プーチン主導で進む金融・経済戦争と,苫米地英人「戦争論」の世界 | 大阪の弁護士 重次直樹のブログ

プーチン主導で進む金融・経済戦争と,苫米地英人「戦争論」の世界

2022.2.24から始まったロシアのウクライナ大規模侵攻,西側の極めて強烈な金融経済制裁,バイデン・ゼレンスキーらの戦争を煽る発言,子ブッシュ時代に似たネオコン支配,西側メディアの言論統制的な偏った報道,急激な資源高・円安など,先の見えない恐怖,何が起こっているのか分からない不安と恐怖を感じていた。悪い方向に向かっていることは分かるが,理由や先行きが見えなかった。

 

苫米地英人「戦争論」(日本人だけが知らない戦争論,2015.4初版)をヒントに,少し見えてきた気がする。

 

表向きの歴史と全く異なる真の歴史について,全く知らない人,知ろうとしない人は,ここから先は陰謀論にしか見えないので,読まない方が良い。だが,歴史の表裏を知る人には,興味深いストーリーになると思う。マイダン革命(2014.2)が米ネオコン主導の暴力クーデターであることが信じられない人(平和的民主革命に政府側が発砲したと思っている人)は,読まない方が良いが,ヌーランドの電話やオリバーストーンのフィルムなどで,革命の真相を知っている人には,以下の書籍はお勧めだし,このブログ記事を読む価値があると思う。清教徒革命・フランス革命・明治維新が(マイダン革命とも)同じ構造という内容は衝撃的だ。時間がない人は,赤字太字のみ読んでも良いだろう。

 

 

 

上記書籍は,1章の終盤で,以下を記している。

・アメリカのネオコン勢力は,日本と中国を戦わせ,両国を疲弊させて東アジアの利権を独り占めする戦略的シナリオを,随分前から描いている

・アメリカはアジアの緊張を高め,日本は中国の脅威を煽る反中ナショナリズムによってアメリカの計画に埋め込まれ,コントロールされる(フォーリン・アフェアーズ2010.11-11ジョゼフ・ナイ「アメリカンパワーの未来」)

・明らかに彼らは,日中を戦争に導こうとしている。それにより,米国が漁夫の利を得る。

尖閣に日米安保は適用されるが,米参戦には米議会の承認が必要であり,自動参戦にならない。(NATOとの違い)

・尖閣で日中交戦が始まっても,米軍は議会の承認が得られるまで(簡単には得られない),動けない。

中国への挑発をつづけ,日本自ら戦争の道を歩むのは,極めて愚か

・しかし,米国の上記シナリオに協力する日本国内勢力はたくさんいる。

・戦争で莫大な利益を得るのは,国際金融資本

・彼らの支配権にある国同士に戦争をさせることが,彼らのビジネスであり,利益の源泉

 

いきなり,米国誘導により,日本が中国と戦争させられる米シナリオの紹介から始まる。戦争の多くが出来レース・八百長の側面を持っていることを知らない人には,信じられない・信じたくない内容かもしれない。しかし,ユーラシアを相互に対立させ,紛争・戦争を拡大・長期化させて,相対的優位と利益を得ることは,英米の対外政策の基本中の基本であり,これまでずっと実践されてきたことである(WW1,WW2を含む)。そして,戦わされる側の内通者が利用されてきた。

 

第2章はマイダン革命の真相を知っている人には,恐ろしい内容だ。

 

(前提知識:マイダン革命の真相に関する動画)(真相は米ネオコン主導の暴力クーデターを民主革命と偽装したもの)

★マイダン革命を扱ったオリバーストーンの「ウインター・オン・ファイアー」はYou Tubeで日本語版までバンされてしまったが,別サイトで見ることが出来る。→ こちら(削除)

★ウクライナ・オン・ファイアー(日本語字幕) → こちら

★オデッサの悲劇(日本語字幕) → こちら(削除)

★ヌーランドと駐ウクライナ米国大使が革命後の政権メンバーを相談する電話 → こちら(日本語字幕) → こちら(全編英語)

 

外国資本の援助を受けたプロの傭兵集団が,革命に潜入して従来権力を暴力的に倒す手法(マイダン革命の手法)は,清教徒革命(1642,クロムウェル),フランス革命(1789~),明治維新(革命期間:1863~1867)に共通した方式だという。

 

ア 清教徒革命~名誉革命~イングランド銀行

・チャールズ1世の増税案を巡る議会との対立を契機に,1642年,内戦がぼっ発

・当初劣勢だった議会軍を攻勢に転じさせたのは,クロムウェルの鉄騎隊とニューモデル軍(身分差のない軍隊)

・これとは別に,当時ロンドンを荒らしていた得たいの知れない民兵(外国の傭兵)の別動隊(外国の資本家=オランダの銀行家(スペインから逃げ込んだユダヤ人が多い)が支援)

名誉革命でオランダのオレンジ公ウイリアムが英国王(1682)(現在も続くオランダ王家の血筋)

イングランド銀行設立(1694,通貨発行権の掌握)(王家20%,銀行家80%出資) 

  → 信用創造のレバレッジを活用した最初の中央銀行


イ フランス革命

・バスティーユ襲撃以前から,得たいの知れない労働者の暴動が頻発 → 外国傭兵(英革命の別動隊に近似)

・市民軍と義勇兵(身分差なし) → ニューモデル軍に近似

・ジャコバン派の資金提供者は英シェルバーン伯爵

・1800フランス中央銀行設立

 

ウ 明治維新

・1863長州藩が外国艦隊を砲撃,賠償金を幕府に負わせる(外国から借金) → 最初から仕組まれた砲撃と見るべき

・高杉晋作の奇兵隊(身分差なし)  → ニューモデル軍に近似

・得体のしれない脱藩浪人(外国資本に雇われた傭兵)の暗躍 → 英革命の別動隊に近似

・坂本龍馬の綱領八策(民主的政策案) → 幕府打倒の理論武装(英仏民主革命と同じ表の理論武装)

・奇兵隊に被差別民を登用(現状に満足していた農民は大人しい) → 部落解放のための倒幕運動

★いわゆる田布施システムについては,鹿島昇・鬼塚英昭の著書をご参照 → こちら 

   信憑性は分からないが鬼塚著書の詳細な書評 → こちら

・グラバー(商人),フルベッキ(宣教師)らの支援

・1882年日本銀行設立

 

エ ロシア革命

・理論武装はマルクス・エンゲルス  ★林千景氏:マルクスはロスチャイルド・コーエン一族の孫 → こちら

・スポンサーは西側大銀行家

 

3章以下は割愛するが,金融・権力・戦争・革命の関係を様々な角度から描写している。

 

今回のウクライナ問題に関係するのは,6章途中の182~183頁。

・節の表題「ウクライナ政変でロシアを挑発するアメリカ」

・最近の動き(初版2105.4)では,ロシア,中国,インド,ブラジル,南アが共同でBRICS開発銀行を設立,この新銀行で行われる決済は非ドル決済(ヨーロッパ大銀行家が支配するドルを使わない)

・面白いことに,BRICS開銀設立の動きが顕在化したちょうどそのタイミングで,ウクライナ政変

・ロシアの挑戦と見る向きもあるが,ロシアを挑発している本尊は米国

・政変は,米国とEU(NATOの間違い?それとも,革命前日のEU主導の和平合意やF●CK the EUも芝居の一環?)の念入りな下準備で起こされた

・プーチンはこれを百も承知だから,戦争の火種にならない筈がない

 

BRICS新開発銀行の動き

・2013.3 設立合意(南ア・ダーバンBRICSサミット)  (cf. 2013.10 AIIB提唱)

 ★2014.2 マイダン革命

・2014.7 設立(ブラジル・フォルタレザBRICSサミット) (cf. 2014.10 AIIB設立覚書調印,2015.4 AIIB設立メンバー57か国発表)

・2016.7 人民元建て債券による初の起債   (cf. 2016.1 AIIB開業)

・2021.9 新たに3か国の加盟報道(アラブ首長国連邦(UAE),バングラデッシュ,ウルグアイ)
 ★2022.2 ウクライナ侵攻

プーチンは,マイダン革命がネオコン主導の暴力クーデターであることを知っているのは勿論,BRICS新開発銀行が標的にされていることも知っているとすれば,今回の主戦場は,地政学的にはウクライナであるが,真の戦場は欧米主導のドル決済・IMF世銀・SWIFT体制への挑戦であり,ロシアの同盟国は,中国・インド・ブラジルで,アフリカ(南アほか)・中東(UAEほか)の参加も見込まれる布陣と言える。特に,インドはキープレイヤーであり,現在,双方からの外交攻勢を受けている。

 

・2022.4.1 ロシアのラブロフ外相が訪印  → こちら

・2022.3.31 英トラス外相が訪印 → こちら

・2022.3.25 中国王外相が訪印 → こちら

・2022.3.19 岸田総理が訪印 → こちら

インドは英国に徹底的に搾取された国であり,非同盟主義でロシア産兵器を使っている。中国との国境紛争はあるものの,BRICS新決済銀行にはバングラデッシュも新加盟しており,ウクライナ紛争の金融的背景がBRICS新開発銀行にあるのなら,最終的にはロシア・中国側につく可能性が高い。「自由で開かれたインド太平洋」というQUADの概念と,「非ドル決済の増進」という新開発銀行の方針は,表向き,両立する。

 

前記事(→こちら)で書いたとおり,ロシアの大規模侵攻(+北部での侵攻停滞)は,西側を挑発して米国主導の大規模制裁を行わせ,欧州に天然ガスのルーブル決済や停止の逆制裁を掛けると同時に,資源の非ドル決済を推進し,BRICS新開発銀行などが狙う米ドル体制への挑戦の駒を大きく進める,という点が狙いと考えれば,説明がつく。

 

そうであれば,金融面での大きな前進を確保してから,プーチンは停戦に応じる可能性が高い(それまでは応じない)。

 

ウクライナに注目すれば,

(ロシアの停戦条件)

・中立化(NATO非加盟)

・武装解除

・非ナチ化

・ロシア語使用

・ドネツクの独立

・クリミアの主権
 

プーチンの地政学的な狙いは以下だった。

・ウクライナのNATO加盟阻止

・非ナチ化,ロシア系住民保護

・クリミア・セバストポリ確保

 

そうすると,プーチンにキエフ占領やウクライナ占領の意図はなく,以下の展開が考えられる。

・ウクライナ侵攻はロシアの安全保障確保のため。非同盟・非ナチ化・ロシア系住民保護・クリミア確保は絶対条件。

・キエフは包囲のみ(西側の大規模制裁を誘発するための挑発,西側が乗せられた)→ロシアは苦戦も失敗もしていない

・本当にウクライナが軍事的優勢になれば(現状は西側のプロパガンダでも「善戦」程度),本気になって,キエフも遠慮なく壊滅する。

・南東部を切りはなすとしても,併合は一部で,傀儡樹立の方向(大幅な併合はしない)

・ゼレンスキーはコロモイスキー・ソロスの影響下 → 民心離反を待ちたい

・プーチン失脚の可能性は極めて低い(作戦は軍事でも金融経済でもプーチンの狙い通りに進んでいる)


西側の大規模制裁をプーチンが意図的に誘発したとしても,予想より制裁は大きかった可能性はある。しかし,バイデン失言(小規模侵攻なら大きな制裁を加えないことを示唆)を受けて,西側の大規模制裁を確実にすべく,大規模侵攻に踏み切り,西側想定以上の侵攻をしたのだから,西側の当初想定以上の制裁や,ヒステリックでパニック的な反応も,プーチンは予測していた可能性が高い

 

予測した上での意図的な全面侵攻なら,金融制裁にも勝算があることになる。むしろ,金融制裁への逆制裁を狙っていたのなら,相当な勝算があったことになる

 

現時点の情勢判断・予測としては,プーチンが金融経済面でも優勢に見える。中国・インド・ブラジル・アラブ・アフリカ等への根回しもしているだろう。

 

もっとも,米国・NATO・EUの地力は,ロシアを大幅に上回る。中国を加えても,上回る。インド・中東・アフリカまで加わると厳しいかもしれないが,なお,勝っている可能性も低くない。

 

予定外の紛争拡大に混乱する西側,特に米国が,今後,どのように反撃するのか,注目したい。現状は,勇ましいプロパガンダとは裏腹に,混乱と劣勢にあるように見える。もっとも,痛みが大きいのは,ウクライナや東欧,大陸欧州や日本であり,英米は負けても配下の軍需産業・資源産業が利益を得る(英国・ノルウェーも産油国)。

 

なお,理念・ドリーム・ナラティブ(物語)の部分については,「議会主義」「民主主義」「身分差別撤廃(平等)」「被差別部落の解放」「共産主義」「労働者の権利」といった理論的支柱や共感力の部分については,ロシアにあるのは,「ロシア系住民の保護」「非ナチ化」であり,さほど強くない。

 

他方,ゼレンスキー側は,国家独立・民族団結等のスローガンがあるが,内部にアゾフ等のネオナチを抱えており,ロシア系住民差別の実態は覆い難く,国民の生命・財産よりネオコン・国際金融の利益に奉仕する政策を取っており,こちらも弱い。

 

西側も,マイダン革命がネオコン主導の暴力クーデターである実態は,各国の指導者は知っているから,倫理的・道徳的な共感は得にくい(特大プロパガンダを行っても,騙されるのはB層のみである上,プロパガンダ自体が嫌悪と反感を呼びうる)。

 

全体的にみて,地力に勝るはずの西側が,劣勢に立っている。

 

もっとも,西側も一枚岩ではなく,反ネオコン・国民優先の立場に立てば,ネオコンの苦戦は歓迎すべき展開かもしれない。

 

以前の記事にも書いたが,欧州情勢は,ロシアを通じて,ダイレクトに東アジアに波及する。ウクライナ情勢の展開は遠い地の他人事ではない。日本人の生命・財産に直接影響する大事件が現在進行中と言える。

 

ウクライナ情勢は,革命や戦争に如何に外国勢力が介入しているか,お手本のような事例であり,勉強になる。