥の方にあたる。すぐ先にはエリマキトカゲのエンブレムを飾った有名な一心ラーメンが見える。

四万十は引き戸の上すぐ上に、レンガの屋根をかぶっている。



暖簾は表面に大きく出ており、引き戸のほとんどを隠している。その引き戸はしっかり閉められており、入ることをためらうほどだ。

その引き戸を静かに開けると、白衣を着た細身の中年男が客席に座り、テレビを見ていた。客が誰も居なかったのを良いことにくつろいでいたようだ。すぐに立ち上がり、カウンターへと身を移した。昼の料理はと言うと刺身定食か、さばの味噌に定食の2品のみ。

居酒屋に刺身というのはどこにでもあり、ものすごく旨いか、ものすごく不味いかしかないという印象がある。せっかくなので、味噌煮定食を注文した。900円


親父さんは寡黙で、何を聞いても一言で返してくる。この店は18年目にあたり、食材は土佐から取り寄せているという。そして客が少ないことを嘆くでもない。頑固ではなく、むしろ言葉に節に柔らかさを内包している。そして目線を手元に下ろし、黙々と料理をこなしている。言葉をかけることをためらってしまう。

上に貼り付けられた黄ばんだ板にある料理から1品がサービスだと言う。冷奴、半熟卵、海苔など。

そして、テーブルの上の漬物をご自由にどうぞ。と。


2人しかいない空間に、奥の座敷にある小さなテレビの笑い声がにぎやかに響く。


順番に料理をいただく。まずは味噌汁。だしを取った魚の頭を縦割りにした残骸が入っている。甘ささえある汁はとても旨い。具はともかく汁だけで充分だ。



温豆腐。冷奴はさまざまな店でいただいた。あたたかい豆腐も良いものだ。この豆腐は手でちぎってあり、醤油をつけないで、そのまま味わえる。箸で崩しながら食べる。

ごはん、漬物。そして刺身。刺身は赤黒い色をしており、羊かなにかと見間違うほどであったが、冷凍にされたマグロだった。ともかく赤黒い。表面の数枚を除き、冷凍された氷がのこり、サクサクと音をたてる。口の中が冷たさが広がる。もし刺身定食だったらどうしたものだったか。背筋が凍る思いがする。

最後にさばの味噌煮。さば自体は小ぶりで、白い皿の真ん中にそっと置かれた感じだ。よく煮込まれ、味噌をすっている。味噌の按配も濃すぎず、薄すぎず。良い味を出している。骨はまったく気にならない。

一つ一つの料理はとても旨い。一種を除いて。

それらの料理を、私も寡黙に黙々と食べる。


その空間を、奥の座敷にある小さなテレビの笑い声がにぎやかに響く。


店を出ると、入ってきたときと同じ左右に看板や、ちょうちんが一列にならんで、真っ直ぐに伸びている。

それらの店と店の間には、人が一人通ることの出来る程度の隙間がある。あちらにもこちらにもそれがある。

思わずにやけてしまう。実はこの柳新道通りという通り、その昔は花街のメイン通りだったそうだ。花街とは色町といい、芸者屋、置屋などが集まって形成された街である。

店と店の隙間には、やましいことと知りながら、こっそり隠れるために入る路であったに違いない。

懐手した着流しの若造が、窮屈なこの路の影で、背中を丸めて、振り向いていたのが目に浮かぶ。


この路では、多くを語ってはならないことがたくさんあるのだろう。



荒木町9-13

Tel:03-3357-1467

≪バンビとエリーゼ(しんみち通り)≫

≪バンビ≫

しんみち通りで赤い看板と言えば、知っている人ならバンビを思い浮かべるだろう。

大きな看板がしんみち通りにある中腹の細道の角に巻きつくようにあるので、インパクトがあるだけでなく、長年そこに位置し多くの人の目に触れている。そして昼はもちろん夜も遅くまで開店しているので、そこに行けばある。という安心感をもたせる。客は代わるがわる入っており途切れることがない。




店頭のショーケースには、ハンバーグを中心とした定食が並べられている。店内は調理場を中心にカウンターが回りこむように配置されている。どこからでも調理場からはすぐ近くにあるという印象だ。けしてモダンなデザインのコンセプトを作ったようなつくりではない。むしろデパートの屋上にあってもおかしくはないのではないかという印象だ。それゆえ一人のサラリーマン、男性客や学生にはとても気軽で、好まれているようだ。


料理場には店長である白髪の年配の男性と、同じく年配の太った女性の他には外国人ばかりである。多数の外国人を雇い、時間交代制にしていることからも流行っている店なのだと解る。


白髪のおやじさんが煎餅状にしたひき肉を、次々に、また次々に軽く投げる。空気を抜き真ん中だけ凹んだひき肉を、ラップを敷いたプレートに並べる。これも次々に、次々に。プレート一面に並べ終えると、その上にまたラップを敷き、丸いひき肉を敷く、また・・・その繰り返しだ。いったい幾つ作ったのか。

この親父さんはこの店を立ち上げてから何度この行動をやってきたのだろう。とても手際が良い。われわれが適当にやってもこんなに手際よく出来ないだろう。


その脇では黙々と、太ったおばさんが丸いジャガイモを4つ5つにザクザク切っては缶に詰めていく。一つ一つが三角形になっている。三角形になったそれを缶にいっぱいに詰めていく。

その缶からおもむろに油に投げ込み、揚げる。

このコンビネーションは見ていて、全く飽きる気がしない。




量はやや多めの定食を、がつがつと食べるのが似合う。言うまでもなく、作りたての、中から肉汁が出るハンバーグ。揚げたてフライドポテトはとてもうまい。


バンビランチ 650円

四谷1-3

Tel:03-3355-4658



≪エリーゼ≫

バンビと同じくしんみち通りにある洋食屋である。

この店は昼時ともなると、いつでも扉の外に5人程度の行列が出来ている。ランチタイムの14:00くらいまではそんな状態だ。だからほとんどの客は並ばなければありつけない。そんなに並ばれていては、おのずとどんなに旨いものか、と興味がわく。四谷にいては一度入ってみなければ話題に出来ないという店だ。




しかし感心なことに、非常にテキパキとしているので、並んでいても、もうすぐだろうという気にさせられる。並んでいるうちに注文を聞きにくる。もう逃げることも出来ない。

実は私にとっては、2度目の入店であり、横目で眺めていたオムライスが旨そうだったので、今回はそれと決めていた。


店内は細長く、カウンター席が10席程度、その後ろにテーブルが2つというつくりである。

カウンターには、ポテトサラダとキャベツの千切りのみがのった皿が置かれ料理の完成を待ちわびて居る。キャベツの千切りを手袋をした手でおもむろに掴み、皿の上に真っ直ぐ立つように盛り付けている。指を抜く瞬間が観ていて楽しい。

座る位置によっては厨房の料理のようすを見ることが出来る。フライパンに卵を流し込み、固まらないうちにケチャップを混ぜたライスを乗せ、一気にひっくり返している。みごとだ。自分でひっくり返してみたい気持にさせられる。


こげ跡が微塵も見えないほど、とても綺麗なレモンイエローだ。

すこし白身だった部分がある。その卵部分は薄く、崩すのが少しばかり惜しいような気がする。皿の上はオムライスとキャベツの千切りとポテトサラダだけだ。まったく無駄がない。

垂直にスプーンで挿し割ると、薄いオレンジ色を帯びたライスが顔を出す。薄め目の味付に玉ねぎやマッシュルームが混ざり、さわやかな味わいをかもし出す。


オムライスとはこういうものだ!というイメージ通りの味である。これこそ王道だ!という説得力がある。


店員が若く、元気な雰囲気も支持される原因かもしれない。


オムライス 800円

四谷1-4-2 峯村ビル1F

Tel:03-3357-6004