マクロス外伝蒼い髪のメルトラン

 

だいふくさんに描いてもらった漫画です。

現在進行中の脚本小説でも加筆した上で小説を描き正規漫画版でリメイク予定です。

 

 

【西暦2009年2月7日】

 

今から12年前、南アタリア島から雨中に向けて一つの閃光が走った。

その閃光は人類史上最悪の結果を招いた第1次星間大戦の始まりだった。

 

地球統合軍所属ブルーノ・J・グローバル率いるSDFー1マクロスとゼントラーディ軍所属ブリタイ・クリダニク率いる第67分岐艦隊のその周囲で行われ、地球統合政府並びに地球統合軍は終盤まで一切関与する事が無かった。

 

おまけに開戦を隠蔽し「南アタリア島は反統合勢力のゲリラ活動により全滅」と偽の報道を出してゼントラーディ軍との戦闘を国民に知らせなかった。

 

戦争は1年1か月も続き地球人類はゼントラーディ軍の本当の存在を知った時は時既に遅く人類の9割と今まで培った歴史的文明を喪失した。 

 

ボドル基幹艦隊決戦は地球統合軍とブリタイ・ラプラミズら造反ゼントラーディ軍の連合軍がリン・ミンメイや全軍将兵の奮戦の末多大な犠牲を払いながらも奇跡的に勝利する事が出来た。

 

しかし

 

1か月間も続いた地上戦もまた酷かった。

 

「くそ巨人共め!」

 

「宇宙に叩き出してやる!」

 

ボドル基幹艦隊がフルブス・バレンス42101とボドルザー司令官を失い他基幹艦隊へ撤退する中、落伍した艦隊の一部が地球各地に降下した。

奇跡的に艦砲射撃を生き残った各地地球統合軍残存部隊はゼントラーディ軍落伍部隊と交戦を開始、希望の見えない地獄のような悲しい戦闘を強いられる事になった。

 

2010年3月末

 

地球統合政府暫定政権とゼントラーディ残留軍はようやく戦闘停止し終戦協定を結んだ。

 

「新統合軍・・・・・地球統合軍のままではなく・・・新組織か・・・・」

 

「はっゼントラーディ軍残留部隊と接収に伴い新国家設立と・・・・」

 

「そうか・・・・我々、月面軍もいろいろと考えねばならぬな。」

 

地球統合政府暫定政権は残留ゼントラーディ軍勢力を吸収した事に伴い新統合政府を設立し、これに伴い国軍たる地球統合軍を新統合軍と改変した。

新統合軍は失われた戦力を再建すべく宇宙軍中心に軍備増強を図り、同時に人類播種計画すなわち宇宙移民計画を進め地球文化存続のため銀河各地に人類居住圏拡大を目論んだ。

 

そして10年経った現代・・・・・

 

【西暦2021年2月7日】

【月面クラビウス基地・クレーター表面部湾口施設】

 

新統合政府国防総省による会見中継が街頭映像で映る中、30代の黒人の佐官が歩いていた。

映像を見ながら国防総省の役員の演説を見てまるで怒りを露わにした表情を浮かべた。

 

「シンの事だけじゃなく・・・・あの戦争の開戦を隠蔽した癖に毎年良く言うな・・」

 

怒りを浮かべるのはエドガー・ラサール、かつて統合戦争にレーダー迎撃士官として参加した地球統合軍の軍人であり、今は新統合軍少佐として活躍している。

13年前のオペレーションイコノクラスムに参加後、地球統合軍により監禁された。

 

しばらくの監禁の後、エドガー含む関連者にオペレーションイコノクラスムを含むマヤン島関連の事を口外しない箝口令に言い渡され、飲む事を条件に解禁を解除された。

 

監禁解除後.空母アスカⅡに乗ってた乗員はマクロスや月面基地に転属されると、エドガーは進んでクラビウス基地の航空要員になった。

 

理由はただ鳥の人と消えた相棒工藤シンを探すために・・・・

 

だが、毎年.第1次星間大戦のイベントを見る度に腹が立つ。

マヤンの時も同じく地球統合軍は南アタリア島の出来事を隠蔽し関係者を死んだ事にし、大戦が終われば掌を返し関係者を英雄として褒め讃える。

 

もう少し統合軍が対応が良ければ大戦の死者も・・・マヤン島で行方不明になった相棒シンも死んだアリエス・ターナーもマシな結果になれたものを・・・

 

腹が立ちながら歩いていると後ろから声がかかった。

 

「ラサールさん!貴方、ラサールさんですか?」

 

「ん?・・・もしかしてノーム、マオ・ノームですか・・・久しぶりだな。」

 

「マヤン以来ね、大戦もあってか生きているなんて思ってませんでした。」

 

地球人でありながら紫髪を持った褐色肌の元気よさそうな女性だった。

後ろには緑色のショートカットの女性がおり、友人か仕事の同僚と思った。

 

褐色肌の若い女性をエドガーは知っていた。

彼女の名はマオ・ノーム、マヤン島の風の導き手であったサラ・ノームの妹だ。

第1次星間大戦で生死不明であったが、数年前からDrマオと言う名で表舞台に再登場しプロトカルチャー研究の第一人者として活躍していた。

 

「そちらの女性は?」

 

「彼女?ランメル・F・ワン、私の助手よ。」

 

「ランメル・F・ワンです・・・よ・・よろしくお願いします。」

 

「あぁよろしく(ゼントラーディ人・・・・?)」

 

緑色のショートヘアのゼントラーディ人・・ランメル・F・ワン・・マオの助手だ。

 

ゼントラーディ人は軍人しかいなかった軍人組織の種族だと聞いていたが、ランメルのように軍人とは無縁どころか真逆の研究者になるとは・・・・

その点にあんまり無関心なエドガーとは言え驚きを隠せなかった。

 

もっともマオの助手ランメルはゼントラーディ軍ラプラミズ直衛艦隊の遊撃隊の元隊員で艦隊内ではエリートに属する優秀な兵士であった。

大戦後、地球人とゼントラーディ人の関係性に興味を持ち新統合軍に入隊せずマイクローン化し学業に力を入れ研究者の道を歩みマオ・ノームの助手になった。

 

数年前に結婚し元の苗字フォルカをミドルネームにして2人の子宝に恵まれている。

 

「ところでカバン持って何処へ向かうのです?」

 

「あぁこれから機種転換センターで講演です。古巣の滝田と共に・・・」

 

「へぇ講演ねぇ・・・・シンが聞いたら驚くわよ。」

 

「へへ・・・そうですかね・・・」

 

マオはエドガーが一昔前の将校用カバンを持っているのを目にして何処に行くのかを聞くと機種転換センターでかつての同僚.滝田英史と共に講演すると答えた。

茂人がゼントラーディ人候補生達にかつての空戦やVFー0フェニックスに関するエピソードを教えたいと思っており旧知の英史とエドガーを招集し講演させようと考えた。

 

2人は快く了承し、開戦記念日に講演する事が決まった。

 

「また何処かでね。」

 

「そちらこそ、お身体を大切に!」

 

エドガーとマオ一行は別れた。

分かれた時の彼ら彼女らの姿は和やかであった。

 

マオ一行を見送ったエドガーは何処か影の落とした表情を浮かべ機種転換センターに向けて歩いた。

 

【西暦2021年2月7日】

【機種転換センター.射撃場】

 

 

ラウラは朝早くから射撃場で自主的に射撃訓練に励んでいた。

昨日の一件もあってか心身を鍛える為武道や護身術を磨こうとラウラは思った。

 

長らくクァドラン・ローに乗って戦ってきたラウラにとって生身で武器を使うのはあんまり得意ではなく、何度か出てくる的を外したりしていい結果は出なかった。

 

「生身で戦うのがこれほど大変なのか・・・・」

 

「そんな事言ってたら夕食前にやるCQC(近接格闘術)では私に勝てないわよ。」

 

「なんか言われると悔しさしかないな・・・・・」

 

中々上手くいかず弱音を吐くラウラに対しカゴメは挑発するかのような激励した。

負けず嫌いな性格であるラウラにとってこの挑発は有効であり、何度も繰り返すうちに技能は上がっており弱音を吐く度にカゴメは挑発し喝を入れていた。

 

「やった・・・・命中した・・・・・カゴメやったよ。」

 

「喜ぶのは早い、命中しても敵の反撃能力削いだわけじゃないからね。心臓を狙う。」

 

「手厳しいな・・・・カゴメは・・・喜んでもいいのに。」

 

「今の結果は私の為ではありません、自分の為です。」

 

「うっ・・・・厳しい・・・・分かりました・・・よっ・・・」

 

命中しても実戦では役に立たない・・・・命中率を上げなければ意味がない。

 

命中率だけじゃない判断力なども鍛えなきゃいけない。

その点ではまだまだ生身での戦闘力ではまだまだラウラは後方要員のカゴメに劣る。

射撃のスキルを磨いたら次はCQCのスキルを磨き心身と生身の戦闘力を鍛える。

 

それがカゴメから課せられた試練だ。

 

「そう言えば今日自主練可ってなんだろうね?今日はVF訓練やるはずでしょ。」

 

「それがね明後日に延期なのよ、なんでも講演する為に変更したと桐原少佐が・・」

 

「講演・・・要は話をするんでしょ?誰が何を話すんだ?」

 

「私は聞いてないなぁ。」

 

ラウラ達は本来座学だったり、VFの操縦訓練を学ぶ時間帯だが自主練をしている。

教室に入ると黒板に所定の時間まで自主練するようにと書いてあった。

途法に暮れるラウラだったがカゴメの誘いもあってエレベーターを使いクラビウス基地地上エリアの射撃場などがある施設で射撃のスキルを磨いていた。

 

ミュレは別の候補生と共にCQCの訓練をしている為不在である。

 

「ほう・・・・射撃訓練か・・・・精が出るな。」

 

「えっ誰?わっ・・・・大尉殿!?」

 

「驚かせてすまんね。一部訓練生がここにいると。」

 

ラウラ達が会話している最中後ろから話しかけられた。

話しかけられた先にいたのは30代前半の士官で、ラウラやカゴメより上の大尉だ。

 

慌ててラウラとカゴメは敬礼すると大尉は気さくな笑顔を浮かべた。

 

「俺の名は滝田英史大尉、今回講演の為に呼ばれたおっさんだな。」

 

「そのおっさんが私達に何の用なんです?」

 

「かつての敵ゼントラーディ軍のウェーブ(女性士官)のVF候補生のか拝みたくてね。」

 

「はぁ?」

 

大尉の名は滝田英史・・・・講演の為に呼ばれた自称おっさんの士官だ。

訪ねてきた理由はかつての敵の女性士官のVF候補生を拝みたいと・・・

 

そう言われたラウラは表情をムッとしてはぁと言った。

 

滝田英史・・・・

SDFー1マクロス.航空隊スカル大隊の一つであるプランジャーズ中隊を率いていた地球統合軍のエースパイロットであり、大戦時であればラウラと敵として戦っていた男だ。

ゼントラーディ軍強襲攻撃作戦ブルズアイ作戦では特別強襲任務部隊ハードダーツ隊を率いて過酷な任務をやり遂げたという伝説的な実績を誇る凄腕だ。

 

軍籍は古く16歳の頃から統合戦争に参加しVFー0フェニックスに搭乗し戦っていた。

 

ギャンブル好きであり、凄腕のギャブラーでポーカーやブリッジやカジノでほぼ負けなしであり戦場でもその能力を遺憾無く発揮し厳しい勝率の任務でも難なく勝利しており戦場のギャンブラーと呼ばれるマクロス艦内上位のエース兼名指揮官だった。

 

ラウラからすればそんな風には見えなかった。

 

「大尉殿、他のゼントラン(男共)の候補生がいるのでは?何故、私達女性兵対象で?」

 

「それはだ・・・・な。」

 

「私も思ったナンパ目的だと。」

 

女性候補生目当てのナンパ目的のスケベなセクハラ男だと・・・

 

ここの射撃場にはゼントランの候補生もおり、両方とも見ればいい。

それなのに女性候補生限定にするあたり下心満載にしか見えない。

 

ラウラ達はそう受け止めて口にした途端、英史は慌てた。

 

「それは違うってメルトランは空戦兵として高い耐G能力あるから強いVF適正あるから興味を持ったまであってナンパと言うスケベな理由じゃないだって。」

 

「本当なんですか?本当に?」

 

「本当だってば・・・・・」

 

「まぁ確かに私達メルトランは耐G能力は優れてますけど・・・さ、先程のは誤解しても当然ですわな。」

 

スケベな理由あってラウラ達を訪ねてきたわけではない。

メルトラン特有の耐G能力があるが故に興味を持ったからであると・・・

 

ラウラは疑いの目を向けながら英史の顔を見た・・・嘘偽りもない。

 

嘘偽りもない顔を見たラウラは一応信じたけれども完全に信じきれてない。

何というか自分自身の胸を見られているようであり、後ろ振り向けば尻を見ている。

これで信じろと言われても完全に馬鹿を見るだけである。

 

そうしたやり取りの中、クラビウス基地防衛隊のVFー5000の1個小隊が上を通り過ぎた。

 

「俺は講演の準備があるからそれじゃ!」

 

「・・・・・カゴメ、本当にあの人エースなの?」

 

「ナンパな人だけれども大戦時は優れたエースパイロットだったのよ。」

 

1個小隊のVFー5000が通り過ぎてから5分後、英史は講演の準備があると言って去った。

 

ラウラは英史が本当に第1次星間大戦よエースなのかカゴメに聞く程頼りない印象を抱いた。

肯定の返答を得てもまだ信用出来ない・・・だって戦士の顔をしていないから・・・

 

とは言え星間大戦のエースであれば、もし戦場で出会っていたら敵の兵士だ。

激しい戦闘を繰り広げ自身は殺し自身を殺してくる相手である。

そんな相手がナンパで戦士の顔してない男である事実にラウラは認めたくなかった。

 

【西暦2021年2月7日午後13時】

【機種転換センター.講堂】

 

 

 

機種転換センターの講堂では英史とエドガーが前に立っていた。

黒板には地球語で「Union War and Fighter Technology(統合戦争と戦闘機技術)」と書かれており、神妙な顔つきの茂人と新統合軍参謀本部の矢吹一郎大佐が立っていた。

 

ラウラは統合戦争についてはある程度知っていたが経験者から話を聞くのは初めてだった。

先程のナンパな第1印象だった英史が真面目な顔して講演している姿見て笑いそうになったが、ラウラは堪えて真剣にメモを取りながら聞いた。

 

「星間大戦前に起きた統合戦争における戦闘機戦は今のようにバトロイド・ガウォークの形態は存在せずファイターのみで戦っていた。」

 

英史の講義で言うバトロイドとガウォークの存在しない旧世代戦闘機・・・・・

特に第4・5世代〜第5世代のジェット戦闘機による空戦にラウラは強い関心を持った。

 

統合戦争初期は旧来兵器によるいつもの戦争であった。

地上はM1エイブラムスなどの地上兵器が戦場を駆け、海はニミッツ級やアーレイバーク級などが・・・空はFー14やMIGー29フルクラムが激しい戦闘を繰り広げていた。

マクロス由来のOTMによる改修機や新型機が出ても戦闘は旧来そのままだった。

 

中東の方では湾岸戦争の再現とも言わんばかりに旧米国製の航空機群が反統合同盟に与したイラク・イランやシリアなど航空部隊を蹂躙し暴れ回った。

 

事態が変わったのは統合戦争末期の頃だ・・・・

 

「統合戦争末期、反統合同盟が極秘に開発してた可変戦闘機を初めて実戦投入した。」

 

統合戦争末期インド洋にてニミッツ級航空母艦イラストリアを旗艦とするインド洋航空機動艦隊と反統合同盟による戦闘の最中、突如可変戦闘機Svー51による編隊が戦闘に乱入した。

 

優勢に戦闘を進めていたインド洋航空機動艦隊だったがSvー51の乱入によりイラストリア大破・アーレイバーク級1隻大破2隻撃沈、Fー14艦載機群壊滅と言う損害を被った。

 

「RIOとして戦闘に参加し可変戦闘機の実力を目の当たりにした身として言わせてもらうが、今までの戦闘機に比べて比べ物にならない程進歩していた。」

 

英史が喋り終える頃にエドガーが口を開いた。

13年前・・・実際に戦闘で見てきて感じた事を・・・・・

 

あの日に乱入したSvー51はフルクラム等の戦闘機と違った。

圧倒的機動力でFー14戦闘機を次々と撃墜し自身も搭乗するコールサイン・パープルワンも撃墜され、自身は友軍艦艇に救助されるまでインド洋に漂流していた。

 

エドガーは途中意識を失いその後どうなったかは覚えていない。

気がついた時は友軍艦艇に救助され、新たな配属先で相棒から事の顛末を聞いた。

ただの戦闘機ではなくロボットに変形する新たな戦闘機だと・・・

 

「新たな配属先になった空母アスカⅡで統合軍が開発した・・・君達が乗っている全てのVFの御先祖VFー0フェニックスに搭乗したんだ。」

 

空母アスカⅡに転属後相棒と共にVFー0フェニックスに乗り込んだ。

 

訓練機であるVFー0Dに乗り込み機種転換訓練で統合戦争のエースで上官となったロイ・フォッカーと模擬戦を行った他、以前自身を撃墜したSvー51と再戦した。

 

「搭乗してみてFー14やF/Aー18とは違ったな、バトロイドも驚いたが一番驚いたのはガウォークさ。」

 

「ガウォークか・・・・」

 

「脚部であるエンジンを上手く駆使すれば一瞬で敵の背後を取るなんて戦術が容易に出来るからな。いろいろ見てきたけどすげぇ技術だなと当時の俺は思ったね。」

 

何度もSvー51を駆使する反統合同盟軍との戦闘を経てエドガーは可変戦闘機と言う新たな兵器のジャンルの強さを身を持って実感した。

可変戦闘機の中でも一番驚いたと言ったのは中環形態であるガウォークだ。

 

VFーXー1の試験中の事故で発見され戦闘継続性やパイロットの生残性を高めると言った有効性が認められ制式採用された形態であり、先行量産型VFー0における実戦運用で各パイロットが戦術を生み出した。

 

「シン・・・工藤シン大尉が俺と一緒に搭乗した時、反統合同盟のエースであるノーラ・ポリャンスキーと交戦した時ガウォーク戦を展開をしたが凄まじかった。激しい戦闘の末、撃墜され俺も工藤大尉も死にかけたな。」

 

「へぇ・・・・・(ノーラ・ポリャンスキーか・・・後でどんな人物か調べよう。)」

 

「それはさておき往来の戦闘機にはない戦術の登場により可変戦闘機の優位性が確立され、VFー1の実戦部隊の教本になった。先の大戦でマクロス航空隊のエース達により、発展型戦術が生み出され可変戦闘機が戦後の主力機の座を取る事が出来た。」

 

空母アスカⅡを中心とする地球統合軍と強襲潜水艦アウエルシュテットを中心とする反統合同盟軍の戦闘、各局地戦における可変戦闘機戦で各パイロットが戦術を確立させ可変戦闘機部隊の教本となり第1星間大戦で数多くのエースが発展型や独自の戦術を生み出した。

 

VFー0は先行量産型として歴史的な意義を果たし、今の可変戦闘機戦術に繋げている。

 

「開発に携わった多くの技術者や実戦に参加し戦術を生み出したVFパイロット、両方とも無くば第1星間大戦は悲惨な結果になったであろう。」

 

「ラサール少佐の言う通りだ。俺達パイロットが上手く戦えるのは技術者のおかげであり、技術者の成果を証明するのは俺達なんだ。」

 

高度な結果を出すのは可変戦闘機を生み出す技術者と成果を発揮するパイロット。

どちらかが欠けたら真価の発揮出来ず最悪な評価が出る紙一重兼一蓮托生の関係性だ。

 

技術者と戦線のパイロット達の経験と発想によりより優れた機体が生まれてゆく・・

 

「君達に考えてもらいたい事だが、現場では次々と新型機や別機種に搭乗する機会がよくある・・・機体に応じて戦術を構築しなければならない。常に臨機応変に反応してくれ。」

 

新統合軍VF部隊は新型機の配備だったり別部隊に転属し別機種に搭乗する機会がよくある。

機体によって特性が違うので今までの戦術が完全に通用しない場合がよくある。

 

ラウラら候補生が現場に出た時、臨機応変に対応できる柔軟な発想力も必要だ。

 

特にゼントラーディ人はリガードやクァドラン・ローなど製造され現場に配属され殆ど乗る機体が変わらない為、戦術には一貫性はあるものの臨機応変に対応できる程の発想力には欠ける。

可変戦闘機パイロットになるには機種ごとの戦術を構築する柔軟な発想力が必要だ。

 

「結構、難しそうじゃない?そう思わないラウラ?」

 

「ミュレ・・・難しそうとか云々じゃなくて何の為にいるんだ?」

 

「そりゃ勿論・・・・」

 

「そう言う事だ・・・・腹は括るのだな。特にお前は私より実力はまだまだだからな。」

 

「そりゃそうだけどさ、可変戦闘機乗りになったら負けない。」

 

ミュレ含むゼントラーディ人達は不安に駆られた。

何故ならゼントラーディ人は複雑な事が得意ではないからだ。

可変戦闘機パイロットに求められる要素が難しいと感じた。

 

ラウラは腹を括っていた。

 

自分から進んで選んだ道だ・・・・複雑でもやり遂げる。

内心は不安な所もあったが、ゼントラーディ人でも出来る!地球人に証明したい。

以前と打って変わって地球人として生きる為に積極的に努力している。

 

話を聞いていたミュレも負けんとばかりに意気込んだ。

今までラウラと上官と部下の関係であり、海兵隊になった後もゼントラーディ軍時代からの人間関係は変わらずずっと後ろについて行くだけだった。

だけど今は違う、努力次第ではラウラより階級が上になり立場を逆転出来る可能性がある。

ゼントラーディ軍では不可能だった野心がミュレを奮い立たせた。

 

「質問でおります!」

 

「何だ?」

 

「我々、ゼントラーディ人にもできるのでしょうか?」

 

一人のゼントラーディ人の候補生が手を挙げた。

 

候補生は恐る恐る自分達ゼントラーディ人にも出来るのかとエドガー達に聞いた。

ミュレと同様、複雑な戦術を必要とする可変戦闘機スキルを得られるか不安に駆られた。

彼だけではない今だに不安から脱せず後悔している候補生も少なくはない。

 

他機種からの機種転換した地球人候補生や新人候補生も同じような考えを持つ者もいる。

 

上手くやっていけるか不安・・・・この先に立ち向かうのが怖い・・・

質問をした候補生の顔は戦場で死の恐怖に耐えながら不安になり震える新兵のようだった。

 

「お前は臆病風に吹かれたのか?」

 

茂人とカゴメの隣にいる紫色の肌をしたカムジン・クラヴシェラと瓜二つのゼントラーディ人が腕を組みながら候補生を鋭い視線で睨見つけていた。

 

教官の一人であり、ゼントラーディ軍第67分岐艦隊出身のルルドルド・ポルター中尉だ。

人間換算16歳で南アタリア島襲撃に参加した第67分岐艦隊のエースであり、リガード乗りではあるものの茂人や英史らマクロス航空隊を苦しめた経歴を持つ若き歴戦の勇士であった。

 

今はアルセス・アルセス中隊レインディア小隊を率いる可変戦闘機乗りである。

趣味人であり、日本文化をこよなく愛する自称ワビサビの分かるゼントランだ。

 

 

 

「俺達、ゼントラーディ人はどんな相手だろうと死を恐れずに戦ってきた。可変戦闘機が複雑だからと言って挑戦せず立ち止まるのか?」

 

「しかし、我々とは操縦系統が違います。それに地球人の暮らしにも・・・」

 

「では何故貴様はここに来た?可変戦闘機パイロットになる為ではないのか?」

 

「そうでありますが・・・」

 

ルルドルドは質問してきた候補生に圧力をかけるように問い詰めた。

死を恐れずに今まで戦ってきたのに可変戦闘機に必要なスキルが複雑で自分でも出来るか不安で挑戦から惨めに敵前逃亡でもするのかと・・・

 

候補生は反論するが、ルルドルドはバッサリ切り捨てた。

 

切り捨てたルルドルドはエドガーと英史がいる登壇し言った。

 

「いいか、ここにいるお前達は可変戦闘機パイロットになりに志願した面々だ。確かにVFはゼントラーディ軍のバトルポッドやバトルスーツで戦うよりも複雑な戦術が必要だ!俺もかなり苦戦したからな。」

 

かつてルルドルドも戦後、大戦中に興味を持った敵兵器であった可変戦闘機のパイロットになる為愛機であるリガードを捨てマイクローン化し第1期候補生に志願した。

だけど現実は甘くなく可変戦闘機パイロットとして求められる複雑さに困惑し一時期は挫折し軍を退役して民間人として生きようかと考えた。

 

そんな中で同期であったミリアの部下でありラウラの因縁の相手である絵理が最優秀候補生として優れた成績を残している姿を見て奮い立ち必死に食らいつき無事に訓練課程を終えた。

 

「俺達は地球人よりも戦闘経験が豊富であり、軍歴で言えば俺達が先輩だ!志願して今更無理でしたはゼントラン魂に傷がつくし純粋の地球人に馬鹿にされる。だからこそ、俺達は失敗を恐れずに最後までやり遂げねばならない。」

 

生粋たる戦闘種族であるゼントラーディ人は地球人より戦闘経験が豊富であり軍歴で言えば先輩にあたり、経験が足りない地球人よりも出来ないのは恥だ。

更に言えば複雑な事も出来ないゼントラーディ人は野蛮人であり劣等人種だと、地球人特に差別的な地球人至上主義者達に笑われる。

 

だからこそ失敗を恐れずに最後までやり遂げゼントラーディ人でも出来るのだと証明しなければならない。

 

ルルドルドは目の前にいる候補生達(特にゼントラン・ メルトラン)に優れた可変戦闘機パイロットになって欲しいと強く願っていた。

 

「ポルター中尉の言う通りだ。志願した以上・・・俺達地球人に戦闘種族としての意地と信念を見せつけて欲しい。場数を踏めば俺たち以上にやれるかもしれない。」

 

「大尉殿、俺以上にやれるのではなく・・・・地球人よりも上手くやり遂げますよ。」

 

「そりゃ失敬・・・地球人候補生達も負けるなよ。」

 

ラウラはルルドルドの一連の話を聞いて改めて頑張ろうと思った。

 

地球人よりも上手くやり遂げる素晴らしい一言であり、ゼントラーディ人である自分でもどの地球人のエースパイロットよりも優れたエースになりたいと思えるほどだ。

 

よく考えたらあの絵理ですら上手くやっているのだから自分にできないわけではない。

可変戦闘機パイロットとしての技術を学び絵理と再び模擬戦の機会があればリベンジを果たし、行く行くはエースのミリアを下してやりたいと思った。

 

「滝田大尉やポルター中尉はあぁ言っているけど無理しなくてもいい、腕前がエースだったシンも最初はガウォークやバトロイドの操縦は苦手だったからな。」

 

「へぇ(まだだ。今度はフルネームで言ってないや・・まるで親しげな戦友みたいに )」

 

「俺は君達がどんなに苦難に見舞われてもやり遂げると信じている。そしてこの場にいる地球人候補生の後輩達も俺達の世代以上のエースになれると信じている。」

 

盛り上がる中、講演時間が終わりに近づきつつあるのでエドガーが〆に取り掛かろうとしていた。

 

そうした中でラウラはシン・・・工藤シンに言及するエドガーの事が気になった。

 

何処か引っかかるような言い回し・・・

今後やっていく上で何か有益な物を得られるかもしれない。

ラウラは一言一句エドガーの発言を見逃さないように真剣に話を聞いた。

 

「これからの戦いはただ空を飛んでればいいってもんじゃない!!変化する状況に瞬時に合せていく、水のような柔軟性が必要だ!!俺は君達がそれをやれると信じている。」

 

エドガーはかつてロイ・フォッカーから言われた言葉で締めくくった。

 

一連のエドガーの〆を聞いたラウラは工藤シンと関連する言葉ではないかと考察した。

一応統合戦争のエースだと知っているが、エドガーとどんな関係があるのか気になった。

 

講演が終わるとすぐにカゴメとミュレと分かれ行動を開始した。

 

 

「あの・・・・」

 

「なんだい嬢ちゃん?・・・・いやベルタリア曹長。」

 

「一つ質問が・・・・」

 

ラウラは講演終わって控室に向かおうとするエドガーを追いかけ質問した。

 

わざわざ追いかけてきて質問しに来たラウラの顔を見てエドガーは困惑した。

何故講演してただけの自分に対し質問しにくるのだろうかと・・・

質問するならば英史か、先程のルルドルドや直属の教官である茂人にするべきだと・・

 

そう思っているとラウラが口を開き、エドガーの表情はパッと見開くように変わった。

 

「工藤シン・・・・さっき言った工藤シン大尉って誰ですか?」

 

「・・・・聞こえていたのか・・・」

 

「はい・・・・・一応・・・」

 

「まぁいい来いよ・・・・ここでは話せない。」

 

エドガーが一言しか言ってない工藤シンと言う人物が何者かと聞いた。

親しい戦友の名を喋っているように見えたエドガーの姿を見て気になったのだ。

 

ラウラからの質問に少し戸惑いながらもエドガーは人払いした上で答えようとした。

 

近くの人気のない自販機でコーラを購入し隣の長椅子に座った。

そしてエドガーは口を開いた。

 

「シンは自分勝手な部分あったが俺にとってはかけがえのない友人だった。」

 

「戦友ではなくて友人?」

 

「戦友と友人は同じだったさ・・・・」

 

「同じなのか・・・・・なるほど・・・」

 

ラウラはエドガーから工藤シンについていろいろ聞いた。

 

語られた工藤シンは自分勝手な面はあったが、根は明るく負けず嫌いだった。

その話を聞いてラウラは工藤シンに親近感を覚えた。

 

ただエドガーの表情は何処か暗かった。

 

「大尉はどうなったんです?その様子では・・・・」

 

「消えてしまったんだ・・・・戦闘中にな・・・」

 

「そうなんですか・・・・・」

 

エドガーのかけがえのない友人工藤シンはもういない。

戦いの最中、MIA(戦闘中行方不明)となり2ヶ月後戦死判定となり、2階級昇進し大尉となった。

それはラウラに言える範囲内での話であり、半分正解半分間違いだ。

 

実際の工藤シンはマヤン島に眠ってたプロトカルチャーの古代兵器鳥の人と対峙していた時にデストロイド・プロトモンスターによる反応弾攻撃の爆発の後、海面に墜落した後に追いかけるかのように不思議な青白い光に包まれて消えていた。

 

「おい・・・シン・・何処に行くんだよ!おい!シン・・・・馬鹿野郎・・・・」

 

鳥の人を追いかけるように飛ぶ工藤シンのVFー0を見てエドガーは泣きながら叫んだ。

13年経った今でも悲痛な思いは忘れた事が無かった。

その後、工藤シンはMIAにより2階級昇進し大尉となり戦死判定が下された。

 

そして一連の事件とオペレーション・イコノクラスムは地球統合軍により隠蔽、エドガーや空母アスカⅡ艦長であるロバート・マーフィー大佐以下関係者は月面や宇宙衛星基地に監禁されるかのように押し込まれた。

 

ロイ・フォッカー以下スカル小隊と他のパイロット達は空母プロメテウスやSDFー1マクロスに配属、星間大戦ではマクロス艦載機群として戦いロイ・フォッカー含む大半は戦場に散華した。

 

あの場にいた英史は数少ない生き残りであり、それほど今に至るまで厳しい戦争を物語っておりエドガーは数多くの仲間の最期を様々な形で看取っていた。

 

「シンは勿論、VFー0やFー14の仲間は今は殆どいないんだ。」

 

「少佐、戦争はそう言う物では?私だって生まれてからずっと多くの仲間を・・」

 

「確かに君達ゼントラーディ人と俺達地球人は仲間の死に関する価値観は違う・・それでも人によっては忘れたくもないだ。」

 

「それで工藤大尉を・・・・」

 

あまりにも衝撃的であった・・地球人とゼントラーディ人の死生観や戦争観が違いすぎる。

 

戦闘種族が故に戦友の死に対する感情が薄く、戦場で兵が死ぬのが当たり前だと思っていた。

もっともな話ラウラのはメフィリアやアンジェミラそしてシュリやミュリなど親しい戦友は戦死しておらず、悲観的になるような事態になる事が無かった。

製造されてから今日に至るまで多くの戦友を失ったが、戦死して悲しむような戦友は戦死しておらず兵士が戦死して当たり前だとラウラは思っていた。

 

一方でエドガーは入隊してから数多くの戦友を失った。

同期で仲良かった同じ部隊の戦友達、空母イラストリアで見かけた可愛い娘達など・・・

そして相棒である工藤シンも皆、戦場で死に消えていった。

 

あれから13年経っても戦死したり仲間の死に対する悲しみは消えていない。

結婚し子供が出来ても、懐かしい仲間と再会しても仲間の死の痛みは消えない。

 

「いいか軍人である以上、自分も死ぬし親しい人間が死ぬんだ。ある日突然、ある時突然にだ。」

 

「分かっています。今日に至るまで私も数多くの戦友を失ってますし。」

 

「いつ戦死するか分からないんだ。下手すれば一生後悔する事もある。だからよ、伝えたい事は言える時に言っておけ・・・」

 

戦争と言うのはある日いやある時突然、近くにいる戦友が命を落とす・・・

 

伝えたい事があっても、後回しにしていたら永遠に言えなくなる事もある。

そのぐらい戦争と言うのは簡単に突然の別れがやってくる。

 

言いたい事があるならば、言える時に言っておけ・・・・

統合戦争で数多くの仲間とそして大事な相棒兼親友を失ったエドガーだからこそ言える事だ。

話を聞いていたラウラは衝撃を受けたのか、顔を青白くして震えていた。

 

「少佐、私はどうすればいいんでしょうか?」

 

「そんなの簡単だよ、生き残りながらなるべく死なないように戦い戦争で死ぬ人間を減らせばいい。まぁ敵の兵士を殺すけどな。」

 

「ムジュンしてません?死ぬ人間は・・・・」

 

「矛盾している・・・・矛盾するのがこの世の理不尽だ。味方を守るために敵の人間を殺す・・・・兵士はそれだけの業を背負うもんなのさ。」

 

「業・・・・でありますか・・・」

 

兵士達に出来る事は生き残りながら、戦争で命を落とす人間を減らす事だ。

後の全体の難しい事は政治家連中に任せていればいいと・・・

 

だけど矛盾している・・・兵士は生き残るために敵軍の兵士を殺すと・・・

 

この矛盾こそこの世の理不尽であり、戦争で死ぬ人間を減らす為の生贄だ。

やらなければ自分のみならず多くの仲間など守るべき者を死なせてしまう。

兵士はそれらを守るために罪を背負わねばならぬ・・・

 

「どんな相手であれ敵を殺さねば味方が殺される・・・・兵士であれば迷いは捨てるのだな。」

 

「迷いですか・・・・・・迷い・・・・」

 

「いくら戦闘種族でも悩むよな・・・・ただし戦意を失ったり降伏した敵はなるべく殺さなくていい。」

 

「はい・・・・いろいろと勉強したので知っています。」

 

守るべき者を守る為にどんな相手でも戦う為には迷いをしてなくてはならない。

その言葉はラウラの心にナイフで斬りつけたかのようにな痛みを感じた。

 

ボドル基幹艦隊決戦のあの日、自分の迷いがあった。

それが故に全力で戦えず同じゼントラーディ軍であった敵を殺すのに手間取った。

仲の良い戦友は生き残っていたが、下手すれば戦友を失っていた。

 

そう考えたラウラは震えた。

それを見かねたエドガーは優しく肩を手に置いた。

 

「ベルタリア曹長・・・・マニュアルあんまり大事にしたら、早死にするぞ。マニュアルは血で書かれているからな。」

 

「?・・・・・・少佐・・・それはなんです?」

 

「昔の上官が言って言葉さ。」

 

ロイ・フォッカーの言葉だ・・・・

 

マニュアルは手順を守る為に必須であるが、戦場ではそうとも限らない。

だからこそ自分の頭で考え変化する状況に応じて対応しなければならない。

 

確かに苦しい事があるかもしれない。

それでも兵士はマニュアルに囚われずに自分の頭で考え行動をすると・・・

状況に応じて戦場に対応し必死にしがみついて生き残らねばと・・・

 

これも兵士に課せられた業だ。

 

話を聞いたラウラはよく分からなかったが、妙に納得するような言葉だと思った。

結局自分はゼントラーディ軍のマニュアルに囚われたままであり、それが故に自分を苦しめる事になる・・・なんか心がスッキリしたな。

 

ラウラは更に話を聞こうかと質問をしようとしたが、時間はなかった。

 

「そろそろ御暇するよ。」

 

「お時間取らせてもらってすいません。」

 

「いいさ・・・・頑張れよ!お嬢ちゃんならいいパイロットになれる!」

 

「本日はありがとうございました!」

 

ラウラは去り際のエドガーから激励された。

激励されるとラウラは帰路に立つエドガーの背中を見ながら敬礼し礼を述べた。

 

有意義な話が聞けたし、ボドル基幹艦隊決戦時から続くトラウマも軽減出来た。

可変戦闘機パイロットとしての心構えもかなり構築できた。

 

エドガーとの話し合いにより、兵士としての覚悟が定まり自分独自で可変戦闘機パイロットの戦術を構築したり兵士としての心構えについて考える事が出来た。

 

「あっ聞きそびれ・・・・・やめておこう・・・」

 

ただ唯一の聞きそびれたのは工藤シンが戦死した戦いの事だ。

結局、その戦いについて何も聞けずに終わった。

いや聞かなくてよかったのかもしれない・・・・人には触れてはいけない物があるのだから。

 

天井に顔を向けたラウラはこれから前向きに頑張っていこうと決意し歩き出す。

 

【番外編・後日談】

 

オペレーション・イコノクラスムは2021年から37年後の2058年7月に新統合軍参謀本部により機密事項の公文書が発表され、現存した写真と共に世間に広まった。

 

そしてシン・工藤と呼ばれる人物の伝記が見つかり、それを基に映画やドラマが公開され一定の知名度を確立する事になる。

 

翌年のバジュラ戦役の最中のフロンティア船団にてジョージ・山森監督によるBIRD・HUMANにて、マオ・ノームの孫娘で銀河の妖精シェリル・ノームが関わっている。

実にオペレーション・イコノクラスムから50年が経った・・・暑い夏の日の出来事であった。

 

次回予告

 

ラウラ達のいるクラビウスは至って平穏であった。戦火から離れたラウラはいつしか外の戦場が対岸の火事のように見え戦場の実態を忘れつつあった。しかし、戦場の現実は以外な形で非常な姿で突きつけてくる・・・・

 

次回 マクロス外伝蒼い髪のメルトラン

 

【キルド・イン・アクション】

 

戦火をくぐり抜けろ!バルキリー

 

前回

 

次回

【作戦種類】

核戦争

【年月日】

2006年11月26日

【場所】

レニングラード州サンクトペテルブルク

【実行組織】

反統合同盟軍

【対象組織】

地球統合軍

【解説】

開戦から5年〜6年が経過するとSDF計画やグランドキャノンの建造により地球統合政府加盟国では厭戦ムードが蔓延し情勢不安が発生すると反統合同盟軍が攻勢を仕掛け大損害を与えるも国家的攻勢に出るには不利な状況に陥った。

 

旧NATO諸国軍を中核とする地球統合軍欧州軍は一気に攻勢をかけポーランド正規軍を支援し、反統合同盟側のポーランド人民軍とベラルーシ軍を撃破しバルト三国地域を抜け反統合同盟軍一大軍事拠点サンクトペテルブルクに侵攻した。

 

デストロイド・シャイアンを中心とする機甲師団は圧倒的機動力を駆使し反統合同盟軍地上部隊を圧倒的優位に立ち市内各所を制圧し、守備軍は追い詰められた。

 

陥落寸前になるとウラル山脈の核ミサイル基地から戦術核兵器を搭載したRTー23が発射し市街地戦を展開中の地球統合軍と友軍守備隊ごと攻撃した。

 

攻撃の結果、侵攻中の地球統合軍は大損害を被り反統合同盟軍守備隊の9割を喪失、民間人に多大な被害を被った。

 

第二次世界大戦における広島・長崎に次ぐ3度目の核兵器使用を切欠に既存核兵器を改造した反応弾を実戦投入し反統合同盟加盟国に対しまともな反撃に出る前に執拗に攻撃し瓦解させた。

 

この事件は反統合同盟内にて離反者を多数出すことなり敗色を強める結果になった。

 

【結果】

反統合同盟による起死回生を狙った戦術核兵器の使用であったが、OTMを絶対優位に持つ地球統合軍を優位に進めるだけでなく離反者を招き反統合同盟の組織的抵抗を致命的に落とす結果として終わった。

 

既存核兵器は以後反応弾に置き換えられ、事実上の最後の核兵器使用という人類史の負の汚点として名を残す結果になった。

 

反応弾は以後も多数使用されるが、第1星間大戦後.大量殺戮兵器が故に銀河条約で使用を厳しい制約を課された。

 

とは言えども反応弾は開発が進み残留放射性物質を出さなくなった結果、核兵器や初期反応弾と比べて使用のハードルが低く幾多の戦場で使用される事となる。

 

 

【西暦2021年2月5日】

【クラビウス基地クレーター地下.施設東部機種転換センター】

 

 

この日、ラウラはベレー帽を被りきちんと制服を着て広場の前に整列していた。

先の事件における処分は自室謹慎のみに留まり、無事入所するが出来た。

広場には海兵隊から機種転換したゼントラーディ人だけでなく、他機種に操縦していた現役パイロットの地球人そして新卒のVFパイロット候補生も並んでいた。

 

「あれはカゴメと一緒にいたフィルダー少尉。」

 

機種転換センターのビルから更新しながら進む一団の列にカゴメと一緒にいたライナス・フィルダー少尉が旗を持ちながら進む姿が見えた。

ライナス達は前任期であり、ラウラと入れ替わるように訓練課程を修了していた。

 

センター長の訓示を受けそのまま別の施設に移動し配属先の部隊の迎えと合流する。

 

「地球時間で3ヶ月後、私もああして行進するんだねぇ。」

 

3か月もすれば卒業し、自身も実戦部隊に配属されVFパイロットデビュー・・・

ラウラはそう考えると以前と比べて笑顔が明るくなり、希望を感じていた。

 

一方、一般知識教育の裁縫や靴磨きなどの分野は苦痛だった。

 

機種転換センターではゼントラン海兵隊出身者に対し地球の一般知識を教えていた。

 

入所式する前では地球人とは別に専門の教官により、共通言語(リンガフランカ)である英語を自然に話せる訓練や一般知識を植え付け普通の地球人と同化が行われていた。

無論、ラウラも教育を受けており裁縫や靴磨きなど厳しくチェックされる分野で怒られたりしている事もあってか苦痛かつ苦手意識を持ちつつあった。

 

前よりかは前向きになったが、それと同時に苦痛に感じる事も出てきた。

 

しばらく経って時系列は正午のお昼時に進む。

 

「ラウラ・ミュレ、お疲れ様。入所式緊張したでしょ。」

 

「はい、銃を渡された時今までに感じた事のない責任を感じました。」

 

「重すぎて言葉も出ませんでしたよ。」

 

ラウラ達は入所式の一環である銃貸与式における感想をカゴメに言った。

 

入所式の終盤での銃貸与式で教官の一人であるバルリング・アドルガッサー中尉から旧米軍アサルトライフルであるM4カービンを手渡された。

予め銃貸与式の意味を知っていたラウラは、国民を守る責務を実行する為に握る銃の重さが予想以上に重たい事を知って思わず落としそうになった。

 

ほんの一瞬だった・・・・・意識がまともになればM4カービンはそこまで重くない。

重くはないのだが、国民を守る責務がこれ程は想像以上に重かった。

 

「ゼントラーディ軍はただ軍上層部の命令で戦ったり本能のまま戦ってたけども、M4カービン・・・・あの銃を握った時の一瞬・・・国民を守る責務がどれだけ重いのか知ったような気がします・・・・」

 

「ラウラ・・・・そんな事考えていたの?」

 

「以外でした?自室謹慎の時・・・・少しでも多く地球の事知りたくて・・・この儀式もかつて地球の一国だった日本の由来だって知ってます。」

 

「なるほどねぇ、結構真面目で私感心するわ。」

 

自室謹慎した時からラウラはいろいろ勉強していた。

 

地球の常識や言語などの基礎の部分を始め、軍事と歴史を熱心に勉強した。

基礎的な部分も熱心に学んでいたが、軍事学の方が取り憑かれたかのように勉強しゼントラーディ軍では味わえない文学にラウラは新鮮味を物凄く感じた。

 

「ベルタリア曹長は文化より軍事ですか・・・・」

 

「分かってないなぁミュレ、地球の軍事は自分自身の技量に取り組めるから便利なのよ。」

 

「そ・・・・そうなの・・・・・」

 

軍事学を学び始めてからのラウラの性格は明るくなった。

好きな事が増えた結果、後ろ向きな性格から前向きな性格に変わり社交的になった。

ただ強引な所もあってか自分の好きな事を他人に押し付ける面が目立ち、熱心に軍事学を話すラウラにミュレが引いてしまっている。

 

「やめなさい・・・・引いているでしょ。」

 

「カゴメも軍事学に・・・・今度バトル・オブ・ブリテン・・・・」

 

「ラウラは女の子でしょ、まだ22歳のお・ん・な・の・こ。ファッションとか化粧とか興味ないの?」

 

「ファッション・・・化粧・・何それ?」

 

趣味ができたラウラの暴走っぷりにカゴメは諌めつつオシャレに興味ないのか質問した。

まだ22歳の女性であり、ファッションや化粧とかに興味持ってもいいと思っていた。

 

カゴメからの質問にラウラはキョトンとしながら、知らないと答えた。

 

ラウラは全くファッションや化粧とかに興味がなかった。

以前にもシャワーから上がって一緒に着替えてた時、化粧やスキンケアしてないのに綺麗だなとカゴメがラウラに言った事があるが返ってきたのは・・・   

 

「何それ美味しいの?」

 

と言う間抜けた答えだった。

 

ラウラは文化慣れしてきたとは言えまだまだ世間知らずのお嬢様みたいな面が強い。

カゴメとしてはホッとくわけにはいかない。

 

「明日の外出、私に着いて来て・・・」

 

「えっなんで?」

 

「いいから来る、ラウラは女の子でしょ。私がコーチするから。」

 

入所式の翌日は金曜日なのでいきなり非番である。

 

なので明日はラウラが年相応の女子ファッションに目覚めるようにカゴメが引率して若い女性がよく通うブティックに連れて行ってコーチしようと考えた。

一方のラウラは明日は運動と軍事学三昧したかったのか嫌そうな顔をしている。

 

一応階級が下なので少尉であるカゴメからの上官命令なので逆らえない。

 

「ベルタリア曹長、災難ですね。」

 

「カゴメが言うんだから仕方がない・・・ 上官命令・・・」

 

「フリジェル軍曹・・・・・・貴女もです。」

 

「そんな・・・・」

 

ラウラが年頃の女の子らしくする為には立場を利用してでもやり遂げねばならない。

 

明日のブティック行きはミュレも巻き込まれる事になった。

2人きりだけではつまらないのでついでと言うのがカゴメの思惑だろう。

 

まぁカゴメに迷惑かけたばかりだから、断るのも悪い。

一方のラウラもこの前の戦闘で罪悪感があったのでカゴメの言う事は素直に聞こうと思っていた。

自分も強引な真似で戦闘に連れ出したのだから、カゴメの強引な付き合いを拒否してはならないむしろ積極に付き合っていこう。  

 

とそんな感じでラウラはカゴメプロデュースの明日の外出を積極的に受け入れた。

 

【同時刻】

【クラビウス基地第5軍港.ARMD級改空母アルタミラ】

 

空母シナノから離れ正式にアルタミラに着任した大樹は艦内を歩いていた。

右隣に歩くのは自身の小隊に所属する神楽賢二郎少尉、新たな部下だ。

 

大樹より歳下ではあるが実戦経験が豊富であり、ロイ・フォッカー章とチタニウム章を受章したエースパイロットであり階級も少尉と事実上の副官である。

 

「おはようございます。吉野大尉。」

 

「べサーズ准尉、おはよう。基地の方の引っ越しは済んだか?」

 

「はい!」

 

ロザ・べサーズ准尉はゼントラーディ人で、ラーチャー小隊に所属している。

 

先の大戦では僅か7歳で参戦したと言う信じられない話があるが、クローン製造による兵士である為10年前と全然容姿が変わっていない。

自分の年齢より若い兵士が自分より実戦経験が豊富、おかしな話だ。

 

「隊長、どうしました?」

 

「ゼントラーディ人の事について考えていた。俺らと違うなぁってね。」

 

「連中はクローンですからねぇ、違うのは当然で作りも違いますから。」

 

地球人とゼントラーディ人は同じように見えて違うのが特徴だ。

なんたって元々ゼントラーディ人は巨人であるから。

 

シュリが初めて来た時もそうだが、価値観は地球人と異質である。

宗教観も国家観もない人間味もない、あるのは軍人として生きる独特の価値観だ。

ロザは地球に帰化して10年経っているので地球人女性らしさはあるが、根は違う。

 

「早期警戒機が接近している?」

 

「予定にない機だとよ。」

 

「予定のない早期警戒機・・・・なんだ?」  

 

こうした中、着任予定のない早期警戒機が接近している報を聞いた。

 

VFー4DーAEWでも接近してきたのか?と思ったが、白川提督贔屓で予備艦隊所属艦であるアルタミラとは言えども高性能な早期警戒機が配備されるとは思えない。

とにかくどんな奴がやってくるのか、ブリッジに行けば確認できる。

 

大樹は賢二郎を引き連れブリッジに向かった。

 

『こちらプレーリードッグス所属プレーリー2からアルタミラへ着艦許可を求める。』

 

「艦長聞いてますか?」

 

「早期警戒機部隊が来ると聞いてたが今日ではないはず・・・・」

 

その頃、ブリッジでは例の早期警戒機と交信が行われていた。

 

所属部隊はプレーリードッグス、火星第二次防衛ラインを守る火星第2軌道艦隊に所属する第12早期警戒部隊の通称でありVEー1エリントシーカーを運用している事で知られる艦隊の目だ。

纏まって運用されるのではなく、火星から分遣隊を派遣するスタイルだ。

 

大樹はブリッジに上がると映像で映し出される姿を見て懐かしさを覚えた。

 

『聞いてないかぁ取り敢えず着艦させてもらうぜ!』

 

「お・・・おい」

 

『第3分遣隊各機、アルタミラに向け着艦態勢に入れ!』

 

プレーリードッグスから来た第3分遣隊はプレーリー2は僚機3機を引き連れフォーメーション・フィンガー・フォーでアルタミラに向け移動開始した。

 

アルタミラは艦周辺警護をしていたVFー5000スターミラージュで編成されたフォークス中隊のディーア小隊とレパード小隊を迎撃に向かわせた。

ディーア小隊とレパード小隊は第3分遣隊を左右に包囲し、変な動きをしないか監視する。

 

「VEー1ですね、大尉。」

 

「予定日のない日に来る問題児・・・・何者なんだ?」

 

プレーリードッグのマークを描いたVEー1を見てどんな奴が来るのか想像した。

 

4機編隊で飛ぶ姿は特に問題はない、変わった様子もない。

ごく普通の早期警戒機、問題児が乗っているようには見えない。

そう思っていると、異変は突然起こった。

 

「バカな早期警戒機でインメルマンターンだと!?」

 

1機のVEー1が突然、インメルマンターンを披露しディーア小隊の間を突っ切った。

突然逆方向に移動したプレーリー2に慌て吹きバトロイドに変形し、一斉に振り向く。

振り向いた瞬間、原田志保少尉の駆るディーア3の至近距離を通り過ぎる。

 

プレーリー2は通り過ぎた後元の編隊へ戻った。

 

「なんて危ない奴なんだ。」

 

「あの飛び方・・・まさかな。」

 

あの飛び方を知っている・・・・・

インメルマンターンを使っているからじゃない、前に一度見たことがあるからだ。

 

新兵時代に優れた技量を持ったエースパイロット、まさかあの人が来たのでは?

大樹は懐かしい旧知の仲の人ではと期待した。

 

プレーリードッグス第3分遣隊はアルタミラに着艦した。

 

アルタミラに着艦した各VEー1エリントシーカーからは男女のパイロットから降り立ち、保安陸戦兵の監視の元ブリッジに上がった。

 

「自分はプレーリードッグス所属第3分遣隊長カール・インメルマン中尉であります。」

 

「同じくゼノビア・ケーン伍長であります。」

 

「当艦長、ジェイル・ベレスフォード大佐である。」

 

アルタミラに着艦した問題児はやはり知っている人物であった。

 

カール・インメルマン中尉

新統合軍アポロ基地にて星村絵理の夫星村和也・葛西信之と並ぶアポロニュージェネレーションクロウの一人で、3年前火星で世話になったエースパイロットだ。

今は結婚し子供が出来てからは戦闘機パイロットを退いたと聞いているが、まさか早期警戒機のパイロットをやっていたとは思いもしなかった。

 

「第3分遣隊はスミス・ジェナス中尉が率いていると聞いたが?」

 

「ジェナス中尉は第2分遣隊隊長としてキラウエラに派遣されました。これが命令書です。」

 

「確かに火星方面軍艦隊司令部マシュー・グレニスター少将の署名だな・・・」

 

本来、第3分遣隊の指揮官はスミス・ジェナス中尉であったがアームド級宇宙空母キラウエラに派遣され急遽カールがアルタミラに派遣される事になった。

カール自身も妻子がクラビウス市に在住である為、適任だったと言える。

 

まぁ来てくれるだけでもありがたいが・・・・

 

「インメルマン中尉、何故我々に事前に通達しないのかね?」

 

「時間がありませんでしたので・・・・」

 

「中尉・・・今回は不問とするが軍隊内での連絡報告は怠るのは問題だぞ!」

 

「ハッ・・・・・以後気をつけます。」

 

無断無連絡着任の件は厳重注意をしたのみで不問になった。

カールの横にいたゼノビアや後ろにいる第3分遣隊の隊員達はホッとした表情だ。

 

話し合いが解散すると大樹は賢二郎と共にブリッジから出ようとすると誰かに呼び止められた。

 

「よう吉野、元気にしてたか?」

 

「何とか激務でしたけれども問題なく・・・」

 

「隣は吉野の部下?」

 

「自分は神楽賢二郎少尉であります。」

 

「ほう若いのにやるねぇ〜」

 

カールだった。

 

火星に留学していた頃、マリネリス中隊に単身赴任していたカールと出会った。

 

マーズウォーズ事件が起きる前はVFの操縦技能をカールから学んでおり、師弟の関係を築いており何度も火星独立ゼントラーディ軍との戦いで共闘した。

 

大樹が火星を離れ空母シナノのブラックパンサーズ中隊に所属して以降、関係は薄れていたがいざ顔合わせをするとお互い昔と変わってない事に安心した。

久しぶりに会った事もあり、以前よりも意気投合し世間話や昔話で花を咲かせた。

 

「実は息子が生まれたんだ。」

 

「息子ですか?アマリさんと結婚したんですか?」

 

「しているから息子が生まれたのよ。ちなみに次男な。」

 

話し合いをしている最中、カールが息子が生まれた事を話した。

 

大樹は火星にいた頃にアポロ基地にいた頃から付き合いのあるアマリ・ヒューマリンと言う女性兵士と恋人関係である事を知っており、姉のように接してくれた記憶が残っている。

 

3年が経ちカールとアマリは結婚し子供を授かったと聞くと大樹は感慨深い物を感じた

 

「名前はなんて言うんです?」

 

「名前か・・・・大した名前ではないが・・・・」

 

大樹はカールに息子がどんな名前なのかを聞いた。

 

インメルマンの名を冠するカールの息子だから大樹としてはどんな名前が気になる。

名前を聞かれたカールは照れくさそうな仕草をすると嬉しそうに口を開いた。

 

「名前はライト・・・・ライト・インメルマンだ。」

 

カールの息子の名はライト・インメルマン、長男フォルカー・インメルマンに続く次男であり、母親アマリに似て黒髪の優しい瞳を持った子供だった。

息子の事を楽しそう話すカールの姿を見て大樹は珍しく安心したかのような笑みを浮かべた。

 

後にカールの息子ライトが39年後、最悪な形で歴史に名を残すとはこの時誰も思いもしなかった。

 

【西暦2021年2月6日】

【クラビウスシティー.タイペイタウン】

 

 

ラウラはラフなTシャツに部活娘みたいなジャージと言う姿で街にいた。

 

台湾の台北を再現した街並みであり、数多くの台湾系地球人が在住している街だ。

機種転換センターの近所であり、クラビウス市東部中央に位置している。

 

なおラウラの官舎があるのも、タイペイタウンである。

 

そんなラウラだが、不機嫌そうな表情を浮かべていた。

 

「カゴメ、私やっぱり官舎の中で戦争史を勉強したい。」

 

「ダメ・・・上官命令です。女の子らしく楽しい文化を楽しみましょう。」

 

「私はそーゆーのはいいって」

 

外出するつもりなんて無かった、基地の図書館で戦争史を勉強したかった。

だけど、カゴメからの命令ともあってか断りづらい・・・・・

 

とは言え・・・・外の街は新世界とも言っても良かった。

 

男と女の地球人や同胞(ゼントラーディ人)がそれぞれいろんな服を来て歩いていたり、仲良く一緒に歩いている姿がよく見かける・・・ゼントラーディ軍ではありえない光景だ。

 

「地球人は本当にデ・カルチャーだな。全く理解できん。」

 

「私は楽しいですよ、ベルタリア曹長。」

 

「ミュレお前はヤケに馴染んでいるな。」

 

「そんな事ないですよ。」

 

同期で共に来たミュレだが、自分よりも地球文化に慣れている。

 

何処からか手に入れたのか、デジタルオーディオプレーヤーで音楽を聴いておりサングラスをしたりと今の自分よりも圧倒的に地球人の年頃の女らしい感じになっていた。

 

「ラウラ、ミュレとヴェロニク・アーベラインの音楽のCD探したいから来る?」

 

「私は音楽は別によく分からないから待ってるよ。」

 

「そう、すぐ終わるから待っててねぇ。」

 

「うん・・・・ふう」

 

ラウラは新世代の歌姫と称されるヴェロニク・アーベラインのCDを探したいカゴメとミュレと別れ一人だけCD屋の前で待機した。

ミュレはここについてからリン・ミンメイを切欠にいろんな音楽に興味を持ち、たまたまテレビで目にしたヴェロニクの歌を聴いてファンになったらしい。

 

カゴメも昔はソロのアイドルとして活躍してたらしい。

 

そんな二人を見てたラウラだが、音楽の世界にはどう入り込めばいいのか分からなかった。

二人を待つ間、ラウラは自身の服装を見た。

 

「パーカーとカーゴパンツ・・・・地球人の制服よりも着やすくていいなぁ。」

 

服装はパーカーにカーゴパンツと言う格好だが、制服のスカートと言う物よりも着やすく下にストッキング履く必要もないので心地よい。

カゴメからのお下がりだが、良い物をもらったとラウラは思った。

 

地球の文化はいろいろある・・・・

 

食べ物も服装も娯楽もゼントラーディ軍・海兵隊時代と比べてかなりある。

人生でこんなに楽しいと思った事が無かった。

 

ラウラはなんだかんだ幸せせに感じていると街頭ニュースを目にした。

街頭ニュースでは新統合政府マロニー大統領が演説をしていた。

単なる演説ではあるが、この直後ラウラの心を壊す言葉を聞くことになる。

 

『新統合政府フランク・マロニー大統領は迫るボドル基幹艦隊決戦勝11周年記念式典につきまして・・・』

 

「あ・・・・え・・・・あ」

 

 

 

 

ボドル基幹艦隊決戦勝11周年記念式典・・・ ボドル基幹艦隊決戦

 

ニュースで流れたボドル基幹艦隊の名を聞いてラウラの心は抉られたかのような冷たさを感じた。

 

同胞殺しである自分にこんな楽しい事を楽しむ資格なんてないんだ。

この前の戦闘においても同胞と戦って殺している、私は何の為に生きているだ。

 

ーなんで戦っているんだ。

ーどうして味方同士で戦っているんだ。

ー戦っているのは仲間なんだぞ

 

昔自分があの戦場で叫んだ声が心の中で響く・・・・

人間換算で言えばまだ11歳、地球人で言えば子供だがラウラらゼントラーディ人は最初から大人のクローンで作られた生物兵器であるので見た目は大人だ。

既に数多くの戦場で多くの兵士を殺して殺して殺しまくった。

 

ーそもそも何故、私は監察軍と戦っている?

ー何故戦争をやりたがる?

ーそんなに人を殺すのが好き?

ー人殺しがこんな所で楽しい思いをするなよ、同胞殺したんだろ?そして地球人も殺したんだろ?

 

更に響く声、響く自分の声・・・まるで責めるかのように・・・

 

「いやぁぁぁぁぁぁ」

 

頭がパニックになった。

 

過去の自分が今の自分を否定している声に耐えられなくなった。

周りにはメフィリアもアンジェミラもいない環境下で心の防壁が無くなり、後悔と罪悪感が一気に自分自身の良心を蝕むように襲いかかる。

 

頭の中にはボドル基幹艦隊決戦の時の出来事が一斉に思い出す。

 

「ラウラどうしたの!」

 

「私は・・・・私は・・・・」

 

「ラウラ!フリジェル軍曹・・・・一緒に抱えて・・・・」

 

「りょ・・・・了解しました。」

 

近くにいたカゴメとミュレが駆け寄った。

 

幸い近くに人がいない為、大きな騒ぎにならず駐車場まで向かいカゴメの自家用車に乗せた。

ラウラは車の車内にて激しく震えていた、いつもの強気の表情もない。

 

「ラウラ、ラウラ・・・」

 

「私は・・・・・・」

 

「ラウラ!!」

 

「カゴメ・・・・」

 

必死の呼びかけにようやく正気に戻った。

 

正気を取り戻したラウラはミュレが急いで買ってきたお茶を飲み終え完全に落ち着いた。

それでもまだ手は震えている、厳しい戦闘でさえ震えなかった手が今震えている。

戦友がいないだけであんなに取り乱す自分が惨めで涙が止まらなかった。

 

「何故、あんなに取り乱したの?」

 

「ごめん・・・・・ボドル基幹艦隊決戦の事思い出したら感情が・・・・」

 

「そう・・・・」

 

ボドル基幹艦隊決戦に負った心の傷は10年経っても治らない。

ゼントラーディ軍人としての矜持、同胞殺しそして11人の戦友の死・・・

 

海兵隊に属したら2人の戦友が戦死、2人の戦友が戦傷によりマイクローン化した上で退役やシュリやミュリ・ルクソールの転属などどんどん共に戦った仲間達もいなくなった。

転属して見ればカムジンの反乱に加わり戦死したり、軍人を辞めた何処にいるのか分からなくてなった者など傷はどんどん深まるばかりだった。

 

あの戦いはリン・ミンメイの起こした奇跡と言われ、新統合政府は大々的に勝利を誇っているもののラウラ同様にゼントラーディ軍人としての矜持を失い苦しむ地球についたゼントラーディ軍人は少なくない。

 

ブリタイ率いる第56分岐艦隊以外のラプラミズ艦隊や第7空間機甲師団は地球に就く事には積極的ではなく、結果トラウマを抱える兵士を多発した。

 

ラウラはメフィリアとアンジェミラがいたからボドル基幹艦隊の名を聞いてもトラウマを発症する事がなかったが、親友になったカゴメや良き部下であったミュレがいなくなり周りに頼りになる人がいなくなった事でトラウマを抑える防壁がなくなった。

 

「ラウラ、美味しい物を食べたら気が晴れるわよ。近くに娘娘タイペイ店あるから。」

 

「でも私のせいで台無しにしてしまったし。」

 

「私は気にしてないわ、辛いならケアするのも親友としての私の矜持だから。」

 

カゴメは元気を取り戻してもらう為、娘々に行こうと誘った。

 

娘々はリン・ミンメイの伯父リン・シャオチンとその妻リン・フェイチュンが南アタリア島で経営していた店であり、大戦中はマクロス艦内で戦後は首都マクロスシティーで経営していた。

 

大戦の英雄的歌姫リン・ミンメイの名声により規模が拡大し、地球各主要都市と月面各都市にて12ものの支店舗が出来るほど躍進を遂げておりクラビウスでも3年前に2店舗出店している。

 

地球の料理の魅力に目覚めたラウラなら中華食べれば気分が良くなると考えたカゴメは、町中華ならミンメイの縁の深い娘々を選んだ。

 

 

 

『 ゴージャス☆デリシャス☆デカルチャー♪』

 

「ここが娘々・・・・」

 

半ば強引に娘々タイペイ店に連れて来られたラウラは驚いた。

 

飯を食べる所なのに外装が派手であり、大きめに娘々のマスコットキャラが描かれていた。

更にチャイナドレスを着たミンメイの立ち絵が書かれていたり、ミンメイ人形も置かれていた。

ミンメイ人形を見たラウラは懐かしさを覚えた。

 

「懐かしいこれ見たことある。」

 

「ミンメイ人形?ゼントラーディ軍時代か海兵隊時代?」

 

「ゼントラーディ軍時代・・・・メフィリアが何処からか拾ってきて・・・」

 

この時のラウラの発言を聞いてカゴメは確信した・・ホームシックなんだなと。

 

さっきの取り乱しもホームシックが発症しそれに過去のトラウマが併発した結果であり、ラウラは気がついてはいないが相当寂しがり屋な性格だった。

寂しがり屋な性格が故に傷つきやすいが、自身のプライドが故に隠れてしまう・・・

それがラウラの弱さであり、下手をすれば死を招く地雷のような弱点だ。

 

ーラウラを死なせない、陰ながら死なないように支えねば・・・

 

ラウラは人間換算でまだ22歳の若い女性、そして軍人。

カゴメはどうにかして死なないようにする為にサポートしたいと心に誓った。

 

娘々に入店し店員の案内で席に座ると、隣の女性がチラチラ見ていた。

緑色のボブカットのゼントラーディ人だ。

しばらくチラチラ見ていると、何かに気がついたのか声を上げた。

 

「ラウラ!ラウラ・ベルタリアなのか?」

 

「えぇと・・・」

 

「生きていたのか・・・ あの戦いを・・・・」

 

緑色のボブカットのゼントラーディ人はラウラの事を知っていた。

 

涙目でラウラの顔を見ながら目の前に立つと突然手を握ってきた。

突然の出来事に睨見つけるのだが、しばらくしてラウラの表情が柔らかくなった。

 

「リオナ・・・・ リオナ・ナージャ・・・・」

 

「良かったぁ・・・・やっぱラウラか・・・ あの戦いで死んだかと・・・」

 

「リオナこそ乱戦で行方不明になって・・・」

 

「ユウナやロレが助けてくれた。私達はマクロスと共に地球に降下して・・」

 

緑色のボブカットのゼントラーディ人はラウラのかつての戦友リオナ・ナージャ。

ボドル基幹艦隊決戦時はラウラ達と共に進撃していたが、乱戦の最中チームメイトであるロミア・ユファンやエミア・ユーズが戦死し悲しむ暇もなくリオナは戦場の悲しき光の中へ消えていった。

 

当然ラウラ達は死んだと思っていた。

 

実際は同じようにチームメイトを失ったロレ・ヤッシスやユウナ・タロマスと合流し、最終的にはラプラミズ艦隊の残存艦艇に収容され戦闘を生き抜いた。

 

「ラウラそちらは・・・・」

 

「紹介します、リオナ・ナー」  

 

「私はリオナ・コンチネンタル、近くで住んでます。」

 

「リオナ・・・・」

 

「私・・・結婚しているのよ。」

 

カゴメから説明を求められた時のリオナが変だった。

リオナ・ナージャと言う名前ではなくリオナ・コンチネンタルと名乗ったからだ。

 

ラウラは理由を問いただそうとする前に見たことのないような爽やかな顔で結婚したと言う。  

 

結婚と言う単語を知らないラウラは険しい表情をリオナに向けた。

何故、ナージャではなくコンチネンタルを名乗っているのかと・・・

 

「結婚はなんだ?何故コンチネンタルなんだ?と言いたげね。」

 

「そうだ、お前の苗字はナージャだ!何故変わった。」

 

「男と結婚し夫の苗字名乗ったからよ。まぁ選択的夫婦別姓だから、別々にできるけど。」

 

「男と・・・結婚・・・・カゴメ・・・知っているか?」

 

「もちろんよ・・・・ラウラ、男と一緒になって暮らすって事よ。」

 

男と一緒になる結婚と言う言葉にラウラは衝撃を覚えた。

海兵隊時代は男女混合となったがそれ以上の関係になったのは見たことがない。

稀に男女共に転属する事はあっが・・・・

 

「リオナ、本当なのか?」

 

「本当よ。2年前、ゼントラーディ時間1.5ターム前に・・・地球人と・・・」

 

「ヤック・・・・ヤック・デ・カルチャー・・・」

 

リオナはボドル基幹艦隊決戦後、ロレとユウナと共にマイクローン化し退役し軍人ではない民間人としての道を歩もうと決心し学習プログラム育成センターに通った。

3年間学生として地球の学問を学び銀河ネットワークのアナウンサーとして就職した。

 

潜在能力が発揮して銀河ネットワークの人気アナウンサーになり、同じアナウンサーであったブラッド・コンチネンタルと恋仲になり2年前の2019年に結婚した。

 

なお娘々にいたのは昼飯を食べながら銀河ネットワークのアナとしての仕事をする為である。

 

「新統合軍カゴメ・バッカニア少尉です。」

 

「VF候補生であるミュレ・フリジェル軍曹であります。3級空士長・・・・」

 

「ご丁寧にどうも・・・」

 

カゴメとミュレはお辞儀の礼で敬礼した。

 

軍隊ではないがラウラの戦友なので軍人らしく礼儀正しく接しなければならない。

2人の敬礼を見たリオナは少し驚きながらも上品に答礼をした。

もう軍人ではないが、元軍人として最低限の礼儀をせねばとレオナは思った。

 

久しぶりに再会したラウラとレオナはお互い何があったのか話した。

 

 

 

 

「ラウラ、まだあの戦いを引きずってたのね。」

 

「仕方がないだろ今もラプラミズ司令の命令には納得もしてないし同じゼントラーディ軍人同士殺し合うのも納得してない。私達は同胞を殺し戦友も死んだ。」

 

「確かにあれは苦しかったわ。」

 

「何故ラプラミズ司令はあんな命令を・・・・」

 

ボドル基幹艦隊決戦における自身の心の傷をレオナに話した。

 

同じ部隊にいたのでラウラが負った心の傷に同情しており、レオナも似たような傷を負っていた。

突然、ラプラミズ司令から言い渡されたマクロスと共闘と同胞への攻撃命令は今もなお納得できないし同胞を殺した罪悪感は10年経ってもまだ残る。

 

重苦しい雰囲気の中、レオナは残酷な事実を告げた。

 

「違うわラウラ、どの道私達は殺し合うしかなかったのよ。」

 

「リオナ!お前はゼントラーディ軍の軍人ではなかったのか?」

 

「ゼントラーディ軍人だったわよ、私だって後悔している・・でもボドルザー閣下が私達はプロトカルチャーに汚染されたと判断した。」

 

「汚染されたのはブリタイ・クリダニク司令だ!私達は忠実にボドルザー閣下の命令に従った。なのに・・・」

 

「ミリア・・・・エースのミリアが地球人と結婚した時点で私達の命運は決まってたのよ。」

 

ラウラが所属するラプラミズ直衛艦隊は対マクロス主力のブリタイ率いる第67分岐艦隊とカムジン・クラヴシェラ率いる第7空間機甲師団と共に文化汚染されたとボドルザーにより判断され処刑対象であり、どの道戦うか滅びるかの2択しかなかった。

 

ボドルザーからすれば2個艦隊処断しても全く問題がない。

命令に忠実だが、地球人と結婚し寝返ったミリアを出したラプラミズ以下将兵も無断停戦協定を結んだブリタイらと同じく文化に汚染された存在に過ぎない。

 

「だとしたら私はミリアが許せない!あんな事になってなければ・・・」

 

「ラウラ・・・・・・・」

 

「被害者ぶらないでよ、私達は地球人虐殺と地球の文化を破壊したじゃない。」

 

「リオナ・・・・」

 

ラウラはラプラミズ艦隊が処断の理由の一つになったミリアに激しい怒りを吐いた。

 

激しい怒りを吐いた姿を見ていたリオナは冷たい事実を突きつけた。

地球人虐殺と地球文明を破壊したのは我々ゼントラーディだと・・・

 

リオナの言葉を聞いたラウラは頭が真っ白になった。

 

「本気で言っているの?私達は・・・・」

 

「私達は加担しなかったけど地球人と地球文明を殲滅した・・・・69億人もいた人類の大半を虐殺したのよ。」

 

「でも・・・・」

 

「コンチネンタルさん、そろそろ料理頼みましょう。」

 

「そうね。」

 

厳密に加担したのは第118基幹艦隊本隊であり、ラウラ達は無関係だった。

 

完全に無関係とは言えないブリタイら第67分岐艦隊やラウラ達ラプラミズ艦隊の行動の結果がボドルザーに地球殲滅の導火線に火をつけ地球殲滅の結果に至った。

 

結果、地球人の中にはゼントラーディ人に対し激しい憎悪を生み秘密結社KKKなどを母体にした地球人至上主義・反ゼントラーディ運動を生み社会問題を引き起こした。

 

ラウラは頭を鈍器で叩かれたかのような衝撃を覚えた。

注文した麻婆豆腐が美味しいと感じられなかった。

 

リオナはしばらくして仕事があると言って先に店を出た。

明らかに変わった・・・あの戦争の後のリオナは・・・

 

「カゴメ、本当なのか私達の同胞は地球人を・・・・」

 

「本当よ・・・・・私の故郷はゼントラーディ軍により今はないから。」

 

「そんな・・・・私・・・・私達は・・・・」

 

娘々を出たラウラはカゴメに質問したボドルザー基幹艦隊による地球人虐殺を・・・

 

返ってきたのはゼントラーディ軍が地球人虐殺し地球文明を殲滅した事実だった。

自分達は自らの意思にないにせよマクロス側に参戦し加担しなかったが、ゼントラーディ軍は地球人・・・ カゴメの同胞を虐殺し地球文明を殲滅した。

 

「ラウラ一人で抱え込まないでね、いつかそうなるのではと覚悟してたから。」

 

「そうは言っても・・・もう頭がぐちゃぐちゃになりそう。」

 

「それはそうよね、あの戦いは何もかもメチャメチャだった。」

 

地球人としてはASSー1が地球に落下してからいつかはそうなると覚悟をしていた。

 

巨人同士による広大な戦場と化した銀河で地球が戦火に巻き込まれ地球人は戦いの最中で滅ぶ可能性は地球統合軍時代から分かりきっていた話だ。

一兵卒の一人で命令に忠実に動いていただけのラウラに何も責任はない。

 

ラウラもまた歴史の動乱で生み出された被害者の一人に過ぎない。

ただ戦争が全てが悪かったわけではない。

 

 

 

「でもラウラ・・・・何もなかったわけじゃないわ。私達は・・本来出会うはずのない私達はこうして一緒に並んで歩きながら喋っている。」

 

「!?たしかにな・・・でも・・・・カゴメは嫌じゃないのか?」

 

「嫌じゃないわ、地球人もゼントラーディ人も何も変わんないもの。」

 

戦争が切欠でラウラとカゴメは出会う事が出来た。

 

悲惨な戦争ではあるものの、得られる物があった。

戦いを通じてゼントラーディ人は地球文化と出会い、戦争の悲惨さを学んだり生物兵器としてではなく人間として新たな人生を歩みたいと思うようになった。

 

リン・ミンメイは大きな働きをしたが、それに至るまで多くの人々が懸命に努力しボドルザー基幹艦隊決戦における絶望的な戦いに奇跡的に勝利する偉業を成し遂げている。

 

ラウラがこうして地球文化を楽しんだり、地球人であるカゴメと会話しているのは奇跡であった。

 

「なんかこうして言われるのも悪くないな。」

 

「そう?それが人間・・・・人間なのよ。」

 

「人間か・・・・・」

 

人間・・・・

 

今まで戦争や軍組織のみで生きてきたラウラからすれば新鮮だった。

 

カゴメはゼントラーディの社会にはない事をなんでも教えてくれる。

出会って日は短いが長年の戦友のように感じられ心地がよい。

 

空気と化していたミュレはラウラの背後に立ち肩を叩いた。

 

「ラウ〜ラちゃん、地球人の文化と出会ってよかっただろ。」

 

「ミュレ、上官である私にその言い方・・・」

 

「別にいいだろ、今は軍人としているわけじゃないし。」

 

以前と違って上官部下の関係でなく、まるで仲のいい友達かのような態度だった。

 

部下であるミュレの豹変にラウラは戸惑うも悪い気がしなかった。

むしろ安心を覚えるほど暖かい何かを感じた。

 

ーまだまだ立ち上がれそう。

 

ラウラはカゴメと出会ってそう考えるようになった。

メフィリアとアンジェミラと分かれトラウマ発症と言う大きなダメージを負ったけれども、地球人であるカゴメと出会って心の傷は軽減できた。

それだけではなく、前向きにこの先の将来を考えられるようになった。

 

「ラウラ、まだ点呼まで時間あるからカラオケに挑戦してみない?」

 

「カラオケ?歌って奴?私は・・・」

 

「何事も経験が必要だよ。失った分、取り戻していくよ!」

 

「いいですね・・・ラウラちゃんも楽しくやろう♪」

 

友人(戦友)ってこんなに大事な存在だったのか・・・・

ラウラは自分の事を気にかけてくれる友人達の存在が唯一無二の存在だと気がついた。

こんなに楽しい事はないと・・・

 

「彼は・・・私にとってどんな存在なんだろうね?」

 

空を見上げたラウラはふと思った。

この前出会った吉野大樹と言う男と言う存在は私にとってなんだろうって・・・

戦友と言う感情とも違う会いたいそばにいたいと言う不思議な感覚・・・

 

もしまた会える機会があればきちんとした自分の姿を見せたいラウラはそう考えていた。

 

ラウラ達3人はいろいろ話し合いながら考えながらカラオケボックスへの歩いてゆく・・

戦争とは無縁な平穏な時間を謳歌しながら・・・

 

だが、外の世界では心休まるラウラに厳しい現実を突きつけるかのように戦争は銀河各地で行われていた・・・・・暖かい感情を容赦なく踏み潰すが如く・・

 

次回 

 

第1次星間大戦勃発から12年の歳月が経った。地球人類は悲劇を乗り越え新たな歴史を構築する中、新統合軍の様々な歪んだ思惑が動く。その一方でラウラは大戦前の戦争の生き証人と出会う。

 

グレート・ウォー・メモリー

 

レクイエムの中を駆けよ!シャイアン!

 

前回

 

 

 

 

サイドオプス

 

次回

 

 

 

(作画ロボノヒトさん

(二次創作な面を含みます)

【所属】

ゼントラーディ軍

【製造】

キメリコラ第74710020692ゼントラーディ全自動兵器廠

【推進】

キメリコラ熱核コンバータ×2

【生産形態】

量産機

【全高】

16.75m

【全備重量】 

32.5t

【武装】

中口径速射インパクト・カノン×2

空対空高回転3砲身レーザーパルスガン×2

近接用超高機動ミサイルランチャー×4(携行弾数126発)

【乗員】

1名

【解説】

プロトカルチャー銀河帝国分裂戦争末期、拠点や艦隊の直衛任務にあたる独立婦人部隊用の機動兵器として開発されたバトルスーツである。

機体構造は小柄な女性に合わせて開発されており、優れた高機動性を誇る。

 

一般量産型クァドラン・ノナを運用しエースの実力を得た者に与えられる機体であり、高品質かつ高度であるが故にゼントラーディ軍全体では少数である。

 

一艦に30名以上からなるクァドラン・ロー戦隊が配備されており、直衛艦隊の切り札とも言うべき兵器であり所属隊員は各分隊(3名)で連携を行う戦術を取る。

隊員(特に隊長格)にはクァドラン・ノナに搭乗する兵士を指揮する権利を有している。

 

【バリエーション】

◆クァドラン・ノナ

直衛艦隊における空戦ポッドと並ぶ主力兵器。

新兵は基本的に搭乗する機体であり、エースの実力を得た者はそれ以上の機体を与えられる。

 

◆シグノーミュール

強力な火力を持つ支援型の兵器。

キルトラ・ケルエール級に配備されており、クァドラン・ロー戦隊の後方支援を担う。

 

◆ログレン・ロー

クァドラン・ローと並ぶバトルスーツ、火力が強力であるか故にクァドラン・ローよりも少なく一部のクァドラン・ロー戦隊の隊長として運用されているのみ。

 

◆マグゼミグ・ラフ

クァドラン・ローシリーズの上位機種であり、直衛艦隊の切り札。

遊撃隊の兵士に配備されており、数は更に少ない。

 

◆クァドラン・キルカ

クァドラン・ローシリーズの上位機種であり、最強にして最後の機体と称される。

性能面がかなり高いがそれが故に極少であり直衛艦隊に配備されているのは極稀である。

 

◆クァドラン・アルマ

直衛艦隊用のクァドランタイプ、配備されている機体は各艦隊に1機のみでありクァドラン等を始め1番数が少なく第1次星間大戦後同型機の確認がされていない。

 

他にも様々なバリエーション機が存在する

 

◆クァドラン・ローΘ

地球の技術を盛り込んで改修したクァドラン・ロー、カメラアイは剣道の面に変更されている。

改修は接近的に行われず一部の指揮官機に配備されるに留まった。

主に新統合軍の海兵隊に配備されているが、反乱兵が持ち込んだ機体が反統合勢力に流れている。

 

2031年公開のドゥーユーリメンバーラブに登場したメルトランディ軍のクァドラン・ローはクァドラン・ローΘである。

 

【結成日】

2015年2月8日

【指導者】

バラド・ガズディス✝  

オレグ・ベロウソフ✝

ブレンダ・ガルロ

【本拠地】

オリンポス山周辺地域

【前身組織】

新統合軍火星方面軍第3駐留戦闘大隊

火星海兵隊(第13海兵部隊)

反統合同盟残党組織マルス

【戦闘】

マーズウォーズ事件

【構成団体】

ゼントラーディ人

反統合同盟残党

【解説】

第1次星間大戦後の2013年から火星はHGウエルズシティの建設やサラ基地の再建が行われ太陽系における地球防衛の要として再建が行われた。

開拓民の4割は地球のゼントラーディ人差別を嫌い火星に移住したマイクローン化したゼントラーディ人や旧反統合同盟圏の住民である。

 

マイクローン化したゼントラーディ人で構成された新統合軍火星方面軍第3駐留戦闘大隊指揮官でゼントラーディ人のバラド・ガズディス大佐は再建途上の火星を制圧し新統合政府から独立し国家を建設する事を目論み、火星海兵隊のブレンダ・ガルロ中佐と反統合同盟残党組織マルスのオレグ・ベロウソフと共謀し武装蜂起を企てた。

 

決起の時に備え密かに火星独立ゼントラーディ軍を結成し、マルスが潜伏しているオリンポス山を始め各地に秘密基地を建設し戦力を整えた。

 

惑星クラストラニアの反統合ゲリラ組織.クラストラニア軍ニューナイル秘密開発基地からヴァリアブル・グラージ3機が密輸されており、エース級の実力者に配備された。

 

マーズウォーズ事件で火星独立を掲げエルダニア基地やヘラス基地にて決起し新統合軍火星方面軍サラ基地やHGウエルズシティーなどを襲撃、アルカディア平原のアルカディア基地を占領している猛威を振るった。

 

第3駐留戦闘大隊や火星海兵隊内部の非決起の兵士は監禁拘束、抵抗した者は徹底的に殺害するなど非人道的な面が見られた。

(マーズウォーズ事件後実行者は軍事裁判に掛けられ処刑されておる。)

 

新統合軍はダンシングスカルとシーアンタレスなどの特殊部隊を複数投入し、バラドやオレグを討ち取るなどマーズウォーズ事件を鎮圧したが、残存勢力はオリンポス山周辺で潜伏し、事件発生から2年経った今でも新統合軍火星方面軍と戦闘を繰り広げている。

 

この時に士官候補生として火星に留学していた吉野大樹大尉は墜落した火星独立ゼントラーディ軍のVFー1を鹵獲し華々しい戦果を挙げ火星の英雄の異名を得た。

 

【保有戦力】

◆ゼントラーディ兵器

リガード

グラージ

空戦ポッド

重攻撃機

クァドラン・ロー

クァドラン・ノナ

◆艦艇

ケアドゥル・マグドミラ級戦艦

・ヴァラル

キルトラ・ケルエール級揚陸艦

・ベレンボルト

スヴァールサラン級戦艦

・オルカ

・サブレン

◆航空戦力

・可変戦闘機

Svー51

Svー52 

VFー1バルキリー  

 

・可変攻撃機

VAー3インベーダー

ヴァリアブル・グラージ 

 

・無人機

QFー2000ゴーストゼロ

QFー3000ゴースト 

 

・通常戦闘機

MIMー31カリョービン

Fー203ドラゴンⅡ

MⅠGー29フルクラム

◆デストロイド

オクトス

シャイアン

トマホーク

ディフェンダー

スパルタン

ファランクス

モンスター  

 

◆車両

EFー88センチピード

BTRー4

M1エイブラムス

Tー72

など

 

ロシア系装備は反統合同盟残党組織マルスの装備はオリンポス山の秘密工場で建設した新造である。

 

新統合政府統治下のリンガフランカ(共通言語)は英語である。

 

地球統合政府時代から共通言語は英語の使用が推奨されており、基本的に新統合連邦国民は英語を地球語として使用している。

 

日本語 韓国語 フランス語 中国語など世界各国由来の言語は使われる事はあるが、言語を消滅させない為であり新たに加わったゼントラーディ語も同様である。

 

第1次星間大戦後は多くの言語が少数民族等を始め消滅しており、消滅危惧のある言語は複数存在している。

(作画 今日は早く寝るさん @yuki_neyuru

 

◆解説

地球統合軍創設初期から引き続き使用されている制服、西暦2025年まで使用。

地球統合軍時代から役割は一緒だが、一部が役割が変更になっている。

 

◆構成

①ジャケット

フード付きのジャケット、ラインやカラーリングで部隊や立場を表す。

 

ラインカラー

・緑色    秘書士官

・青色       基地勤務

・紫色    パイロット

・オレンジ色 艦内要員

 

ジャケットカラー

・水色 メガロード級 SDFN級ブリッジ要員

・灰色 情報戦術要員

・桃色 メガロード級 SDFN級CIA要員

 

②上着

ジャケットのラインと同じ色のライン付き、色は黄色と黒など様々

 

③スカート

タイトスカート、スカートの丈に規定はない。

動きやすいように左右にスリットが入っている。

 

パンツスタイルもあるが、基本はスカート派が多い。

 

④ストッキング・タイツ

着用が義務付けられている。

パンチラ防止の為、厚めが推奨されている。 

 

⑤制帽

尉官以上は制帽着用が義務付けられているが、勤務中は着用しない場合が多い。

パイロットは一般隊員はベレー帽を着用する事がある。

佐官クラスになると形状が異なった制服を着る事がある。

 

◆特殊部隊兵制服

(作画 今日は早く寝るさん

 

◆解説

一般兵と大きくデザインが異なった制服である。

ベレー帽と専用の制服を着るが、正装は一般兵の制服であり式典等は一般兵の制服を用いる。

 

◆制服色

上着の色は基本濃い青色である。

マクシミリアン・ジーナスはスカイブルー、ミリア・ファリーナ・ジーナスは赤色など著名な人物は独自のカラーリングの制服を着る事がある。

 

◆上半身 

男女兼用である。

上着に専用のブレザーを着用するのは男女関係ない。

 

◆下半身 

男性はズボンだが、女性はズボンの他にスカートや短パンを着る事がある。

スカートと短パンは露出を減らす為ストッキングかタイツの使用が義務付けられている。

 

 

 

第1次星間大戦

それは人類が初めて経験し人類戦争史の中で一番の悲劇を経験した戦争である。

 

リン・ミンメイによるボドル基幹艦隊決戦時の奇跡により、1ヶ月の地上戦の後.ゼントラーディ軍残留部隊との終戦協定を結ぶ事が出来た。

 

人類は厳しい状況に置かれながらも、地球統合政府暫定政府とゼントラーディ軍残留部隊と統合を行い新統合政府として人類復興の道を歩み始め人類播種計画に基づき銀河各地に超長距離移民船団や短距離移民船団などが新たなフロンティアに向けて旅立った。

 

しかし

 

それは新たな戦いの火蓋が落とされた事を意味していた。

 

平和と戦争、お互いが混じり合うゼロサム・ゲームの世界に・・・・

 

【西暦2021年2月3日】

【惑星スーシア.ニューアマゾン森林地帯】

 

AXK-1ウラルⅡと呼ばれる新統合軍デストロイド・ジャベリンのコピーデストロイドがニューアマゾン森林地帯に小銃を構え、森林地帯に潜んでいた。

所属はアレンダル人民共和国防軍、新統合政府に反発した亜プロトカルチャー星間国家の軍事組織である。

 

その隣には反統合ゲリラ組織鉄の規律所属の迷彩色のSvー52オリョールがバトロイド形態で潜伏していた。

 

「シラージ連邦軍のデストロイド部隊を確認、どうします?」

 

「まだ撃つな、引きつけて撃て!」

 

シラージ連邦軍物資輸送部隊を見つけたアレンダル人民国防軍はトリガーを構え、いつでも発砲する態勢に入った。

 

惑星スーシア

5年前の短距離移民船団による発見された地球から20光年離れた惑星である。

スーシアはスーシア人と呼ばれる原住民がおり、スーシア共和国.シラージ連邦.アレンダル人民共和国など多数の国家が存在していた。

 

2016年の短距離移民船団と接触後、スーシア共和国.などの国家は新統合政府に編入、シラージ連邦は他の友好国家と統合した上で国交樹立と共に安全保障条約締結の後同盟関係を締結し旧スーシア共和国首都レシオに自治政府首都を置いた。

 

しかし、アレンダル人民共和国は新統合政府に敵対行動を取り同盟国などと統合し新統合政府と対決姿勢を鮮明にした。

 

アレンダル人民共和国は流れ着いた反統合ゲリラ鉄の規律やブラックマーケットなどと手を組み、元からあった兵器に加えデストロイド・ジャベリンのコピー兵器ウラルⅡを主力機としブラックマーケットで入手した新統合軍兵器を運用しており新統合軍とスラージ連邦軍と衝突していた。

 

時折、シラージ連邦の輸送部隊が通るルートに潜伏し攻撃を仕掛け物資を強奪している。

 

「よしいいタイミングだこのまま撃・・・・」

 

「なんだ!?」

 

ある程度シラージ連邦共和国物資輸送部隊が通過するのを見届けたアレンダル国防軍だったが、突如2連高速砲を装備した支援型ウラルⅡ1機が破壊された。

撃墜された姿を見たアレンダル国防軍各機は反撃しようと試みるも、次から次へと破壊されていった。

 

「シラージか?新統合軍の犬か?」

 

「いや違う・・・・・アンノンだ!」

 

アレンダル国防軍と鉄の規律の可変戦闘機部隊は潜伏を解除しデストロイド部隊を殲滅した敵機を探そうとしたが、新統合軍の国籍マークのない前進翼とカナード翼のついたVFー1が単機が飛来してきた。

見た事のない畏敬の可変戦闘機に驚くも、自分達を襲った謎のバルキリーを迎撃に向かうが出てきた所を狙い撃ちにされ全滅した。

 

「僕の敵ではないなぁ。」

 

謎のバルキリーのパイロットは女性であり、新統合軍と違ったパイロットスーツを身に着けていた。

女性パイロットは撃墜され炎上するアレンダル国防軍の非正規製造のVFー1バルキリーを見て、冷めた表情を浮かべながらバトロイド形態に変形した。

 

『何をしているオクトパス、新統合軍とシラージ軍が来ているぞ。』

 

「シラージ軍?我々の取引先の味方では?」

 

『我々の任務は非正規だ!シラージおろか新統合軍に知られるわけにはいかない。』

 

「・・・・・オクトパス、ラジャー帰投する。」

 

バトロイド形態に変形し森林地帯に降り立った謎のバルキリーのパイロットは上層組織からの通信で撤退を促されました。

このパイロットもとい所属組織は新統合軍等の友軍であるが、任務が非正規の為見られてはいけないらしい。

謎のバルキリーはバトロイド形態に変形し、ハイウェイに出ると少しジャンプしてファイターに変形した。

 

「こちらガビアルリーダーからHQ、戦闘の光を確認した。」

 

『こちらHQ、何か確認できたか?』

 

「爆炎です、あちこちで反統合同盟系の兵器や我が軍の旧型が見えます。」

 

その頃、旧型のVFー1バルキリーを主力とした新統合軍とシラージ連邦軍の混成飛行隊がシラージ連邦軍輸送部隊上空に飛来した。

戦闘の光が見えたと通報を受け現地に到着すると破壊されたウラルⅡやBTRー90の無残な姿だった。

 

更に無残な姿で恨めしそうに手を伸ばす鉄の規律所属のVFー1バルキリーの残骸を発見しガビアル小隊隊員の一人は胸が締め付けられそうな思いに駆られた。

 

「こちらガビアル3、未確認機が逃走してます。」

 

「未確認機?」

 

「シルエットはVFー1・・・・しかし、前進翼にカナード翼・・・データにない機体です。」

 

ハイウェイから逃走する謎のバルキリーの姿を目撃したガビアル小隊は驚いた。

未確認機と言えども、前進翼とカナード翼を除けば普通のVFー1バルキリーであるのだが所属不明であるどころか追撃しようにも追尾が出来ない速さで逃走した。

それにアレンダル国防軍と鉄の規律のゲリラ部隊を殲滅したのは、恐らく謎のバルキリーだろうとガビアルリーダーはそう考えた。

 

敵か味方かの判別はともかく、他にゲリラ部隊がいる可能性がある為ガビアル小隊はシラージ連邦軍のVF部隊と共に現場検証を始めた。

 

「こちらオクトパス、これより帰還する。」

 

『こちらマッカレル、シークレットハンガー02に侵入されたし。』

 

「了解。」

 

現場から逃走した謎のバルキリーはシークレットハンガー02と呼ばれる秘密地下飛行場へ向かう事となった。

新統合軍やシラージ連邦、アレンダル国防軍に察知されない厳重なセキュリティで守られた地下飛行場に向かい、補給を受ける事となる。

 

「オクトパスいやセレイン・D・スターン3等特尉、無事にゼネラル・ギャラクシーにカットラスゼロのデータを送れる。」

 

「ミリア・F・ジーナス中尉の惑星エデンにおける実機のテストで十分では?」

 

「いやそれだけでは不足する事もある。スターン3尉、お前は気にせずシークレットハンガー02に戻ればいい。」

 

「・・・・了解。」

 

謎のバルキリーの名はVFー1X9カットラスゼロ。

そしてパイロットの名はゼネラル・ギャラクシーのグループ企業の民間軍事会社.ディフダに所属するセレイン・D・スターン、ゼネラル・ギャラクシーが開発中のVFー9とVFー10の為に実戦データ収集の任に就いたPMC兵である。

 

惑星エデンのニューエドワーズ基地で実施されるVFーXー10改プロトカットラスの試験バックアップの為にアレンダル国防軍や鉄の規律相手に戦闘をふっかけた。

 

見事、任務に成功し情報収集が完了しセレインの駆るカットラスゼロは新統合軍・シラージ連邦軍の防空網を掻い潜り、ディフダが所有する秘密地下飛行場シークレットハンガー02に帰還した。

 

 

【西暦2021年2月4日】

【月面クラビウス基地.月面第2総軍司令部.幕僚会議室】

 

月面クラビウス基地内にある第2総軍司令部では幕僚が集められていた。

 

先の遭遇戦で反統合系ゲリラと思わしき者に輸送中であったVFーXー8ファントムⅢ試作2号機が強奪され、巻き込まれた新統合軍艦隊の駆逐艦2隻撃沈.飛行隊壊滅、それだけでなくS.M.S艦隊壊滅と言う事態に第2総軍司令チャールズ・ブラウン大将は幕僚達に意見を求めた。

 

しかし

 

幕僚達の意見が割れた他、一部の幕僚から白川提督に対する責任問題を追求する声が一部から出るなど議論は中々進まなかった。

地球の参謀本部とブリタイら月面アポロ基地新統合宇宙軍総司令部の将官らも参加、地球とアポロ基地の将官らは白川提督を擁護しVFーXー8に対する寛大な処置をクラビウス基地の幕僚に求めた。

 

結果、VFーXー8の開発は開発者のアム・ヒタチアにより試作1号機を含め他試験機の強化改修と原型機のVFー4000シュメブルーメを改造した試作機による試験が提案され、開発継続が決定した。

 

「提督、お疲れ様でした。」

 

「私の責任問題になるのは仕方がないにせよ、画期的な対策がこうも簡単に出んとはなぁ。」

 

輸送路対策は一応護衛部隊の強化、中間地点に警備基地を建設する事が決定したが白川提督的には画期的な対策とは言えなかった。

警備基地を設置するにせよ人員不足な新統合軍の戦力を割くわけには行かないので、同盟国軍の駐留拠点にするしかない。

 

更に護衛部隊強化と言われたものの、QFー2000の発展型QFー4000リーパーが複数に追加配備されたのみである。

 

これで満足のいくと言ったら舐めているとしかない。

 

「閣下が責任取らされるならアポロ基地側もS.M.S側の代表も取るべきだと思います。」

 

「責任の押しつけ合いは良くないよ中尉、軍人たる者・・・・危機的状況には動じず冷静に対処すべきってね。」

 

メロディーは白川提督に対する責任論に対しアポロ基地側やS.M.S側の代表にも責任を取らすように主張したが、責任の押し付け合いは良くないと諭された。

白川提督的には無用な問題を引き起こしたくないと考えており、変に反論して周りからの印象を悪くして失脚するのだけはごめんだと思っていた。

 

「白川提督。お時間よろしいでしょうか?」

 

「君はアム・ヒタチア主任?」

 

「はい、提督の尽力により私が開発に携わったVFーXー8計画何とか続けられそうです。」

 

アム・ヒタチアが話しかけてきた。

 

ゼントラーディ人でありながらゼネラル・ギャラクシーに参加せず、新星インダストリーにてVF開発に携わっている女性エンジニア兼デベロッパーだ。

前歴はゼントラーディ軍ラプラミズ艦隊旗艦の通信兵であるが、VF開発にあたってVFパイロットとしての資格を有する優秀なエンジニアである。

 

先の戦闘でSDPー1スタンピードに搭乗しファントムⅢを奪還しようとしていた。

 

結果は後一歩のところで逃げられ、アムも戦闘の際軽く負傷している。

 

「ヒタチア主任、研究資材は残っている。そこまで気を病むことではないし、中止するまでもない。」

 

「しかし、奪われた事により安全保障上のリスクが・・・・」

 

「起きてしまった事は仕方がないし悔やんでも何も始まらない。今は新たな兵器を開発し失って連中に与えた物以上の結果は出さねばならん。」

 

ファントムの強奪は安全保障上にリスクがあるが、一度強奪された以上は仕方がない話であるので失った物以上の結果を今後出さなくてはいけない。

残されたファントムと原型機シュメブルーメで開発を継続し、奪われた物以上の完成品を新統合軍に納品しなければならない。

 

新星インダストリーとしても競合企業であるゼネラル・ギャラクシーのコードネーム.カットラスに遅れは取りたくない。

 

「コスト高では移民惑星の部隊には積極的に配備されないだろうな。」

 

「それは・・・・・・」

 

「移民惑星のニーズには合わないし、ゼネラル・ギャラクシーのゼントラーディ人・・アルガス・セルザー主任の優れた設計かつ低コストのVFーXー10の方がよく合う。」

 

新統合軍の本命はVFーXー10だ。

 

既に前進翼のVFー9とテーパー翼のVFー10の双子の機種が新統合軍上層部により形式番号が振られており、惑星エデン・ニューエドワーズ基地における試験が完了したら各移民惑星の防衛軍に配備される予定だ。

 

更にモンキーモデルが同盟国軍にレンドリースされ、将来的にライセンス生産を視野に入れている。

 

「提督、流石にそれは酷です。」

 

「いえ、秘書官殿・・・・事実ですから・・・・」

 

「しかし・・・・」

 

アム自身、VFーXー8に関しては自信作だがゼネラル・ギャラクシーに勝てると思ってなかった。

 

原型機であるVFー4000シュメブルーメは高性能機だがVFとしてはコストが高く、質が良くコストを安く抑える準主力機としては相応しくなかった。

開発者アムはクラビウス支社のイ・イェスルと協力し新統合軍にプレゼンし特殊部隊用の少数量産型機として採用してもらった。

 

VFーXー8は質を上げつつコストダウンに成功した自信作だ!大量生産といかなくてもある程度は地球から辺境の惑星や移民船団まで配備できるかなと思っていた。

 

現実は甘くないアルガス・セルザーのVFーXー10はとてもコストも性能も優秀で勝てなかった。

 

「ヒタチア主任、君の手腕や設計思想は悪くない。君のスタッフもな。」

 

「閣下それでは何故あのような?」

 

「私は単に事実を言ったまでだ、事実をな。それ以外でもそれ以下でもない。」

 

白川提督自身VFーXー8を嫌っているわけではない。

 

機体性能はVFーXー10より優れているし新統合軍正規部隊で積極的に使ってみたい。

だが新統合軍地方部隊が求めているのは高質低コスト機であり、高級機ではない。

一応コンペと言う方にになっているが、既に勝者はVFーXー10で決まっていた。

 

優れた機体を廃案にするのは勿体ない、使えるならば別の手で使えばいい。

白川提督は他のクラビウス基地の将官は勿論、月面アポロ基地の総司令部と地球の参謀本部に根回しをしており、追及会議におけるVFーXー8開発継続に繋げている。

 

「辺境に配備するのはVFーXー10だが、ヒタチア主任のVFーXー8は他の所で役に立ってもらう。」

 

「閣下、私のVFーXー8は制式採用されたら何処に配備するつもりですか?」

 

「地球・マクロスシティー防衛隊とアポロ基地に配備されるのは間違いないな。後は・・・」

 

「後は?」

 

「いや軍規だな、これ以上は言えない。」

 

VFーXー8がVFー8ファントムⅢとして制式採用されたら配備予定はマクロスシティーとアポロ基地の防衛隊に最優先で配備されるが、残りの配備先は教えなかった。

理由は軍規であると言ってはいるが、釈然としない。

 

(何を考えているんだろうか、不気味だな。)

 

アムは白川提督に疑念を抱いた。

正直何を考えているか分からない人間は地球人だろうと同胞だろうと信用しない。

軍規であるのならば元ゼントラーディ軍人だから理解してはいるが、完全に信じられない。

 

「提督そろそろリモートでブリタイ・クリダニク提督との会談の時間です。」

 

「そうだったな中尉、ヒタチア主任・・・早く事が済んだらアポロの家族の下に帰りなさい。お子さんも心配している。」

 

「こちらこそ、ファントムⅢ開発計画の件だけでなく家族の心配までありがとうございます。」

 

VFーXー8が開発継続出来たのは感謝している・・・でも信用出来ない。

 

開発した機体は数多くの新統合軍将兵を乗せる翼になる。

それを何に使うか明確に示せない白川秀康提督言う一人の軍人を信用してはいけない。

 

アムはゼントラーディ軍人として培ってきた感で白川提督を警戒した。

 

【西暦2021年2月4日】

【ラ・カーティア星系惑星ミレラ】 

 

 

3年前の2018年6月4日に第3次超長距離移民船団メガロード02により発見された入植可能惑星ミレラは新統合軍による入植作業が行われていた。

メガロード02は入植住民をミレラに残すと衛星軌道上に登り、新統合軍ミレラ自治防衛艦隊の拠点アースガルドⅢとして機能するようになった。

 

地球人類の新たな活動の拠点として機能する事になった惑星ミレラだが、必ずしも喜ばしいばかりの話ばかりではなかった。

 

「こちらシタープ・アクーラよりゲストへ着陸を許可する。」

 

「エスケスタ、貴官らの歓迎を心から喜ぼう。」

 

惑星ミレラの新統合軍の支配が及んでいない惑星南西の無人島。

 

全体的がジャングルで覆われており、各種ミサイルランチャーや対空ガトリング砲が各所に配備されており旧反統合同盟のデストロイド・オクトスやデストロイド・シャイアンが潜伏していた。

 

地下格納庫にはSvー51と発展型のSvー52が配備されており、新統合軍のVFー1A初期型や現役主力機のVFー4ライトニングⅢが少数精鋭も駐機していた。

 

ここはかつての複合企業体ルミナスグループの私設軍隊イルミナシオンの秘密基地が置かれていた。

正確に言えばメガロード02船団に潜伏し潜んでいたその残党である。

 

「ミスター・ダルダントン、此度の来訪心より感謝します。」

 

「カメラード・ビアンキ、こちらこそ迎え入れて感謝する。」

 

イルミナシオン残党の秘密基地の滑走路に着陸したのはゲラム・ダルダントンとその愛機であるヴァリアブル・グラージとその護衛の2機のVAー3インベーダーであった。

ゲラムを出迎えたのはイルミナシオン残党を率いる元地球統合軍大佐であるベニート・ビアンキと反統合同盟のサイード・ジャッラーグだ。

 

「今回は商談だが、大丈夫か?今後新統合軍が惑星の開拓進めればいずれはこの島も開発された基地が露見するぞ。」

 

「それは問題なくミスター、我々は表向きは民間企業でありこの島は弊社ファントムペインの所有する島であるので手出しできません。」

 

「そうか。」  

 

惑星ミレラはまだ開発途上惑星であり、新統合軍基地と1都市しか開発されていない。

だが何十年も経てば惑星ミレラの開発が進み露見する事になる可能性があるが、イルミナシオン残党は株式会社ファントムペインとして表向きは活動しこの島は法人的に所有する財産として扱われるため自治政府は手出しが出来ない。

 

ゲラムはベニートらと共に会議室に入りアタッシュケースからUSBメモリーを取り出した。

 

「拝見させてもらいます。」

 

「中身が確認できたら金を用意しよう。」

 

USBメモリーは近くにいた若い女性兵に手渡され、パソコンで中身の確認が行われた。

中身が確認出来たら代金を用意するとベニートはゲラムに言った。

 

若い女性兵に渡されたUSBメモリーの情報開示は慎重に執り行われた。

 

パソコンにはレミアが強奪したVFーXー8ファントムⅢの詳細なデータが表示された。

表示されたデータを見てベニートとサイードは腰が抜ける程驚いた。

 

「VFーXー8ですか、中々魅力的なスペックですね。」

 

「正確に言えば旧仕様だ!強奪した事で正規のファントムⅢは再調整され、最終的には別物になりますがね。」

 

「それでもだ、これは中々のデータだ。」

 

強奪したVFーXー8はゲラムの予想では開発継続した場合、奪われた機体と同じスペックではなく一部機能を変更し性能向上するだろうと考えていた。

現に新統合軍はVFーXー8開発計画継続する際にVFー4000シュメブルーメを改造した物をベースにした試験機による試験再開を決定している。

 

「ミスターダルダントン、所定の額を指定の口座に振り込んだ。ネットで確認してもらいたい。」

 

「物分かりがいいな、それと渡したデータでスピンオフ機作れるか?」

 

「あまり生産は大量に出来んが・・・・開発班ならできる・・・」

 

取引は順調に進み、ゲラムの望む形の展開になりつつあった。

 

現金の事よりもファントムⅢのデータを基にリバースエンジニアリングして開発したスピンオフ機が開発が出来る事はどんなに大金を積まれるより大成果であった。

オリジナルよりも性能は落ちていいが、コスト面を下げれば新統合軍に対抗できる。

 

株式会社ファントムペインに開発させ、完成した実機を購入し各生産拠点にて生産しブラックマーケットで反統合勢力に販売する。

 

反統合勢力の指揮官機として各地の戦線に投入し、新統合軍と戦う。

自分の開発した兵器で殺される新統合軍兵士の顔を想像しゲラムはニヤッと笑った。

 

「ボス、我々の口座に予定の額が振り込まれました。」

 

「そうか・・・・カメラード・ビアンキ、今回もいい取引をさせてもらった。」

 

「うむ、後・・・スピンオフ機に関しては我々で開発し数機購入してくれ。」

 

「約束しよう。」

 

着金の確認とファントムⅢのスピンオフ機の開発後の量産機の購入の約束を取り付け部下2名引き連れ愛機のヴァリアブル・グラージとその護衛機インベーダーが駐機している秘密滑走路に向かった。

 

「地球人社会は面白いな、ゼントラーディの社会よりも面白い。」

 

「はぁ?」

 

「ゼントラーディの戦争は攻撃破壊と単調だが、地球は謀略交渉等々面白い要素がある。分からんか?」

 

「いえ将官は・・・・」

 

ゲラムは地球人社会を楽しんでいた・・・・ゼントラーディ社会よりも面白いと・・

 

ゼントラーディ軍は戦術戦略はあれど固定化された物を採用されているに過ぎず、基本は攻撃と殺戮破壊の連鎖と言う単調の戦い方しか出来ない。

地球はゼントラーディとは違って軍隊の上に政治がありその上に国家がある、それに加えた軍事関連の企業が存在しており単に動いているのではなく様々な思惑が蠢いている。

それだけじゃない必要な資源や土地や技術など使うだけじゃない、持てる者が持たない者に対して取引を持ちかけたり、力のある持たない者が力のない持てる者から奪うなど一筋縄ではいかない。

 

それだけじゃない、政治が原因で新統合政府に対し反旗を翻し抗争を繰り広げる者がいる。

 

事実上のアメリカによる地球統合政府構想に反発し、ロシア(+ワルシャワ条約機構)と中国などの反統合同盟の流れを組む各反統合勢力。

先の大戦で帰順したが新統合政府の方針に反発し決起したゼントラーディ系反統合勢力。

など様々な理由で新統合政府に反乱を起こし各地で戦闘を繰り広げている。

 

それだけじゃない地球領域内でも各政治団体や反社会勢力も抗争や暗躍だってしている。

 

「私は反統合勢力だけでなく新統合軍や各星間国家、各国に戦乱の火種を産みこむ。」

 

「僭越ながら戦乱の火種を産みこむ理由は何ですか?」

 

「簡単だ・・・・・ゼントラーディ人が望む・・・・戦乱の宇宙だ!」

 

だからこそ、戦乱に満ちたこの世界を面白おかしく描いてみようと考えた。

戦闘種族ゼントラーディ人が望む面白い戦いの世界と言う混迷の世を・・・・

 

地球人類はまだまだ先の大戦の傷は癒えてはいない。

当然、やりすぎる必要はない。

超長距離移民船団による人類播種計画が進めばチャンスの可能性も広まる。

 

「戦乱の宇宙ですか?」

 

「新統合政府打倒は至難の技だ・・・簡単には反統合勢力や弱小反統合星間国家では倒せん。だから我々が裏から働き連中に力を与えたり、新統合軍には造反部隊を促す。」

 

「上手く行くのでしょうか?」

 

「簡単とはいかないが・・・・・面白い結果は確実になるだろうな。」

 

反統合勢力や反統合国家が新統合政府打倒出来るとは思ってもいない。

新統合軍内部から反乱や独立運動が成功する事も思ってもいない。

 

求めているのは戦乱を紙に火を付けるが如く燃え広がる事・・・・・

 

簡単に新統合軍に潰されない用に兵器や物質を売り、お互い殺し合ってもらう。

ゲラムは笑みを浮かべたままヴァリアブル・グラージに乗り私用宇宙船のある港へ向かった。

 

【西暦2021年2月4日】

【月面クラビウス基地官舎・ラウラ・ベルタリア邸】

 

 

自室謹慎をしているラウラだが、世の中いろいろ動いている事を知らない。

政治やブラックマーケットなどいろんな動きがある中、ラウラは勉強一択だった。

もはやガリ勉、地球のいろんな事を学んでいる。

 

処分は蟄居処分であるが、機種転換センターへの入所が可能なのは不幸中の幸いだった。

 

『昨日未明、惑星スーシアニューアマゾン森林地帯にて戦闘が発生しました。シラーズ連邦防衛省によりますと、現地にはアレンダル国防軍・・・・』

 

『アレンダル国防省はシラーズ防衛省の発表に対し、破壊されたのは正規軍から脱走した・・・・・ 』

 

テレビから映し出されるニュース番組の戦争の報道を見て地球の戦争は違うなと感じた。

 

ゼントラーディ軍時代はただ上から命令されて出撃し戦ってきた。

命令され出撃して戦場に出て戦うそれが当然だと思っていた。

 

地球人は違う、軍隊が戦場に出て戦うのが当然であるが上位組織に国家が存在する。

国家には議会とそれを構成する政治家、その中枢たる行政府が存在し軍隊は国防総省麾下の組織であり軍隊しか存在しないゼントラーディとは大違いだ。

 

軍隊は政治家の指揮官・統制下にあり、最高司令官が統合政府大統領でその副官たる存在が国防総省長官であり新統合軍参謀本部長は更に下の地位にあると言う。

更に軍の法律や予算管理も軍人ではない職員が担当する。

上記の文民統制・文官統制を総じてシビリアンコントロールと言うらしいが、ゼントラーディ人であるラウラからすれば理解しがたい話だった。

 

「地球人はかなり面倒くさい体制でやってんだな。」

 

地球人はいろいろと面倒くさい体制だ。

文民統制の文民たる政治家は選挙で有権者から多くの票を得た制度で入れ替わる。

多くの議席を得て政権与党と成し、大統領選で与党側の候補を当確させる事が出来る。

 

選挙・・・司法・立法・行政・・・・まだまだ分からん。

 

「そう言えばあいつの言葉が今になって気になり始めたな。暇だし買い物に行くか..」

 

ラウラはふと大樹の言葉が気になったが、勉強のし過ぎて気分がおかしくなったので買い物をして気分転換でもしようと考えた。

蟄居処分と言っても形だけであり、部屋周辺の娯楽施設や飲食店など利用しても問題ない。

 

私服に着替えるとエレベーターから降りて管理人に出かけると伝え外に出かけた。

 

「買い物行くより酒でも飲んで気分転換の方が・・・」

 

「あら見かけないゼントラーディ人、珍しいわね。」

 

官舎から出るとゼントランらしくない髪型のゼントラーディ人が話しかけてきた。

緑色のショートヘアだが横髪の長い可愛らしい性格そうな感じの奴だ。

 

特に感じるのは絵理のように文化慣れした佇まいだった。

 

「つい最近、海兵隊に転属した者で・・・・・」

 

「名前はラウラ・ベルタリア曹長・・・・年齢・・22・・・5月に23かぁ。」

 

「勝手に何を!?ゼントラーディ軍の出身だったら・・・・」

 

「すいません、一応気になったから。」

 

性格は人懐っこくラウラが首にかけていたカードホルダーのIDカードを見て自身のプロフィールを復唱、おまけに年齢まで言うデリカシーの無さがあった。

何処かメフィリアと似ている、あの時の戦いの前ミンメイ人形を何処からか拾ってきては自慢し楽しんでいた姿と目の前のゼントラーディ人と重なる。

 

「ごめん自己紹介しなきゃね、名乗るなら自分からで・・・私はロザ・べサーズ准尉、VFパイロットをしているわ。」

 

「准尉?嘘・・・・・」

 

「活躍の場に恵まれてなかったので万年准尉ですけれども。」

 

「それでも准尉は凄いですよ、私なんて今だに曹長ですから。」

 

人懐っこいゼントラーディ人はロザ・べサーズと名乗った。

階級は准尉、年齢は18歳と言うラウラよりも2ターム後に製造されたゼントランだ。

話せばロザがマイクローン化したのは終戦間もない頃であり、地球の文化に憧れたのが理由との事。

 

ただマイクローン化したとは言えやれる事がない為、新統合軍に入隊しVFパイロットとしての訓練を受け長らく月面防衛の任に就くケロヨン中隊(航空自衛隊第301飛行隊)の一員として防宙任務に就いていたと言う。

万年准尉とは言え実力は悪くなく、撃墜数は32機とまぁまぁ悪くはない。

 

「ベルタリア曹長は無断使用して蟄居中と?」

 

「不幸中の幸い蟄居だけで済んで今は勉学に励んでいるわけでして。」

 

話し始めて結構馬が合った。

 

性格が穏やかな為かゼントラーディ軍女性部隊(メルトランディ)特有の派閥意識が無く、話しやすくまるでアンジェミラやメフィリアと喋っているようだ。

これから出かけると言うのに結構長々と話してしまった。

 

「ヤバっ結構話してしまった。これから出かけるのに。」

 

「ごめんラウラ、ご近所さんだからまた会いましょうね。さよなら」

 

「うん、休日重なったら文化の事教えてね。さよなら・・・・」

 

予想以上に話してしまった。

 

お互い予定があるのでこ解散したが、いつの間にか呼び名が下の名前になっていた。

この時点でロザの方が上官であるが、2人は気にせず話し合っていたので仲は深まっているようだ。

 

ラウラと別れたロザは自室に入るとスマホに電話がかかってきた。

 

「べサーズです・・・・・・・あっ大尉・・・・」

 

『ロザ・べサーズ准尉、休暇はどうだ?』

 

「はい問題なく、結構面白い隣人さんと出会ったり有意義に過ごせました。」

 

電話の相手である大尉に面白い人物に出会えたと話した。

まるで古い戦友に出会えたかのような懐かしさを覚えながら・・・・

 

電話越しの大尉は何かを察したのか、好意的な反応を示していた。

 

『べサーズ准尉、そろそろ俺は神楽とミーティングがあるから失礼する。』

 

「ハッではまた明日アルタミラに乗艦したらよろしくお願いします。吉野大尉。」

 

『分かった。』

 

ロザはそう言って携帯を置いた。

 

彼女もまた白川提督と茂人が集めているアンサーズ中隊の隊員の一人であった。

ケロヨン中隊から転属し艦内の自室や官舎の引っ越しを済ませる為、数日休んでいた。

携帯を置いたロザはさっきの楽しげな出来事を思い出すとふふと笑った。

 

【クラビウス基地】

【ラウラの官舎の近くの軍人バー.ヘッド・ショット】

 

 

バーで呑んでいた・・・・特に理由もない。

取り敢えず酒が飲みたかったからルナビールの瓶を注文し、チーズを肴に呑んでいた。

 

地球の酒はかなり美味い。

ゼントラーディ軍にも酒はあるが、単に酔うだけのアルコールである。

クローン兵士なので最初から大人として産まれたラウラは何年も酒を飲んではいるが、地球の酒は多種多様であり味わいも香りもいい。

 

食文化も優れているので付け合わせのつまみも美味い。

 

「あらラウラ、こんな所で一人飲み?明日から入所式なのに?」

 

「別にいいでしょカゴメ、飲み過ぎて明日出られないなんて失敗はしたくない。」

 

「安心して明日迎えに行く時、拳銃で殴る・・・・」

 

「痛そうだからやめて・・・」

 

一人で飲んでいると私服姿のカゴメが隣に座った。

 

私服姿のカゴメは何度も見ているが、本当に魅力的に見える。

ミニのタイトスカートに黒ストッキングにブーツ、上は革ジャンにチューブトップ。

普段は真面目な雰囲気であるカゴメだが、今はギャルファッションだ。

 

「カゴメ、その娘は?」

 

「ラウラよ・・・・・御本人」

 

「ラウラ・ベルタリア・・・・なるほど」

 

カゴメの隣に栗髪のポニーテールの美女がいた。

 

短パンにニーソ、Tシャツとカゴメに比べて地味だがシンプルで悪くない。

知的そうな雰囲気が漂っているのでかなり高い地位のいる軍人だと察した。

 

「カゴメ、この方はどなたでしょう?」

 

「この人は・・・友人の」

 

「私はメロディー・・・メロディーって呼んで。階級は中尉、タメで大丈夫です。」

 

ラウラは珍しく敬語みたいな感じでカゴメに質問した。

 

カゴメは友人の・・と言いかけた所で栗髪の美女が割り込み自らメロディーと名乗った。

栗髪の美女の正体は白川提督の秘書士官のメロディー・ギンヌメール中尉である。

そしてカゴメの士官学校時代の同期兼親友であり、首席次席の座を争ったライバルである。

 

「苗字も言わないなんて変わってるね。」

 

「立場があってここでは言わない約束なのよ、他・・・誰が見ているか分からないし。」

 

メロディーは白川提督の秘書士官であり、ミステリアスなイメージを持っている。

プライベートになると20歳の女性らしいファッションを好んでいる。

 

イメージがある為か他の同僚に知られないよう、プライベートでは普段の自分に見えないように違う化粧したりピアス付けたり違う髪型にしている。

 

これを知っているのはカゴメと本の数人の親友だけだ。

 

ラウラは変な女性だなと思いつつ、カゴメ達と会話しながら飲んだ。

 

「ご馳走様、私先に帰ります。」

 

「ラウラ、引き際早いわね。」

 

「これ以上飲んだら部屋に帰れなくなったり初日で失敗しそうだから。ではまた明日〜」

 

ラウラはカゴメとメロディーと30分話しながら飲んだ後、店を出る事にした。

 

飲み過ぎたら明日の入所式の出迎えの際に本気でカゴメに拳銃で殴られてしまう。

拳銃で殴られるのが嫌なので迎えに来る前に整理整頓などきっちりやろうと考えていた。

帰る道中上を見上げると、夜空の先に薄っすら天井が見えた。

 

 

「メフィリアもアンジェミラも無事かな・・・・・シュリは少し動けば出会いそうだけど。」

 

薄っすら見える天井の先にはメフィリアやアンジェミラが今も海兵隊員として戦っている。

 

シュリなどの生き残った戦友たちもまた何処かで戦っている。

平和な状態のクラビウス基地とその地下都市クラビウスシティーではあるが、外は何処も少し歩けば戦場と心休まる場もない戦乱の世である。

 

入所式を終え3カ月訓練終え実戦部隊に配属されれば戦乱の世に戻る。

 

「リン・ミンメイと言う存在がいながら文化がありながら何故、地球人は今だに戦い続けるんだろうね?」

 

先の大戦でアドクラス艦隊の兵士達がリン・ミンメイと言う地球人のアイドルに惚れ込みそれが切欠で、第1次星間大戦における地球統合軍の辛勝と言う奇跡の勝利に終わった。

 

それでも人は今もまた戦い続けている。

 

ゼントラーディ軍と監察軍の基幹艦隊そして他の基幹艦隊に合流出来なかったはぐれゼントラーディは仕方がないにせよ、地球人同士は平然と殺し合う。

 

文化を持てば戦わなくなり滅ぶとプロトカルチャーからの言い伝えがあった。

でも現実は・・・・・・・

 

『新統合軍南米軍管区の発表によりますと、自由アルゼンチン軍の拠点があると思われるサルタ地区に対し第7戦略攻撃飛行隊による空爆攻撃を実施しました。』

 

「こればっかりか・・・・地球人もゼントラーディ人と違って文化はあれど、基本は変わらないんだな。」

 

文化を持っているだけで地球人とゼントラーディ人は変わらない。

どんなに平和を願っても、どんなに戦争を嫌だと思っても人は戦争を捨てられない。

リン・ミンメイと言う歌の奇跡はあるかもしれないでも歌では戦争を消せない。

 

地球人類はなんて罪な生き物なのだろうか?

 

ラウラは改めて地球人の戦争の歴史を学ぶべく自室に戻り勉強しようと考えた。

 

歴史は重なりそうになくても、以外な所で重なっていく・・・・

歴史の損得は歴史の様々な重ね合いにより、変わってゆく・・

 

自分の目には入らず自分の耳にも入らず無関係そうに見えても、何処かで繋がっている。

複数の思惑や複数の出来事が混ざり合い、時に利を得て時に損を得て総じてゼロになる。

 

それがゼロサム・ゲーム・・・

 

勝利者無き果てし無き第2次星間大戦・・・・・

それは後に起るバロータ戦役やバジュラ戦役等を含む壮大な銀河戦争史のプロローグに過ぎなかった。

 

今日の勝者が明日の敗者になり、今日の敗者が明日の敗者になる。

誰も得しているようで得しない戦争・・・ゼロサム・ゲーム・ ウォーズ・・・

 

ラウラそしてその周囲はこれから過酷な歴史の波に飲み込まれようとしていた。

 

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