節電対策が急務(スペイン)
7月24日(23:00)
何気なく日刊紙のページをめくっていたところ、国際欄でも政治欄でもない、同紙の生活欄に、あの眠そうな菅総理の写真が、「なでしこジャパン」の優勝を伝える記事よりも大きく掲載されていてびっくりしました。
「ノーネクタイで気候は救えない」という見出しの付いた記事ですが、読み進んでいかないと、正確な意味は掴めません。
日本が節電対策の一環として取り入れている、ノーネクタイ、いわゆるクールビズの効果について述べていますが、節電=電力の消費量を減らす、というより、もう一歩進めた二酸化炭素の排出量が減るという発想です。よって、クールビズでは気候、すなわち大気汚染は救えないという、いわば、風が吹いたら桶屋が儲かる式の話です。
もちろん、日本のように、クールビズにして冷房温度を上げれば、確実に節電効果は上がります。
スペインでも、工業省の試算によると、エアコンを26℃以下に下げず、暖房を21℃以上にしなければ、7%の節電が可能としています。
彼らは、スペインの官公庁には、そのお達しが出されているものの、どこもそれを守らないので、ネクタイを外す意味がない、と言いたいのです。
実際の例として、スペインの下院では25℃以下になっているので、代議士などは薄着で会議に出席すると、寒さで凍ってしまうくらいとだと言っています。こんな状態では、クールビズを唱えても何の効果もありません。
エネルギー全般を担当するセバスチャン工業大臣は、3年前から夏場はネクタイをはずしていますが、ボノ下院議長は常に反対を表明し、日本の議員は天皇陛下に謁見するときもノーネクタイなのかと、訳の分からないことまで言い出しています。
ネクタイ問題はともあれ、日本の節電対策はスペインも見習うべしとしています。
福島原発事故以前は、全電力供給の30%は原発に頼っていたが、事故後は20%にまで落ち込んでいるので、全国民に対して15%の節電対策を要求している。これは、単なるお願いのレベルではない、とし、クールビズは単なる打ち上げ花火だとしても、このような政策はスペインにとっても理想的である、と述べています。
もちろん、このノーネクタイ運動は今回の原発事故を受けての発想ではなく、2005年に、時の総理大臣小泉純一郎が提唱し、取り入れられたことも良く理解しています。
スペインは他のEU諸国に比べ、電力の浪費が著しく多く、以前から問題視され、様々な方策を打ち出していますが、先に書いたように、誰も遵守しないので垂れ流し状態になっています。
スペイン人は、日本人のように、節電といえば節電に走り、自粛といえば自粛に、右向けと言えば、みんなが右に向くという国民性とは全く違います。
東日本大震災のときにも、被災者の節度ある行動は、我々からすると当然ですが、スペインでも驚きと共に賞賛していました。
規則は人のためにある、と考える人が一般的です。このことは、公衆道徳一つとっても良く分かります。きっちりと罰則を伴う法令を施行が必要です。
さもなくば、電力が不足するので新たな原発を…という思考にも及びかねません。
先日、稼動期限の終わった原発の閉鎖は、労使間の問題も大きく、行方が心配されていましたが、政府の判断で決定するという裁判所の判決が下りました。
この含みのある判決を是とするか、非とするか、類推する余地が大きく、問題が残りそうな気がします。
ノルウェーの二重テロ事件
7月23日(23:00)
周知の通り、ノルウェーで大変な事件が起きました。
オスロ市内の官庁街、首相執務室のビルの前に仕掛けられた自動車爆弾で8人が死亡、その2時間後、市内から30kmほど離れた湖に浮かぶ小さな「ウトヤ島」で、警察官を装った男が銃を乱射、85名を殺戮しました。
昨今の、アルカイダやタリバンのテロ事件の続発で、世間は、多少のことでは驚かなくなっています。
ただ、毎年、ノーベル平和賞の授賞式が行われるという先入観はありますが、テロとは凡そ無関係と見える、北欧の静かな国で起きた今回の二重テロ事件には、世界中の人がど肝を抜かれたことでしょう。
ずいぶん前の話になりますが、私もマドリード大学の学生時代、長い夏休みや冬休みを利用して、デンマークのコペンハーゲンにアルバイトに行き、週末には、近隣のストックホルムやオスロにも観光に出かけました。
今回の殺戮現場になったウトヤ島にも行ったことがあります。ニュースで流れる現場の映像を見て、かすかな記憶が蘇ってきます。月並みなようですが、本当に平和を絵に描いたような所で、なかなか殺戮の現実と結びつきません。
確かに、ノルウェーはNATOの一員として、400名をアフガニスタンに派兵しており、アルカイダからも攻撃対象にはされていますが、今回のテロは、どうやらアルカイダの仕業ではなく、極右思想を持つノルウェー人の国粋主義者の犯行だとして、32歳の容疑者を逮捕しています。
ノルウェーは、余り知られていませんが、移民政策を積極的に推し進めており、イスラム系住民も多く受け入れています。
キリスト教の原理主義者とも言われる容疑者は、反イスラムに凝り固まっており、このような政府の政策に強く反対しての犯行というのが、現時点での一般的な見方ですが、首相執務室のあるビルと、政府労働党の青少年キャンプを狙ったのも、その現われだと思います。
それにしても、アルカイダやタリバンのお家芸である爆弾テロや自爆テロとは違い、その殺戮の方法が実に非情です。
警察官を装い、キャンプに参加している若者に対し「何も怖がることはない、こちらに集まれ…」と呼び込み、さらに「お前らは全員、死んでもらう」などと叫び、やおら銃を取り出し乱射したようです。
木によじ登って難を逃れようとした者や、湖に飛び込んだ若者を背後から狙い撃ちしたという目撃者の証言もあります。
悲痛な話ですが、湖に飛び込み、乱射からは辛くも逃れたものの、あえなく溺死した人も何人か居たようです。
ノルウェーの警察は、ネオナチ運動を展開する極右の連中のリストアップは出来ていたようですが、逮捕された容疑者は、その運動には参加しておらず、ノーマークだったそうです。
昨日まで普通に暮らしていたものが、突如、大殺戮の犯人に変貌するなんて、現代社会の歪を、まざまざと見せ付けられたような気がします。
日本国内でレアアース(希土類)発見
7月22日(23:00)
日本国内でレアアース採取に成功という、大変なニュースが飛び込んできました。まさにビッグニュースです。
太平洋の海底で1000億トンというレアアースの鉱床が発見されたことは、今月の初めにアップしました。この件については、世界のレアアースを殆ど独占する中国も、相当な焦りと危機感を持ったのか、「わが国を脅迫するためのでっちあげ」「非常に古い情報」などと訳の分からないことを言って反発しました。もちろん、でたらめでも何でもありません。欧米のマスコミも大々的に報道しています。
わが国も、尖閣諸島での漁船衝突事件を受け、ハイテク産業に欠かせない希土類の調達を、中国に依存する危険性がやっと分かり、代替材料の研究・開発を加速させたり、日本海の海底でも独自に調査を行っており、それなりの成果を上げています。
今回の朗報は、7月21日、秋田大学工学資源学部の柴山教授らの研究グループがもたらしました。
秋田県の玉川温泉の温泉水から、レアアースを採取することに成功したのです。
同温泉は、レモンやお酢よりも酸性が強く、ガンの治療にも効くといわれ、全国、津々浦々から、医者に見放されてしまった湯治客が殺到することでも知られています。
現時点では、年間採取できるのは520kg程度と、わが国の年間消費量3万トンからすると微々たる物であり、少量のため抽出コストが高く、商業ベースでの目処はついていませんが、世界に誇る日本の技術力は、必ずこの壁を乗り越えることが出来ます。
何よりも、今回の発見で一番重要なことは、レアアースが国内で採取できるという事実です。これだけでも十分すぎる意義があります。
玉川温泉水は、先に書いたように、強酸性という特別な水質ですが、ここだけ、と言う訳ではありません。日本は世界に冠たる温泉国です。採取できる温泉は、他にいくらでも存在するでしょう。
このニュースは、なでしこジャパンのように華やかではありませんが、国民に大きな希望を与えてくれました。
発見のニュースを知ってか知らずか、中国が日本向けレアアース再輸出に柔軟な対応を見せ始めています。
何だかんだといっても、輸出が減少すれば、困るのは中国ですから…。
余談ですが、金鉱脈のない日本ですが、「都市鉱山」ともいわれ、金の保有量に関しては世界屈指と算出されています。
それほど工業製品やアクセサリーとしてたくさん使っているということです。
レアアースも金と同じで、石油や石炭のような化石燃料ではありませんので、再生はいくらでも可能です。ただ、コストが高くなるので、中国から輸入するだけの話です。
代替のマテリアルの開発や独自の採取と相まって、枯渇する心配は全くありません。
中国に続く希土類の鉱床を持つベトナムも、優先的に日本に供給するという約束をしています。
中国―ベトナムは今、領土問題で激しく対立しています。敵の敵は友ということでしょうか。