京都国立博物館「文化財修理の最先端」 | 死ぬまでにすべての国宝を肉眼で見る

死ぬまでにすべての国宝を肉眼で見る

2023年12月現在の国宝の総数1,137件。そのうち、美術工芸品906件。これをすべて肉眼で見ようという計画です。関西中心の情報をお届けします。

京都国立博物館では、現在、特別企画「文化財修理の最先端」が1/31まで
開催中。
「文化財の修理」にフォーカスした展示になっていて面白かったですよ~(^o^)

展示されている国宝は、

・国宝 病草紙より
二形
眼病治療
霍乱
・国宝 蓮池水禽図 俵屋宗達筆
・国宝 三十帖冊子より
第一帖
第二十帖
第八帖(12/19~1/11)
・国宝 金剛般若経開題残巻 空海筆
・国宝 五智如来坐像(安祥寺)
・国宝 十二天像より
風天
です。

では、さっそくレポートしましょう(^-^)/



・国宝 病草紙より
二形」
「眼病治療」
「霍乱」

京都国立博物館所有の国宝で、平安~鎌倉時代(12世紀)の作。3点並べての展示です。
もとは同一の絵巻で、断巻されたと考えられています。
今回の修理で、台貼り装から軸装(巻物形式)に改められています。元の姿に戻ったというわけですね(^_^)
これ、最近の修理のトレンドですねぇ。徳川美術館所有の国宝 源氏物語絵巻も、台貼り装から軸装に戻されています。技術革新が進むと昔に戻るって、何か不思議(^_^;)
では、1点ずつ見ていきましょう。

「二形(ふたなり)」
出典:ColBase
両性具有の男(女?)を二人の男達がからかっています。
当の男は、烏帽子をかぶったまま寝ています。枕元に笛と鼓があるので、職業は楽器の奏者なのでしょう。(占い師という設定らしい)
からかっている方の男が、着物の裾をめくって「おい、これ見てみろよ、ウヒャヒャヒャ」と、もう一方の男を手招きしています。
寝ている男は、下半身を露にされても起きませんね(^_^;)
しかもフル勃起\(^o^)/
女性器も朱で表されています。現代なら人権問題になりそうな案件です。
脱ぎ散らかした服が、画面下部に見えます。

眼病治療」
出典:ColBase
男が目の治療を受けているのですが、目にメスを突き立てられ、血が吹き出しています!どう見てもヤブ医者です(^_^;)
黒い角だらいに、血が溜まっているのが気持ち悪い(>_<)
不気味なのは、患者の男以外、全員笑顔なんです。角だらいを持っている女なんて、どう見ても笑ってます。笑い事じゃ無いんだけど……
この男、よっぽど嫌われてるのかねぇ?
唯一人、左上で襖の隙間から除いている女の子だけが、心配そうにしています。
当時の襖には、"引き手"が無いとこにも注目。代わりにタッセルのような"ふさ"が付いています。

霍乱(かくらん)」
出典:ColBase
下痢と嘔吐する女を描いています。
ゲロとうんこの同時発射です。こんな器用なことできません(^o^;)
白い犬は、発射された下痢うんこに興味津々。
女を介抱している、シワシワおっぱいのお婆さんが勇ましいですね~
お碗を持っている女は、薬を運んでいるのでしょうか?奥の部屋で、すりこぎしている女は、たぶん薬を作っているのでしょう。



・国宝 蓮池水禽図 俵屋宗達筆
出典:ColBase
京都国立博物館所有の国宝。江戸時代(17世紀)に、国宝 風神雷神図屏風でお馴染み、俵屋宗達によって描かれた水墨画です。
この作品、竹紙!に描かれているそうです(^o^)
その表面に何か液体が厚く塗り、紙を平滑にしてあるそう。宗達お得意の、垂らしこみのための下地処理と考えられています。
展示方法が良かったのか?照明が良かったのか?アーティゾン美術館よりも、キレイによく見えます。
アーティゾンでは、筆運びなど宗達のテクニックに着目されていましたが、京博では「対比」に着目した紹介がされていました。
↑まずは、蓮の花。左が「盛り」右が「老い」。
左の花は、今が盛りと咲き誇っているのに対し、右は花びらがすっかり落ちています。
↑蓮の葉。
左は「下向きの葉」、右は「上向きの葉」。
↑上の水鳥は「動」、下は「静」。
ひとつの場面の中に、複数の「対比」を描いてバランスよく完結させています。



・国宝 三十帖冊子より
第一帖
第二十帖
第八帖(12/19~1/11)

仁和寺所有の国宝です。平安時代(9世紀)の作。
空海が唐から持ち帰った経典です。
たくさんの経典を持ち帰りたかった空海は、経典を手帳サイズ(縦18×横23cmほど)に縮小して書写させました。
唐の写経生だけでは遅いとばかりに、空海自信が書写したものや、同僚で"三筆"の一人、橘逸勢(たちばなのはやなり)にも手伝わせています。(今回の展示は無し)

第一帖(通期)・第二十帖(通期)・第八帖(12/19~1/11)が展示されているのですが、どれが何帖かキャプションが無くてわからないんです(>_<)
私の目利きでは、
第一帖(通期)←修理後開いた状態で展示。修理前の表紙が取れかかっている状態の写真も展示。
第二十帖(通期)←閉じた状態で展示。修理中のカバーの表紙裂に剥落どめがされている写真とともに展示。
第八帖(12/19~1/11)←開いた状態で展示。細字経典。



・国宝 金剛般若経開題残巻 空海筆
↑巻首部分 出典:ColBase
京都国立博物館所有の国宝。平安時代(9世紀)の作。
空海の直筆です。「能断金剛般若経」というお経を、空海が密教的見地から解釈を加えた解説文です。"残巻"の名が示すとおり、本来は300行10mほどあったそうですが、現在は63行1mほどしか残っていませんf(^_^;
↑中央部分 出典:ColBase
修正や書き直しの跡が見られるので、"草稿"だということがわかります。
↑巻末部分。 出典:ColBase
連綿は用いず、草書で一文字一文字丁寧に書いています。




安祥寺所有の国宝で、京博の1階展示室にずーっと寄託されています。
こちらは、いつも見ているのでレポートは割愛します(^-^)/



・国宝 十二天像のうち 風天
出典:ColBase
京都国立博物館所有の国宝。平安時代 大治2年(1127年)の作。
↑袖の繧繝(うんげん)模様がキレイです。
色のトーンを段階的に変化させているの、わかりますか?
↑膝から脛にかけて一直線に欠損していますが、違和感なく修理されていますね。
過去の修理履歴が明らかになっていて、1432年と1692年に修理されたことがわかっているそうです。
この内、1692年(元禄5年)には修理した十二天像は保管しておいて、新たに作成した十二天像を使うことにしたようです。(今、東寺の後七日御修法で使われているのは、この元禄時代のもののはず)
その保管用の唐櫃(からびつ)も、展示されていました。


一度は見たことのある国宝たちでしたが、「文化財の修理」という切り口で見ると、印象を新たにしましたね(^o^)
そして、その修復技術に感服しました。


実は閉館時間が迫っていて、後半駆け足で見ることになっちゃったんですf(^_^;
1/13から国宝 三十帖冊子の第十四帖が展示替えで出るので、また見に行くかも?

1/31までの展示です(^_^)/~~