みなさん、こんばんは。
こころとからだを癒す
茂原（もばら）の医師
永野 修です。
「なるほど、そういったところから
インスピレーションを受けるのか」
僕は医師という仕事柄、たくさんの方
と接し、たくさんの方の人生で経験し
てきたことや学んできたことなどを教
えて頂くことがあります。
その中で、芸術家の患者さんがおりま
した。80代の男性で繊細な絵を描かれ
る画家の方でした。しかもその方が描
かれる絵は現在美術と言われる領域の
もので、一見したところ何が描かれて
いるのか分からないのです。果たして
上手いのか、下手なのか、あるいは、
そのような評価をするものではないの
か。そもそも芸術の評価ってなんなの
だろうか。そんなことも考えさせられ
てしまうものでした。
それなのでどのような心境でこのよう
な絵を描いているのか知りたいと思っ
ていたのです。
そして、定期的に訪問診療を続けてい
たところ、あるときこのようなことを
話してくれました。
「先生、僕はね、すらすらと絵を描け
るときと、まったく描けなくなるとき
があるんだよ。描けるときは、勝手に
手が動いてね、次々と作品ができあが
っていくんだよね。そこには、ああし
よう、こうしようといった思考はない
んだよね。不思議だよね。一体だれが
この作品を創っているのか分からなく
なってしまうこともあるくらい。
でもね、それがいつもできるわけでは
なくてね。まったく手が動かなくて、
うんうん唸りながら、苦労して描くと
きもあるの。どちらの作品が良いどう
かは別として、苦しみながら出来上が
った作品は、後から見るとそれがわか
っちゃう。何か作品に意図が入ってし
まっているのね。でもそれはそれで良
さがあるんだよね。」
なるほど、芸術家も苦しみながら創作
活動をしていることがあるんだな。
僕は、芸術家の方は、いつも何かの想
像力が働いていたり、インスピレーシ
ョンが湧いていたりして、それを絵画
や彫刻や書などの形で表現しているも
のだと思っていました。
「先生、それでも、どうしようもない
ときもあるんですよ。そんなときは、
こうしているんです。床の上をきれい
に片づけて、そこに1冊の絵図を広げ
るのです。例えばカラバッジョとかダ
・ビンチとか。その画家の作品を1つ
ずつ眺めていくんです。そうすると、
それらの作品をから伝わってくるもの
があるんですよね。圧倒的な何かに接
するとインスピレーションが湧いてく
るんですよね。」
そうなのか、圧倒的なものに接するこ
となのか。
「先生、もし興味がおありなら、カラ
バッジョの絵画集を1冊お貸しします
よ。自宅でじっくり眺めてみてくださ
い。」
後日、自宅でお借りした絵画集を眺め
てみました。確かに、そこにはどうや
ったらそんな描写ができるのか、想像
がつかないほどの強い熱意が込められ
た作品が次々と収められていました。
「圧倒される何かに触れる」
なるほど、その感覚が少しわかったよ
うな気がしました。そして、その圧倒
される感覚から自分の中に何かが伝わ
り、自分の衝動性が増してくるような
感覚になりました。もしかすると、こ
ういったことからインスピレーション
が湧いてくるのかもしれません。
そして、芸術家にとって過去の大家の
作品がそうであったように、僕にとっ
ての圧倒される何かを考えてみるのも
面白そうだなと思いました。
さて、あなたにとっての圧倒されるも
のって何ですか。
最後まで読んでいただきありがとう
ございました。
追記：圧倒される何かを考えたとき、
僕には大自然のようでした。それは、
富士登山で山頂から火口を眺めたとき
（広大な火口で、ここから何度も噴火
があったのだなと想像したときに胸に
迫ってくるものがありました）であっ
たり、海岸で寄せては返す大きな波の
躍動であったり、その波が崩れるとき
の大きな音であったり、もしかすると
それらは地球の鼓動を感じるときなの
かもしれませんね。そう考えると、僕
はこの地球という惑星からインスピレ
ーションを受けているのかもしれませ
んね。
あなたの明日が
素晴らしい一日になりますように。
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