大阪の弁護士 重次直樹のブログ

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代表社員弁護士 重次直樹 (本部)重次法律事務所

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2019-03-21 10:30:37

東京家裁で米国人夫による女性刺殺・死亡事件

テーマ:離婚・男女関係

東京家裁の1階入り口付近で,米国籍の男性が日本人妻を刺して逃走,妻は死亡した。

 ☞ 「家裁で離婚調停中 妻を刺殺した米国人の夫逮捕」

 

近時,裁判所に入るために,セキュリティ・チェックが厳しくなっていたが,チェックゲートの手前での事件だったそうだ。

 

この事件では,いろいろと思うことがあった。

男女や親密な家族関係の危険性

このような事件は例外的であるが,男女や,夫婦・親子など親密な家族関係の愛情トラブルでは,職場のような機能的関係でのトラブルより,事件が発生しやすい

 

殺人の動機は,強盗,暴力団関係,通り魔,怨恨,激昂などが理由として挙げられるが,被害者・加害者の関係で,実際に一番多いのは,家族・親族である(5割近い)。近時は介護や養育疲れを理由とする事件も増えている。

 

平成28年の犯罪被害者白書によれば,平成26年の殺人被害者は934人,うち,451人(48.3%)が親族間である。このうち,妻の殺人被害者は92人(9.9%),夫は65人(7%)である。

(原データ:平成28年版「犯罪被害者白書」罪種別 被疑者と被害者との関係別 検挙件数(平成26年

 

「夫の横暴・暴力に晒される妻」という関係性は,弁護士で離婚を扱っていれば,よくある部類だが,殺人に限れば,統計を見る限り,妻が殺人加害者の割合も意外と多い。殺人一般では,女性加害者は4分の1程度だが,夫婦間殺人では,女性加害者は4割程度になる。

 

親族間では,被害者は,親子間(全体の24%,親族間の半分),配偶者間(全体の17%,親族間の35%)が多く,兄弟や他親族は少ない関係が密であるほど,殺人も起こりやすい傾向がみられる。「職場」の人間関係は,一緒にいる時間が長いが,機能的な関係性のためか,殺人の割合は,親族間の10分の1以下で,「面識なし」と比較しても,3分の1にも満たない(全体の4.2%)。

 

殺人被害者 934人(平成26年) 加害者との関係

・親族 451人(48.3%)

・知人友人 225人(24.1%)

・職場 39人(4.2%)

・面識なし 133人(14.2%)

 

【親族被害者の内訳】

・親 115人(12.3%)

・配偶者 157人(16.8%)  うち,妻92人(9.9%),夫65人(7%)

・子 110人(11.8%)  ※ 親子計 225人(24.1%)

・兄弟 39人(4.2%)

・他親族 30人(3.2%)

 

被害者の立場別グラフ     

 

母親(妻)による子の連れ去りを容認する司法慣行の問題点

子の連れ去りに関するハーグ条約,ゴーン事件での「人質司法」批判など,日本の司法慣行の特異性が指摘・批判されることが増えてきた。国際化・グローバル化の進展に伴い,今後も,このような指摘・批判は増えるだろう。安易に国際基準に合わせて,合理的な慣行まで変えるべきではないが,他方,特異慣行の問題点については,精査して改善すべきと思う。

 

日本社会は,海外より個人に我慢を強いる場合が多い。

 

「人質司法」で長期勾留され,社会生活を破壊される刑事被疑者・被告人の我慢は,海外から見れば,異様であり,限度を超えているだろう。私が最初に担当した刑事事件では,接見禁止(弁護士は除く。配偶者接見も不可)で独房に8か月勾留された被告人を,第1回公判までは,保釈することも妻に接見させることも出来なかった。一審無罪確定で,最終的に救うことが出来たものの,最高裁を含め,司法の壁は厚かった。8か月も勾留されれば,社会生活は破壊される。私はゴーン氏には同情的ではないが,多くの冤罪被疑者・被告人の扱いには,強い怒りを覚える。

 

他方,保釈を認められた被告人が重大事件を起こした事例もある。

 

妻(母)による子の連れ去り別居では,夫の保護や心情配慮は,充分とは言い難い。

 

妻(母)に子を連れ去られた夫には,ほとんど取るべき手段がなく,長期間,子に会えないことが,当たり前のようになっている。住所等を秘匿する「支援措置」については,虚偽申告をされた側に対抗手段がなく,手続き前に言い分を主張できる機会もなく,申告者性善が前提であり,制度上の欠陥を指摘されている。DV/ストーカーの被害者保護を優先するあまり,虚偽申告された側の人権が無視されている。

 

今回の事件は,一方で,加害者の精神状態についての指摘がある(責任能力を調査すると報道されている)が,他方で,「連れ去った者勝ち」と言われる別居・離婚に対する司法慣行への批判も出ている。

 

もともと,加害者である夫の精神状態が悪かったとしても,妻がいなくなり,子にも会えない状態が,もともと悪かった精神状態を,悪い方向に進めたことは,間違いないだろう。

 

このブログは2010年6月開始だが,4番目の記事が,子供と会えない父親の心情に関して述べた記事である。

☞子供と会えない親

 

(抜粋)

離婚して子供と会えない親は
会いたい気持ちが募ると
狂いそうになる

 

だから、子供を忘れてはいけないが
思い過ぎてもいけない

そのコントロールが難しいことを
離婚する父親に話すことがある。

(以上,抜粋)

 

このブログで,近時,一番アクセスの多い記事は,「0歳児,乳幼児の面会交流」の記事だが,

☞0歳児,乳幼児の面会交流

記事の真意は,0歳児・乳幼児の面会交流の実務的な難しさの指摘と,実際に面会交流を求める父親へのアドバイスである。

 

開始4番目の記事にもあるとおり,私自身が,子供と会えなくなった父親である。子供と会いたいのに会えなくて,精神状態が不安定になり悪化することは,体験者として実感を持って理解している。

 

他方,DV等の問題もあり,難しい。また,日本の男性の長時間労働からは,妻は別居する際,子を連れて行く以外に選択肢がない場合も多いと思われる。

 

人質司法では,①処罰の必要性や被害者保護と,②被疑者・被告人の人権のバランスにおいて,後者が不当に抑圧されている。

 

夫婦の別居に際しては,①母親による養育継続の必要性や,DV被害者保護と,②夫の人権のバランスにおいて,後者が不当に抑圧されている。

 

かといって,後者の保護を進めれば,その分,前者の要請が阻害される。

 

簡単ではないが,今のバランスが,公正・公平とは,少なくとも海外からは見られておらず,国内でも強い批判があり,批判には理由があると思われる。

 

面会交流でも同様の問題があり,以前,妻により子の連れ去り別居,面会交流拒否の後,夫が学校に出向いて子供を殺害する事件が起きた(父親も焼身自殺)。他方,妻が面会交流に応じたところ,夫が面会交流の機会に子供を殺害した事件も起きている

 

これらの問題が簡単でないことは,充分に認識が必要であるが,現在の司法慣行は,父親の心情や人権を軽視して,我慢を強いるものであり,問題意識を持つことは不可欠と思われる。男性の人権や保護を主張すること自体,恥ずかしいこと,という意識が,人権抑圧や我慢を強いる原因になっていないか,司法関係者は自ら問いかける必要があると思われる。

2019-02-19 22:19:34

最判平31.2.19:不貞不倫相手への離婚慰謝料請求を原則否定

テーマ:離婚・男女関係

不貞相手への「離婚」慰謝料を最高裁が原則否定

本日,不貞相手となる第三者への「離婚」慰謝料請求を原則否定する最高裁判決が出ました

200万円の請求を認めた原審,原々審判決を逆転させ,請求を認めませんでした。

 

1)一方配偶者は,不貞を行った他方配偶者に,「不貞」を理由に慰謝料を請求できる。

2)一方配偶者は,不貞を行った他方配偶者に,「離婚」を理由に慰謝料を請求できる。

3)一方配偶者は,他方配偶者と不貞を行った第三者に,「不貞」を理由に慰謝料を請求できる。

・・・3つは○(請求できる)

 

4)一方配偶者は,他方配偶者と不貞を行った第三者に,「離婚」を理由に慰謝料を請求することは,原則,出来ない  ★今回の最高裁判決★

・・・4)のみ原則×(請求できないのが原則)

例外:離婚させることを意図して不当に干渉

例外として,「当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるとき」は,第三者に対して,「離婚」慰謝料を請求できることになります。

 

この場合,不法行為(の損害賠償請求権)は3年の消滅時効にかかりますが,消滅時効期間の起算点が,不貞発覚の時ではなく,離婚の時点になり,例えば10年後に離婚した場合,「離婚」慰謝料を請求されるなど,極めて長期間,不安定な地位に置かれることになります。

 

 

コメント1(判決の影響)

法律関係を早期に安定させる効果があります。裁判所にとっては,審理負担の軽減になります。

 

他方,被害者保護に欠ける,不貞と因果関係のある損害の全額は離婚時点まで分からないから論理的でない,裁判所が楽できる結論を取る傾向が出た,などの批判が出るかもしれません。

 

問題の所在,前提となる法理論,判決全文などは,事務所サイトをご参照ください

→ 最高裁平成31年2月19日判決:不貞相手への離婚慰謝料を原則否定

 

コメント2(自身の受任案件との関係)

受任案件との関係では,かなり有利な感じです。

 

請求する側の事件では,第三者(不貞相手)が離婚させることを意図して不当な干渉をしており(離婚させようと積極的に働きかけており)離婚に至った場合,この最高裁判決によっても,第三者に,「離婚」慰謝料まで請求できる可能性が高いとみられ,依頼者に有利です。

 

請求される側の事件では,いずれも,第三者(不貞相手)に当たる委任者が離婚させることを意図した積極的に不当な干渉をしてきたとは言い難く,逆に,不貞前から,不貞をした配偶者が他方配偶者から離婚を主張されていた事情があり,こちらも,時効期間・賠償金額ともに,有利な感じです。・・・不貞発覚から3年で消滅時効になる点でも(期間面で,離婚まで不安定な地位におかれない),離婚・別居・破綻などの本来夫婦間の事柄についてまで慰謝料を請求されない可能性が高まる点からも(金額面で大きくならない),依頼者に有利です。

 

結局,筋の良い事案,共感できる事案を受任して,筋の悪い事案,悪い方の弁護を避けてきたことが,良い結果につながっている感じがします。

 

結び,その他

法律関係の早期安定を重視した内容と言え,多くの事例において,第三者は不安定な地位から比較的早期に(従来の多くの考え方=原審,原々審と比較して早期に)解放されることになりそうです。

 

・離婚による婚姻の解消は,本来,夫婦間で決められる問題

・不貞行為により婚姻関係が破綻して離婚に至っても,原則,第三者は不法行為責任を負わない

という判断からは,夫婦間の関係・責任・解決を重視した判決とも言えます。

 

もっとも,悪質な第三者には厳しい内容です。

 

すなわち,離婚させようと意図して,不当な働きかけをしてきた不貞相手(第三者)は,極めて長期間(※),不安定な地位に置かれうる内容であり,厳しい判決と言うことが出来そうです。

 

※不貞をした有責配偶者からの離婚請求を認める場合,①長期別居(目安10年),②未成熟子の不存在,③相手方配偶者が経済的・社会的・精神的に苛酷な状況に置かれない,の3要素で判断するのが確立した最高裁判例です。そこで,別居から①の10年+消滅時効期間3年=別居後13年程度を経てた後まで消滅時効が完成せず,不貞を行った第三者が「離婚」慰謝料を請求される危険性があります。

 

全文や詳細なコメントは,以下のページもご参照ください。

 

重次法律事務所  31.2.19新着情報  「不貞相手に対する離婚慰謝料請求を否定した最高裁平成31年2月19日判決」

 

☞ 全文はこちら

 

 

 

2019-02-12 15:01:53

夫の浮気の相談と,不貞慰謝料請求

テーマ:離婚・男女関係

不倫・不貞に関する弁護士への相談は多い。

 

私の事務所にも,少なからず,相談が来ています。東京では多数の訴訟が提起され,大阪その他でも追随する可能性があります。

 

弁護士にとっては,依頼者の経済的利益,すなわち,お金を取ること(=慰謝料請求)だけを考えれば,証拠さえあれば,さほど,難しい事件ではありません。

 

また,弁護士報酬を最優先に考えれば,夫婦関係や親子関係への悪影響など考慮せず,どんどん,慰謝料請求すれば,弁護士事務所の経営効率は良くなります。

 

しかし,難しいのは,お金以外への影響です。

 

慰謝料請求をきっかけとして,夫婦関係が悪化する場合もあり,職場内不倫では,夫が職場で地位を失う場合もあります。子供への影響も大きくなる可能性があり,いろいろ影響が波及することが,相当に多いのが実態です。

 

私が最初に依頼を受けた不貞・慰謝料請求の事案は,職場不倫の相手女性への慰謝料請求を,別の事務所の若手弁護士が行った結果,写真やメールなどによれば相手女性も積極的に不貞に応じてた様子なのに,夫がセクハラと職場で騒がれ,慰謝料どころでなくなった事案です。最初に依頼した若手弁護士を解任して,私に再委任となり,結局,少額(100万円未満,夫には求償しない前提での女性実負担)の慰謝料は取れ,夫も懲戒解雇は免れたものの,自主退職を強いられ,安定した地位と収入を失いました。不倫関係は終了しましたが,かなり高い対価となりました。

 

 ☞ 詳しくは こちら

 

職場に影響がなくても,夫婦関係が一挙に悪化する場合も少なくありません。また,妻から女性への慰謝料請求の場合,結局は,諸費用(弁護士費用,賠償費用)の相当な部分を夫が負担するケースが多く(そうでなければ,結果的に,美人局(つつもたせ)と同じ経済効果を生じ,落着きの悪い結論になります),妻からみれば,夫だけに請求するより,弁護士費用が二重にかかり,結局は自身の財布(=夫の財布)を痛めたり,子供や夫婦関係に悪影響を及ぼすケースも少なくありません。

 

                           ☞ 詳しくは こちら

 

かといって,何もしないでいると,どんどん,不貞関係が深化して,子供が生まれたり,新しいマンションを買う・借りるなど,手遅れになる危険性もあります。

 

最近でも,浮気の証拠をつかんだ妻からの相談について,夫婦関係や子供への影響を最小限にしつつ,不貞関係の進展を阻止する方策について,頭を悩ませています。

 

これが,結構,難しいのです。

 

別れさせるためにも,感情面からも,金銭的にも,不貞相手の女性に慰謝料請求したいのですが,これを強く行うほど,夫婦関係や子供への影響も,比例して,大きく,また,避けがたくなりがちです。

 

結局,どこかのタイミングにおいて,慰謝料請求をするかもしれません。

 

けれど,弁護士の報酬獲得を最優先にして,夫婦関係や子供への影響を考えず,さっさと慰謝料請求をする弁護士にだけは,なりたくない,と思っています。

 

不貞問題は,共同不法行為と求償権の問題が生じ,金額が小さい割に,処理は簡単ではありません。会社や家族に知られたくないために,弁護士に委任するケースも少なくありません。

 

しかし,依頼する弁護士の選択を誤ると,自らの首を絞める結果になりかねず,金銭面以外への目配りが重要・不可欠な事件です。

 

 

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