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今回は、先週末各地で起きた雪崩事故の中の一つ、3月2日(土)に長野県小谷村周辺で起きた雪崩事故についての話題です。
事故の概要
この事故は、北アルプス・風吹岳南俣沢 標高1400m付近で起きたと報道された10人が絡む雪崩事故です。
また、10人の(バックカントリースキー)登山者が1つの雪崩の付近にいて、うち9人が雪崩に流され埋まり、そして奇跡的に一人も死者が出ず、無事全員が生還されたというものです。
もちろん登山関係・スキー関係のグループ・コミュニティに参加されている方は、既にこの顛末をご存知の方が多いと思います。
すみません。「すでに知ってるよ」という方は、スルーしていただければと思います。
*NHKニュースへのリンク
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240302/k10014377181000.html
*TBSニュース YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=yPWUnRfLaas
私がこの事件をご紹介する理由
もちろん、上記の「TBSニュース YouTube」のコメントにもありますが、「自分勝手にバックカントリースキーしてたのにのうのうと救助求めたの?」とか「なだれ注意報をガン無視して、何か困ると「助けろ」だもんなぁ。」や「なんだバックカントリースキーだったのか。」などと批判的な意見も数多く書き込まれています。
バックカントリースキーという言葉ができて、スキー場の指定コース外など滑走が禁止されている場所へ入り込み事故を起こす人たちがバックカントリースキーヤーとして多数報道されているので、悪い・ルールを守らないというイメージが強いのでしょう。
しかし、昔(明治・大正・昭和)から日本では冬山へ登る最も主力の手段はスキーですし、この方々は冬山へ登り降るためにスキーを履いていた、いわば古来から正当的な登山スタイルで行なっていたとも言えます。
そして、数年前であれば、報道でも彼らは単に登山者、そうでなくとも山スキーを行なっていた人たちと表現されていたでしょう。
また、彼らが行った場所はもちろん法律的に立ち入り禁止や滑走禁止の場所ではありません。が、確かに長野県ではなだれ注意報が発出されていたことも事実です。
従って、今回事故を起こした方々の装備や経験、体力等がどうだったか、それから行なったことが良かったのか悪かったのかといったことは、ここでは横に置いておいて、山で何が起きてどういう対処をしたら全員生還する事ができたのか、という点を知っても良いのではないかと思った訳です。
私があえてブログでこの事故をご紹介する理由は、以下の2点です。
このような奇跡的に幸運な雪崩事件は滅多にないので、この方々の幸運(だけではないですが)を祝したいという素直な気持ち。
事故に関わった方たちのうち3〜4人の方が正直に事後報告という形で生の状況を書かれてそれを読むことができること。
1つの雪崩事故について複数当事者の方の生の報告を読む事ができることは大変珍しいことなので、興味がある方は読まれてはどうか。
という思いです。
生々しい記録
その生々しい記録は以下リンク先にあります。
記録部分の下側「感想」欄に当事者メンバーの本音の書き込みがあります。
ご興味ある方は、ぜひ読んでみてください。
※もし見る事ができない場合、ご連絡をいただければと思います。
何が奇跡を呼んだのか
その奇跡の生還は、周辺に10人いた登山者の1人が木の陰で用を足すために隊列を離れたことで、1人だけ雪崩に巻き込まれなかったという偶然から。そしてその1人が雪に埋まった他のメンバーを素早く見つけ、必死で掘り起こし、元気なメンバーと共に全員の救出に全力を尽くした。全ての要因はこの点にあります。
もちろんそのメンバーが、しっかりビーコン・プローブ・スコップといった冬山の三種の神器を持っていたことが最も重要な要因ですが、それだけとは言い切れない一部始終を読むことができます。
登山用ビーコン
登山用プローブ
登山用スコップ
私自身の感想
私個人として興味深かったことは、掲載されている写真の1枚。(写真No.19)
雪崩の破断面(雪崩が始まった始点=他の雪と離れて滑り始めた箇所)の雪の厚みが意外に薄いことです。
これは、昔私が表層雪崩で足元の雪が崩れ60m滑落した時の破断面の厚みとほぼ同じように見えました。
つまり、比較的厚みの薄い部分の雪が他の雪から離れて滑り出し、それによって落下方向にある雪を巻き込んでさらに落下させる。そんな雪崩だったのではないでしょうか。
つまり、もしそうであれば、上部にある程度傾斜のきつい斜面があり、そして暖かい気温の時であればかなり多くの場所で発生する可能性があるように思えます。
こうした箇所をすべて回避するルートをとることは非常に難しいことかもしれませんが、やはり冬山では実際にそれを行なうこと、行なえること、それが事故に遭わないための必須事項なのだと再認識しました。
また、自分が20年以上前実際に遭遇した事故についても、そうした認識に立って再度反省と共に思い返す事ができました。
ありがとうございました。
山での事故はいつも複雑な思いがありますが、まずは皆さまの幸運を祝したいと思います。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
週の半ば、ネジを巻き直して頑張っていきましょう。