大石規雄氏とのこと(2) | 徹通塾・芝田晴彦のブログ

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民族自決 戦後体制打破
基地問題を考える愛国者連絡会 / 自由アジア連帯東京会議

(前回記事 https://ameblo.jp/oscarexpress/entry-12287176969.html の続き)

私は最近、拉致問題の解決を米国の軍事行動に頼るなと繰返している。その主な理由は以下。


1)トランプの目的は自国に対する核の脅威の除去であって拉致問題の解決では無い。

膠着した拉致問題の解決を米軍の行動に期待する向きがある。ところが、北が米国の圧力に屈して「核開発をやめる」となったらそこまでだ。トランプの「軍事的オプション」の目的は決して拉致被害者の奪還や、北朝鮮に民主主義の親米政権を樹立することなどでは無い。


2)拉致被害者の安全上の問題。

米国による「軍事的なオプション」が実行された場合、北の独裁者と取り巻き共は訴追を逃れるため、真っ先に拉致被害者、更には政治犯収容所と云った犯罪行為の痕跡を消す可能性が大きい。拉致被害者奪還の観点から武力行使に反対する一番大きな理由。


3)「軍事的オプション」を実行するには北による先制攻撃を要する。

基本的な事項として米中は決して軍事的な直接対決はしない。半島有事となれば中国の動向を認識し、対処するのが必須。その中国は「北が米国本土を脅かすミサイルを先に発射して米国が報復した場合には中国は中立を守る」「米韓が攻撃して、北朝鮮の体制を転覆し朝鮮半島の政治的版図を塗り替えようとするなら、中国は見過ごさず、断固として介入する」と云うのが現在の態度である。

先に北朝鮮が手を出したら、中国は中朝軍事同盟を反故にすると言っている。これは北の独裁者にとっては裏切りと感じたであろう。北朝鮮と云う親中の緩衝国家さえ存続するのならば、核やミサイル、更には金正恩個人が除去されたとしても介入しないのだから。

一方、米国にとっても「軍事的オプション」を選択するには北が先に決定的な何かを仕掛けなければならないと云うことだ。さもなければ米中が直接軍事衝突する事態になる。それはトランプも、アメリカ国民も望まないだろう。つまり「拉致問題の解決を米軍の行動に期待する」のは「北の先制攻撃を望む」ようなものだ。それではいつまでも、北に主導権を握らせることになってしまう。


4)自衛隊は戦えない。

戦争するには備えが必要。然しわが国はその準備が全く出来ていない。半島有事ともなれば、わが国は傍観者ではいられない。

朝鮮戦争の際、米軍の多くはわが国の基地から飛び立った。武器・弾薬の調達も含め、兵站を担った。これは立派な軍事同盟国としての行動であり、北朝鮮から見たら紛れもなく敵国である。それでも当時、わが国が北の攻撃を受けなかったのは、当時、それだけの力が北朝鮮に無かったからに過ぎない。

休戦から64年経った現在、兵器の性能は格段に向上した。半島有事の際にはわが国に核ミサイルが飛んでくることは勿論、大規模な特殊部隊を有する北の直接侵攻に対処しなければならない。

ところが。自衛隊を取り巻く法律はとてもでは無いが「戦うため」に整備されているとは言い難い。この問題は別途、細かく訴える予定だが、わかりやすく言えば「疑わしきは撃て」が軍隊であるにも関らず、自衛隊員は「疑わしきは罰せず」の警察的な思考で行動しなければならない。

自衛隊イラク派遣。隊員達はビデオカメラを回していたと云う。万一、敵を撃ち殺してしまった際、自己の正当性を主張するための行為だったと聞く。世界中見渡してもそんな軍隊は存在しない。果たして、そういう自衛隊員を、北からやって来るであろう武装しかつ民間人を装い、米軍や自衛隊基地、或いは原発といった重点施設を狙う輩に対峙させていいのか?

戦えないままの自衛隊員を敵に対峙させるのは、かつての大戦中、多くの日本兵を銃火も交わさせないままに餓死させた行為の再現に等しい。半島有事に対する法的な備えも怠りながら、トランプの「軍事的オプション」に期待すると云うのは、そういうことでもある。


まだまだ理由はあるが、このあたりにしておく。


当時の国家公安委員長・梶山静六から拉致疑惑(その頃はそう呼んでいた)について、北朝鮮による関与が濃厚だとの政府答弁を引き出した日本共産党・橋本敦参議院議員の質問から既に30年が経とうとする。更に、横田めぐみさんの拉致からは40年、小泉訪朝から15年。5人の被害者が帰国して以降、事態は一向に動かない。

このまま事態の推移を見守るだけでいいとは思わないが、かといって解決を米国による「軍事的なオプション」に求めるのは論外だ。ではわが国は何をすべきか? それについては次回記事で述べる。(続く)