2022ふじいでらカルチャーフォーラム | 死ぬまでにすべての国宝を肉眼で見る

死ぬまでにすべての国宝を肉眼で見る

2023年12月現在の国宝の総数1,137件。そのうち、美術工芸品906件。これをすべて肉眼で見ようという計画です。関西中心の情報をお届けします。

ふじいでらカルチャーフォーラム「葛井寺 国宝 千手観音坐像は見た〜ふじいでらの歴史〜」 


へ、行ってきました(^_^)/場所は近鉄藤井寺駅より徒歩10分程度のところにあります、パープルホール(藤井寺市立市民総合会館)でした。



「ふじいでらカルチャーフォーラム」は、藤井寺市の文化や歴史に親しんでもらうよう、毎年テーマを替えて行っているようです。


今年のテーマは「葛井寺 国宝 千手観音菩薩坐像は見た〜ふじいでらの歴史〜」。

本来、昨年の9月に開催される予定でしたが、コロナの影響でこの時期に変更になりました(;´д`)

完全予約制で"満席"のはずでしたが、オミクロンの影響もあるのでしょう、座席を一つ開けながらにもかかわらず、空いていました。
↑プログラムはこんな感じ。
第1部では、各分野の専門家の方々から、国宝 千手観音菩薩坐像と葛井寺&藤井寺にまつわるお話しをうかがいました。
簡単にレポートしますね。



講演1 「葛井寺千手観音菩薩坐像のCTスキャン」

東京国立博物館学芸企画部 企画課長 丸山 士郎さんによる講演。

2017年に東博で開催された、特別展「仁和寺と御室派のみほとけ」に、国宝 千手観音菩薩坐像が出展された際の、CT画像調査から得られた知見を紹介する内容でした。

このお像、脱活乾漆造だったんですね(^_^;)忘れてました。
"脱活乾漆造"は、
①木の芯に粘土を盛って、おおまかな像の形を造る。
②その上に、漆に浸した麻布をペタペタと貼る。
③麻布がカチカチに乾いたら、中の粘土と木心を抜く。(この時点で、モナカの皮だけみたいな、お像ができる)
④表面に、木屎漆(こくそうるし)という、おがくずと漆を混ぜたペースト状のものを盛って、細かい表現を表す。
⑤乾いたら、金箔を貼ってできあがり。
⑥モナカの皮が壊れないよう、内部に木心を入れ補強する。
これらの、工程をCT画像を使って紹介していただきました。

麻布が貼り重ねられている枚数が、部位ごとに違ったり、装飾性の高い部分は木屎漆が厚く盛られていたりするのが、画像で良くわかりました。
中の粘土を抜くための穴(窓)が、どのように切られていたかもわかって、ほほぅ…となりました。
私は、"お像の底から粘土を抜いた"と思ってたんですけど、実際はお像の後頭部や背中に四角く穴(窓)を開けて、そこから粘土を抜いたようです。
たしかに、CT画像にその痕跡がしっかりとありました。
そして、お像の本体は脱活乾漆造りですが、1,000本(実際は1,041)の脇手は木造だそうです。
一方、体の前で合掌する手は、指の部分は針金をベースに木屎漆で形作り、腕は脱活乾漆造り。



講演2 「葛井寺千手観音の姿・技法と造立年代」

大阪大学文学研究科教授の、藤岡 穣さんによる講演。

実際に、国宝 千手観音菩薩坐像の腕を数えて1,041本あることを確認した人です(゚д゚)!
指先に"こより"を一つずつ巻いて、数えたそうです(^o^)

先程書いたように脱活乾漆造りは、手間暇とお金がかかるのですが、木屎漆で仕上げるため、修正が容易で(木造だと失敗したら修正できない)ニュアンスが作りやすい利点があります。

脱活乾漆で造られたお顔は、非常に穏やかで、東大寺法華堂に当初安置されていた(今は東大寺ミュージアム)、国宝 日光月光菩薩塑像のお顔と似ていることから、東大寺の官営工房が制作に携わったのだろう、ということでした。

そして、このお像が安置されている厨子は、耐火金庫内蔵だそうです。
講演後に葛井寺に見に行ったのですが、たしかにお像は金庫っぽいものの中に入ってました(^o^)/



講演3 「葛井寺を建立した人々」

関西学院大学文学部教授の、中西 康裕さんによる講演。

こちらは、藤井寺という土地の歴史と"葛井""藤井"の名字についてを、古文書から紐解くって感じの講演でした。

もともと、このエリア(藤井寺市)には渡来系の人達が多く住んでいたようで、その人たちが、"葛井"姓を名乗ったのが始まりのようです。
それが時を経て、"葛井"から"藤井"に変わっていったのだとか……
どうして"藤井"に変わったのか、本当のところはわからないんですが、先生によれば、"葛"を"ふじ"とは読みにくく、"ふじ"はやっぱり"藤"と書くのが素直で分かりやすかったんじゃなかろうか?との見解でした。ウン、ソウオモウ(^_^;)



講演4 「中世の観音巡礼と葛井寺」

京都教育大学の名誉教授、西山 克さんによる講演。

西国三十三所巡礼から葛井寺参詣を中心に、中世の葛井寺について、お話しをうかがいました。
中でも、葛井寺参詣曼陀羅についてのお話しが、面白かったです。

また、参考に出てきた清水寺参詣曼陀羅に、ナンパする(される)男女が描かれているの、初めて知りました(^o^)
見たことあるケド知らんかった……



後半のパネルディスカッションは、時間短縮されてしまいましたが(コロナ対応か?)、「国宝 千手観音菩薩坐像の8Kの3DCGモデルを作ってはどうか」「史跡の案内パネルがショボいと、訪れたときがっかりする」など、だよね〜と言える意見があがっていました。
たしかに、国宝 千手観音菩薩坐像は1,000本の手があったり、背中側を見ることができたり、分解した様子を見ることが、8K画像で自分でグリグリ見られたら楽しそうですね~
東博の方や藤井寺市長もいらしたので、ぜひとも実現してもらいたいものです。(法隆寺の国宝 救世観音の8K3DCG 


)



その後、このフォーラムに合わせて特別公開された、国宝 千手観音菩薩坐像を拝見に、葛井寺へ向かいました。
毎月18日が、本尊の国宝 千手観音菩薩坐像の公開日なので、チャンスは毎月あります(^_^)
堂内は撮影禁止のなで、写真はありません。ザンネン(^_^;)

500円の拝観料をお納めし、堂内内陣入り、唐破風の付いた立派な厨子に収まる、国宝 千手観音菩薩坐像を久しぶりに拝観しました(^_^)

柔らかく穏やかな表情のお顔に、指先の微妙な表現が女性的な、優しい千手観音様でした(^_^)

ちなみに国宝指定名称は、「乾漆千手観音坐像(本堂安置)」です。