2024年4月17日付け朝日新聞1面の「折々のことば」
鷲田清一さんが選んだ言葉は、柚木沙弥郎さんのこのことばでした。
(以下引用)
まあ、ものの表情をしげしげと見る時間も惜しいみたいな生活、というのは反省しなきゃいけないんじゃないかな
柚木沙弥郎
ものが発する声。それを聞き取る中で、ものへの愛着も深くなる。昔、ものを買った時には「一人の家族が自分の家に入った位の感覚」があったと染色家は言う。その背後には、食べ、働き、育て、泣き、衝突し、といったリアルな生活感の堆積があったはずで、それが消費生活の中でかき消されつつあると。
『柚木沙弥郎作品集』から。
(引用ここまで)
ブログにも書きました。
↓
引用元の『柚木沙弥郎作品集』を読んでみたいと思って、最寄りの図書館に蔵書がなかったのでリクエストしたら、神奈川県立図書館から取り寄せてくれました。
これが、ため息が出るほど良い作品集。
柚木沙弥郎さんの型染めの図版が、いい。思わず「ああ」「おお」と声が漏れてしまうほど、良い。
現物を見たいから、やっぱり、日本民藝館には行きたい。
この作品集に2009年6月の柚木沙弥郎さんのインタビューが掲載されています。
わたしは、喋っている柚木沙弥郎さんを拝見したことがないので、予想ですが、話している途中で、どんどん思いついて、どんどんどんどん話題が変化していく。
身振り手振り多めで。
すごく頭の回転が早い方なんじゃないかなと。
あっちこっちに話が流れていくけれど、最後の着地はピタッと決める。
それは芯がすくっとあるから。
印刷された言葉を読んでいてそんなイメージを持ちました。
インタビューのこの部分を引用してご紹介したいです。
(以下引用)
ー昨年のパリは楽しかったでしょうね、路地が魅力的ですから。
楽しいね。人間が生き生きしているよ。なにせね、ウェイターやウェイトレスがきびきびしているよ。なんであんなに元気が良いのか。日本だって焼き鳥屋に行くと、こうやって売っている人いるよ。歌舞伎座に行く途中の昭和通りにある焼き鳥屋。そこの親父さんが煙いから、真赤な目をしているんだけれど、こうやって一生懸命に焼いている。すごいんだよ。ああいうふうに一生懸命やれば、僕は良いと思うんだけどね(笑)。もう何もかも忘れて。だから皆、そういうふうに乗っていけばいいんだよ。僕自身もおだてあげるの、こう自分を。鏡の前で(笑)。そうやって気分を出すんだよ。だからあんまり冷めている人は苦手だね、静かな人はね。静かでも良いんだよ。静かでも燃えている人はいるよ。だけどさ、あんまり気取っている人は駄目だ。
僕の染色に関する仕事というのは、パターンだけを考えるのでは駄目なんだよ。布とのしっかりした結びつきみたいなことが大切。染料とやり方と素材である布、それが布の上で結合して、そこに模様が出ている、というふうな捉え方が必要。模様なんていうのは最後なんだよ。だから、講習会をすると、みんな模様考えるのに時間をくってしょうがないんだよ。図案集を持ってきてやったりして、そんなのは駄目なんだよ。そうではなくて、「ともかく切り抜いたところに糊が付くんだから、丸だの三角だの四角だのを開けたらいいんです」と言う。考えるより行動して、そこから出来てくるんですよ。だから、模様というかパターンというか、デザインが切り離されたら駄目なんだよ。そこが工芸の魅力なんで、それを作ることも模様のところも、自分の中で仕事しながら出てくる。そういうことがなかなか学生にわからないね。
(引用ここまで)
・・・・
はい。
上甲にも、さっぱり、わかりません。
わからないけど、パッションは伝わりました。
インタビューのこのターンだけで、「駄目」が何回出てきたことか。
駄目出し。
一生懸命、焼き鳥を焼く親父はいい。
ここを読んでて、先日の高校生の読み聞かせの実技を思い出しました。
一生懸命、絵本を読んでいる、上手いも下手もない、一生懸命なその姿だけで、いい。
一生懸命って、やっぱり、いい。
ブログに書きました↓
高校生に読み聞かせの授業
「読み聞かせが少しでも上手くなりたい」
https://osekkainaobasan.com/2024/05/03/high_school_student_ehon-2/
「こうやって」というのがどうやっているのか、わからないので、知りたいなと思いました。
柚木沙弥郎さんが、鏡の間でどうやってご自身をおだてていたのか。
パッションのある人にやっぱり惹かれてしまう。
わたしも自分の中にある静かな青い炎を燃やし続けたい。
一生懸命なわたしでいたい。
自分の直感を信じたい。
渋谷龍太さんも言ってたし
訳がわからないくらい昂奮した。一生懸命ってのは本当にかっこいい。
— 渋谷龍太 SUPER BEAVER (@gyakutarou) May 6, 2024
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