【西暦2021年1月30日】
【月面.東の海周辺中域】
スヴァールバルサラン級2隻からなるはぐれゼントラーディ軍は艦載機計54機からなる大部隊を展開させ、ラウラ達の艦隊に迫った。
VFー4ライトニングⅢからなる護衛部隊であるマナット中隊はレーダーの反応のあった方向へ迎撃に向かっていき、戦闘状態に入った。
レフトウィッチは露天繋止してあったデストロイド・ドーントレスを直掩として出撃させ、護衛艦シンプソンとハシダテからもデストロイド・ドーントレス部隊が出撃していった。
S.M.Sもマヤン級輸送艦アブサランを守るようにオーベルト級宇宙駆逐艦ヒュドラとガリアが前に出て、護衛のVFー1A初期型2個小隊が展開しアブサランの甲板に新星インダストリーの警備隊のデストロイド・シャイアンが防空任務に就いた。
更に砲台代わりにプロトタイプ・モンスター3機が各所に展開し、スヴァール・サラン級に備え砲撃態勢を取りつつアポロ基地やクラビウス基地そして各地の新統合軍部隊にSOS信号を出した。
「カゴメ!この艦に私が乗れる機体はないの?」
「ラウラ、まさか出撃するつもり?」
「戦場で死ぬのは誉れだけど、こんな死に方誉れじゃない!この艦に出せる機体があれば使わせて!」
ラウラはカゴメに出せる機体がないか確認した。
つい最近まで死に場所を求め戦い続けてきたラウラだったが、機体に乗らず軍艦の中で何も出来ないまま死ぬ事だけは絶対に嫌だった。
「冗談言わないで!連絡機にVFー1Dはあるけど、操縦の事知らないでしょ?」
「ゼントラーディ語のマニュアルなるものがあれば出来る!」
「それでもダメなものはダメ!」
一応レフトウィッチには連絡機にVFー1Dバルキリーが配備されており、自衛用にミサイルやガンポッドなど戦闘機に相応しい最低限の装備が備わっていた。
だが、ラウラはVFに一度も乗った事がなく操縦方法が分からない。
カゴメは法律面や技量面を考慮し必死に止めに入った。
「それでも私は行く!」
「ちょっと待ってラウラ!」
ゼントラーディ人としての血からなのか、誇りからなのかカゴメを振り切り更衣室へ向かった。
ラウラは女性更衣室に入ると、近くにあったパイロットスーツを強奪した。
自分の身長に似た物をたまたま見つけ出し、制服を脱いでパイロットスーツに着替えた。
ファスナーを締めようとしたところ、カゴメがドアを開けた。
「勝手に出撃は重罪よ!何を考えているの!?」
「カゴメはこのまま黙って死ねとでも言うの?」
「死ぬと決まったわけじゃない!」
「死なないと決まったわけじゃないか!私は戦わずに死ぬのは嫌なのよ!」
このまま出撃すればラウラは機体強奪による重罪であり、VFパイロットになるどころか警務隊留置所生活を送る事になってしまう。
最悪な場合、軍籍剥奪により職を失う事になる。
「いい加減にして!」
ラウラはカゴメに思いっきり平手でビンタされた。
「どう見ても死に急いでいるようにしか見えないわ。軍籍剥奪により職を失うのはまだいい、でも操縦方法を知らないでしょ!」
「私はゼントラーディ軍のエースだったんだ!なんとか・・・・・」
「ふざけないで!いきなりやって出来る程甘くないわ!」
出会って間もないが、カゴメがここまで怒ったのを初めて見た。
泣き出しそうなのを我慢して、自分自身の身を案じて怒っているのが言葉から伝わってくる。
自分の為に心配してくれる人は初めてだった。
製造されてきて真剣に心配してくれる人は今まで、誰もいなかった。
戦友と言えどもそこまで心配してくれる事はなかった。
だが
「ごめん、カゴメ・・・・甘くないのは分かっている。」
「なら・・・・」
「でも、それでも戦いたい。軍人として何をするか見つけるために・・・」
戦わければここまで親身になって心配してくれるカゴメを死なす事になる。
確かに甘いかもしれない、それでも戦わければ自分の命どころか多くの人を失う。
同じ志の者から何から全部、それだけは絶対に嫌だ。
今のラウラが述べた本音は嘘偽りもない。
「カゴメ?」
「VFー1Dは複座型、私も乗ってサポートするから乗りなさい。」
「それじゃ重罪に・・・・」
「別にいいわ、私も黙って貴女を死なせない。」
ラウラの本音を聞いたカゴメは少し諦めた表情を述べると制服を脱ぎ始め、下着姿になるとロッカーから自分のサイズに合ったパイロットスーツを探し着始めた。
操縦方法が分からないラウラを自身も乗ってサポートして支えるしかない。
当然、パイロットじゃないかつ重罪のでラウラから心配されるが覚悟を決めている。
パイロットスーツに着替え終わるとラウラとカゴメはVFー1Dのある場所に向かった。
戦闘は一進一退の攻防を繰り広げていた。
マナット中隊とS.M.Sのオルペウス小隊とベロボーグ小隊が前衛、艦隊直掩にデストロイド・ドーントレスとVFー1Dの混成部隊が務めていた。
数の上ではゼントラーディ軍部隊が優勢であったが、新統合軍とS.M.Sの連合軍は機体性能や練度が高い為善戦していた。
ただ・・・・
「反応弾がないから敵艦を仕留められない!」
「艦載機を抑えたとしても艦を沈められなければ意味がないぞ!」
「艦砲射撃を喰らえば我が艦隊は・・・」
反応弾を装備してないが故にスヴァール・サラン級を撃沈するには火力が足りない。
そればかりか、艦砲射撃も強力でありオーベルト級ヒュドラが蜂の巣になり撃沈されていた。
僚艦ガリアが撃沈されたヒュドラの穴を埋めるべくアブサランの盾となりながら、奮戦するもスヴァール・サラン級の圧倒的火力に押され気味だ。
「レフトウィッチを沈めさせるな!送り狼を我が艦の意地に賭けて通すな!」
護衛艦オーベルト級ハシダテとシンプソンはラウラ達を乗せたレフトウィッチを守るように必死に防戦を展開していた。
直掩のドーントレスと共に防戦した結果、レフトウィッチは無傷であった反面ハシダテとシンプソンはボロボロであった。
「うわぁぁぁぁぁ」
直掩としてオーベルト級各艦から発進したVFー1Dの1機が艦砲射撃に巻き込まれ爆散した。
爆発の余波はハシダテに影響を与え対空防御が鈍った。
VFー1Dとドーントレスが必死で防御に当たるも損害が増える一方だ。
「ロイエンタール少佐、どうなりますかね?」
「相手は死兵と化してるから生きて帰れるのは五分五分だな。」
レフトウィッチのブリッジにて戦闘の様子を見ていたロイエンタールは冷静に今の戦場の状況を分析していた。
善戦しているとは言え既に帰る場所を失った事により死兵となっており戦意が高いため、最終的にどんな結末を辿るのか分からない。
「ん?我が艦のVFー1Dが出撃してないがどうした?」
「おかしいですね、まだ係留されたままだ・・・・・」
レフトウィッチに係留されたVFー1Dが動いてない。
ブリッジ要員はVFー1Dのパイロットが被弾した際に戦死した事に気がついておらず、戦闘中なのに動かない事に疑問を感じていた。
パイロットが戦死している為、VFー1Dは当然動かない。
オペレーターがVFー1Dに向け呼びかけようとしたが、邪魔が入った。
「艦長、北東よりIFFのない3機の機影確認!」
「はぐれゼントラーディか・・・・」
「これは・・・・Svー51Ωです!更にアタッカー2機!」
レミア率いる反統合ゲリラの航空戦隊が戦場に乱入してきた。
反統合ゲリラ航空戦隊は新統合軍とゼントラーディ軍.両軍に攻撃を仕掛け次々と撃破。
攻撃目標であるアブサランに向け突撃した。
指揮官であるレミアの駆るSvー51ΩはS.M.Sオルペウス小隊を殲滅し、オーベルト級ガリアの艦橋の前に出てガンポッドを構えた。
「おぉぉぉ」
ガンポッドでガリアのブリッジを破壊し、エンジンを破壊。
コントロールを失ったガリアは月面の重力に引かれ、墜落し爆散した。
レミアはそのまま近くにいたリガードやヌージャデル・ガーを撃墜し、アブサランへ向かいドーントレス部隊が守る防衛線の突破を試みた。
「ラウラ、私が後部座席から操縦方法教えるからその通りに動いていい?」
「うん、死にたくない死なせたくないからねしっかりやるわ。」
レフトウィッチの甲板ではラウラとカゴメが係留されているVFー1Dに乗り込もうとしていた。
不用心にもコックピットが開いており、いつでも出撃が可能であった。
コックピットに乗り込んだラウラはクァドラン・ローと違う操縦系に驚きつつ、まるで子供であるかのように胸がときめいた。
「これがマイクローンの兵器なのか・・・・」
「こちらグリップ1、302番機何故発艦・・・・えっ!?」
「あのぉ・・・・・ごめん!」
胸がときめいていたのも束の間、ブリッジから発艦の催促の通信が入り背筋が凍りついた。
今やっている事は正規の軍事行動ではなく、違法行為。
背筋の凍りついたラウラは強引に操縦桿を握り係留ロープを引きちぎりレフトウィッチから離れた。
「艦長、302番機強奪されました!」
「なんだと!?」
「我が艦から離れます!」
レフトウィッチから離れたラウラ達は強奪者扱いをされた。
咄嗟の行動とは言えVFー1Dに勝手に乗り込んでいる時点で軍規違反を犯しており、主犯であるラウラは勿論共犯であるカゴメも処罰の対象だ。
VFー1Dはレフトウィッチから離れつつ戦場へ向かい友軍部隊と合流しようとしていた。
「こちらグリップ1から302、直ちに帰還せよ!貴官の行為は立派な軍規違反である!」
「302からグリップ1、クラビウス基地のカゴメ・バッカニア少尉です。今訳あって出撃してます!」
レフトウィッチから帰還命令が出た。
いくら戦闘中とは言え、軍規違反を見逃すわけにはいかない。
オペレーターからの帰還の催促にカゴメは説明しようと返答した。
今更説明しても無駄だがしないよりかはマシそう判断したが、オペレーターからある質問が来て青ざめた。
「正規のパイロット・・・ホルデ少尉はどうしたんですか?」
「それは・・・・・」
本来のパイロットであるホルデ少尉の事を聞かれた。
当然、カゴメはホルデ少尉の事を知らないので不味いと言う表情を浮かべ、ラウラは戦死したパイロットスーツ姿の兵士の事を思い出した。
目の前で死んだあいつがホルデ・・・・本来のパイロットか・・・
今乗っているVFー1Dは本来はホルデが乗るはずだった。
だがそのホルデはもういない。
「ホルデと言う奴は私の目の前で死んだ・・・・以上」
「それはどう言う意味ですか?302番機?302番機?」
ラウラは素直にホルデが死んだと答え、通信を無理やり切った。
死んでしまった以上、どうしようもないこれ以上の説明は必要ない。
説明したところで何も変わらないし、意味がない。
「艦長・・・ダメです・・・302戻りません・・・・どうします?」
「撃墜しろ!」
対応が悪かった。
今のラウラの一連の対応は艦長以下、レフトウィッチ乗員に不信感を抱かせ脱走兵として各部隊に向け撃墜命令を下そうとしていた。
ホルデが死んだと言うのはVFー1Dを奪うために殺害した。
ラウラは反統合系ゲリラのスパイで、カゴメは共犯であると。
艦長は部隊にラウラ撃墜命令を出そうとしたが・・・・
「いや待て!」
「ロイエンタール少佐・・・・」
「今は戦力がいる。それに302が今まで出撃してないのはホルデ少尉が艦が被弾した際に戦死したんだろう。ホルデ少尉亡き今、あの無断出撃者がいる・・・・」
「しかし・・・・」
「今の行為を不問にするのはどうかと言いたいのだろう?愚か者め、今はこの状況をどう切り抜けるかが重要だ!軍法会議に処するかは今考える事ではない。」
戦闘中でありレフトウィッチもいつ撃沈されるか分からない状況にある中で、様子を見ていたロイエンタールが異議を唱えた。
ここでレフトウィッチを撃沈されたらVFパイロットとなる人材を多く喪失する事になる。
艦長はここで不問にするのはどうかと反論しようとするも、ロイエンタールは正論を唱え黙らせた。
「また通信・・・・」
「ラウラ・・・・出なさい、流石にまずいわ。」
「うん・・・・・・」
友軍と合流を目指すラウラの302番機に再び通信が入った。
既にレフトウィッチに不味い印象を与えている為これ以上自分の立場を危うくするわけにはいかない。
通信を無視するよりも素直に応対し、自分達は仕方がない事情で出撃している事を伝える必要がある。
カゴメの深刻そうな声を聞いてラウラはあっさり命令に従った。
先ほどの対応で自身の夢を断つような真似をしており、カゴメからきつい言葉で叱られた。
相当堪えており、いつもの勝気な性格も鳴りを潜めていた。
ラウラは応答するため通信モニターをONにした。
「はいこちら302・・・・・」
「302番機・・・・ラウラ・ベルタリア曹長は君か?」
「はい・・・・」
「私はクラビウス基地人事局ヴィルフリート・フォン・ロイエンタール少佐だ!君に命令を出す。」
「今回の件は不問にする、曹長は我が艦隊の防衛任務に当たれ!」
「でも私達は軍規に違反しているんですよ?」
「今は戦場だ・・・今気にしている場合ではない。」
通信の内容は思っていた物とは程遠かった。
VFー1D無断使用の件を不問とし艦隊の防衛任務に従事せよと。
命令違反を犯し重大な処罰が下されると思っていたラウラとカゴメは驚いた。
無断出撃による脱走の罪で処罰されるのが当然なのに不問にする。
なんて寛大な処置だと思った。
ラウラは軍規に違反しているので寛大な処置を丁寧に断ろうとしたが、今は戦場でいつどうなるか分からない環境なので気にするなとロイエンタールに言われた。
「アンノントループ・・・・シンプソンに目掛けて接近中!」
「援護に行ける機はないのか?」
「ダメです・・・・・ドーントレス隊も過半数やられており防衛網は機能しません。」
直後、Svー51編隊が護衛艦シンプソンに向けて攻撃を仕掛けようする報告が入った。
ハシダテは数分前に満身創痍になり戦線離脱中であり、頼みのVー1D部隊全機喪失・ドーントレス隊も過半数が喪失し防衛網はほぼ機能しておらず残存機はレフトウィッチ防衛に専念しかできないありさまだ。
マナット中隊はゼントラーディ軍艦載機部隊を抑えるのがやっとどころが徐々に追い込まれており、部隊の4分の1が戦闘不能に陥りいつ壊滅してもおかしくない状況だ。
S.M.Sの護衛飛行隊は既に全機喪失、全員戦死と艦隊はもう風前の灯火と化した。
「ベルタリア曹長、お前しかおらん。シンプソンを防衛しろ!」
「拒否権はないんですよね?」
「今のお前には・・・な。」
「エスケスタ、ただちに急行します。」
撃沈の危機に瀕しているシンプソンを防衛するように命令されたラウラは操縦桿を握り急行した。
拒否権は当然存在しない、ラウラはただロイエンタールの命令に従うしかない。
不問にされたからと言ってラウラとカゴメは無罪放免になるわけではないが、ただ生き残る為に必死に働くしかない。
今のラウラにそれ以上の選択肢は存在しないのだから。
「レミアが物を入手する前に退路を確保する、セルゲイ・・・・・お前はもう一つの艦をやれ!」
「ダー!!(了解)」
レミアが駆る僚機のSvー51は退路確保する為、レフトウィッチの僚艦に狙いを定めた。
第一目標は懸命に防戦中のシンプソン、第二目標は戦線離脱中のハシダテ。
この2艦さえ沈めばレミアが目的を達し脱出する際に逃走が容易になる。
早めに沈めないと新統合軍の増援部隊が到着し逃走は困難を極める。
シンプソンに狙いを定めたSvー51は対空防御網を突破し、ブリッジに狙いを定めようとしていた。
「よし!もらった!」
「やらせない!」
シンプソンのブリッジの前にラウラが駆るVFー1Dが立ち塞がった。
無断出撃しているラウラは何処の部隊に所属しておらず、実質ロイエンタール指揮下の兵と化していた。
バトロイド形態に変形し、ブリッジを狙うSvー51を迎撃した。
「新統合政府の飼い犬が1匹前が出ようとも防ぎきれると思うな!」
Svー51のパイロットは統合戦争からのベテラン兵であった。
祖国が地球統合政府により敗北し滅亡しており、10年経った今でも復讐の念を抱いて戦っていた。
生誕してから戦いエースの地位に相応しい実績を持っているとは言え、正規のVFの訓練を受けていないラウラは素人同然であり、しかも1機でベテランのゲリラ兵の駆るSvー51に挑むのは無謀である。
支援攻撃に徹していればまだ勝ち目はあったかも知れない、だが今のラウラの周囲にいるのはドーントレス隊とシンプソンのみ。
生きるか死ぬかの行く末はラウラの腕に委ねられていたが、VFパイロットの技能と経験の差は早々埋められない。
「飼い犬は飼い犬らしく愚かな飼い主と共にしねぇ!!!」
「あぐっ・・・・・」
歯を食いしばりながらラウラはSvー51の猛攻に耐えていた。
空戦を得意とする遺伝子を持つメルトランであるラウラだが、ベテランパイロットの駆るSvー51が駆使するドックファイトは不慣れだ。
エースの技量を持つラウラとは言え苦手分野で戦うのはごく普通の兵士より少し上の技量しか発揮できない。
苦戦を強いられるラウラの姿を見たカゴメはある事を伝えた。
「ラウラ!ヒットエンドラン!」
「ヒットエンドラン?何それカゴメ!?」
「一撃離脱、攻撃を加えたらすぐ逃げて再度反撃して!」
一撃離脱戦法(ヒットエルドラン)
目標となる敵に一撃を与えそのまま離脱し、それを繰り返す戦術である。
歴史は古く紀元前パルティア王国の騎馬戦術パルティアショットや78年前の米軍による格闘戦術に優れる日本軍の零戦対策など、様々な戦場で登場した。
格闘戦に優れるSvー51と戦うにはこの戦術しかない。
「でも・・・・」
「クァドラン・ロー!クァドラン・ローを思い出して!」
「クァドラン・ロー!?」
一撃離脱戦法を駆使し数々の敵と戦ってきたラウラだが、一撃離脱戦法と言う名前を知らずに困惑していた。
戦術の内容を聞いても必死にSvー51の攻撃を防いでいる為頭に入らなかったが、クァドラン・ローの単語を聞いて一瞬で理解した。
「エスケスタ(分かった)」
理解してからのラウラの動きが変わった。
長年愛機として駆って戦ってきたクァドラン・ローの動きを思い出し今操縦しているVFー1バルキリーの特性を理解した。
クァドラン・ローのパイロットとしての経験を活かせば十分に戦う事が出来る。
「こいつ、動きが変わっただと!?」
「形さえ分かれば私だってまだまだ戦える!」
自身の特性を理解してからのラウラは強かった。
バトロイド形態のVFー1Dをクァドラン・ローのように見立て一撃離脱戦法を実質、格闘戦を得意としていたSvー51は一気に劣勢に立たされた。
先程まで追い詰められていたラウラが逆に攻勢を仕掛け、Svー51を追い詰めた。
「私の邪魔するならばしねぇ!消えてしまえ!」
追い詰める所は徹底的に追い詰めたラウラはガンポッドの銃砲をSvー51に照準を合わせた。
上手く行ったラウラは自身の夢を壊される寸前に追い込まれた事に激怒し、Svー51に怒りをぶつけトリガーを引き弾丸を放った。
「犬が・・・・・勝ったのは・・・・・・お・・・・」
「しまった・・・・・・」
Svー51を一撃離脱戦法を用いた上で撃墜に成功したが、散り際にミサイルとガンポッドをシンプソンに向けて放たれた。
ミサイルとガンポッドの銃弾の雨を受けたシンプソンは大破、ブリッジ艦橋全員戦死。
生き残った乗員はランチにて総員退艦した。
「ハシダテ・・・・・撃沈」
違う方向でハシダテが撃沈された。
既に満身創痍であり、戦える状態ではなかったが餌食になってしまった。
ラウラの目の前には無残に破れ散ったドーントレスやVFー1Dの残骸が漂っていた。
「こちらレフトウィッチ、マナット中隊後退・・・・戦線崩壊。」
更に悲惨な報告が入った。
マナット中隊過半数を喪失し、防衛線を維持が出来ないと。
救援もなく、更に多数のゼントラーディ軍部隊を相手にしなければならない。
ラウラはその辺に漂ってたガンポッドから銃弾を抜き取り補充、過剰な分の弾薬は予備として装備しゼントラーディ軍の迎撃にむかった。
【西暦2021年1月30日】
【アームド級宇宙空母シナノ・アームド級宇宙空母アルタミラ.ランデブーポイント】
アームド級宇宙空母シナノは予備宇宙艦隊所属のARMDー213アルタミラと合流していた。
予備宇宙艦隊のアルタミラはアンサーズ中隊が母艦とする空母であり、予備宇宙艦隊所属ながら3個飛行隊・攻撃飛行隊・早期警戒飛行隊を有しておりしかも単艦で来ていた。
「単艦で来るとは度胸あるな。」
アルタミラは護衛艦を付けずに単艦で現宙域にたどり着いており、大樹は艦長のジェイル・ベレスフォード大佐は中々の強者と見なした。
単艦と言っても周辺には2個中隊しかも最新鋭機のVFー5000スターミラージュが直掩に付いており、白川提督お墨付き部隊もあってか装備も豪華であった。
大樹は煙草を吸おうとアメリカンスピリットの箱から煙草を取り出し、口に加えようとしたところ上官であるクン少佐と元部下になるシュリとリックがやってきた。
「吉野大尉!」
「クン少佐!どうしたんです?私の最後の日に?」
「緊急事態だ!ワイルダーの小隊と共に出撃してくれ!」
「出撃?」
来て早々に言われたのは緊急事態に伴う出撃命令。
大樹は30日を以てブラックパンサーズ中隊から離れアンサーズ中隊の副隊長になるべく、ランチで宇宙空母アルタミラに向かう予定であった。
最後の日に煙草を吸って一服しランチに乗ろうとしていたが、まさかの緊急事態出撃にリラックスした表情から緊張感のある表情に変わっていた。
「少佐、何があったんです?」
「アポロ基地から出港した艦隊と同時期に出航したS.М.Sの艦隊がはぐれゼントラーディ軍、第3軍にアンノンによる襲撃を受けた。」
「大型艦ともあり有効打のない艦隊は放置すれば全滅する、大尉・・・・ワイルダーと先遣隊として応援に向かって欲しい。」
緊急出撃の命令の内容はラウラ達がゼントラーディ軍やレミアらゲリラ部隊の攻撃を受け苦戦中であり、大樹は先遣隊としてクーガー小隊とジェフリーのダンパー小隊と共に救援に向かってほしいと。
救援任務の命令を聞いた大樹は煙草を仕舞い、部下のシュリとリックに近づいた。
「ベルラン少尉.ニーヴン少尉・・・最後の出撃だが着いて来てくれるな?」
「エスケスタ!勿論です大尉。」
「俺達の強さ敵に見せつけてやりましょう!」
「うむ・・・・よし行くぞ!」
『『ハッ』』
クーガー小隊の隊長としてシュリとリックを率いて戦うのは今日で最後。
本来であればランチに乗り数時間後、そのまま別れる予定であったがまさか緊急出撃で部隊長として最後の華を飾れるとは思わなかった。
予期せぬ行幸に大樹はグッと拳を握りしめた。
【マヤン級輸送艦アブサラン】
S.M.S護衛隊全滅し、残ったのは新星インダストリーの護衛のドーントレスと甲板防衛のシャイアンのみであった。
予備戦力として残りのドーントレス部隊を全機出し迎撃に当たらせるも、迫りくるゼントラーディ軍相手に防ぎきれる自信はなかった。
「新統合軍の駆逐艦1隻と戦力の過半数失った飛行隊、ヒタチアチーフ・・・ファントムは出せないのか?」
「ダメです、ファントム2号機は無事にクラビウス基地に届けなくてはいけない物なんですよ。」
「だがやられるのは我々なんだぞ!」
アブサラン艦長は新星インダストリーのアム・ヒタチア.チーフに積荷のファントムを使えないかどうかを確認したが、クラビウス基地に届けなくてはいけない物だと拒否した。
ファントムは形式番号VFーXー8と呼ばれる最新鋭機であり、VFー4000シュメブルーメをベースにした新星インダストリーの自信作であった。
ゼントラーディ人でありながら新星インダストリーに所属した天才技師アム・ヒタチアにより、ゼネラル・ギャラクシーのアルガス・セルザーの製作するVFーXー10に劣ると勝らない性能を有していた。
「敵可変戦闘機1機及び攻撃機2機接近!」
「アンノントループか!警備隊、迎撃しろ!」
レミアと追随する攻撃機2機はアブサランに防衛圏内に侵入した。
護衛のドーントレスは防戦を開始するがレミアの優れた操縦技術の前に次々と撃破され、最後の防衛線であるシャイアンが立ち塞がるも一瞬で宇宙の藻屑と消えた。
「やれ!」
攻撃機ヴェルステンはバトロイド形態に変形するとアブサランの隔壁を破壊した。
破壊した隔壁にあったのは最新鋭のVF、アムが言っていたVFーXー8.コードネーム.ファントムⅢ試作2号機であった。
レミアはSvー51Ωから降り、ファントムⅢのコックピットに移動した。
「新星インダストリー社が開発したファントムⅢ・・・・私の力になってもらうぞ。」
「レミア、首尾はどうだ?」
「問題ない、物は手に入れた・・・・・行くぞ!」
ファントムⅢを強奪したレミアはアブサランを脱出した。
ヴェルステンと合流すると戦場から脱するべく戦線離脱を開始。
アブサランに目もくれず艦から離れていった。
「ファントムⅢ試作2号機奪われました!」
「なんだと!?・・・・ヒタチアチーフ何処に行く?」
「私は元ゼントラーディ軍兵士です。ファントムⅢ奪い返します!」
「待て!機体は・・・・」
「なんとかします!」
ファントムⅢを強奪され、アムは頭に血が上り機体を取り戻すべく格納庫へ走った。
別の格納庫にはアムがこの時のために保管していた予備機がある。
しかし、いくら元ゼントラーディ軍兵士とは言えアムは通信兵出身でありクァドラン・ローや空戦ポッドで戦った兵士ではなく戦闘能力が高いわけではない。
いくら予備機に乗れたとしてもレミアに叶うとは限らない。
艦長はアムの身を案じて止めようとするが、そのまま更衣室でパイロットスーツに着替え格納庫に向かい秘密兵器に搭乗した。
「アム・ヒタチア、SDPー1スタンピード行きます。」
秘密兵器の正体はSDPー1スタンピード、マクロス艦内で開発されたVFー1の亜種である。
開発主任として新型VFに開発に携わる一方、保険としてVFパイロットの資格を持っていた。
イザって時のために密かにSDPー1を購入し改造した上で予備機として保管していた。
「私が開発した大事な機体返してもらうわよ!」
アブサランから発進したSDPー1はレミア率いる編隊を追撃した。
既に艦周辺のドーントレス部隊とシャイアン部隊は壊滅し、生き残っているのはたったのドーントレス2機とシャイアン1個小隊言う有様であった。
追撃するアムについて来れる機体は1機もいない。
「追撃機1機、まだ連中にそれほどの力が残されていたとはな。」
「相手は1機だ・・・・・私達は機体を無事に持ち帰る事を第1にせねばならん。」
「前方に1機、どうする?」
「無論、突破あるのみ!」
アブサランから離脱中のレミアからすれば追撃は敵ではなかった。
レフトウィッチはもはやはぐれゼントラーディ軍に任せても問題はないし、両軍とも疲弊している為後はそのまま離脱するのみである。
前方に1機が残りのSvー51と戦闘しているが、たかが1機すぐに撃墜できる。
「ラウラ、アブサランから未確認機が接近・・・データ照合なし。」
「データ照合なし?それはどう言う事なの?」
「分からない、でも1機は反統合系の物ではないわ。」
ラウラ達は反統合ゲリラ部隊のSvー51やはぐれゼントラーディ軍部隊と交戦中にアブサランから向かってくる編隊を確認した。
1機は未確認機であり、新統合軍や反統合系のデータに照合しない。
Svー51と戦闘し、近くにいたリガードを撃墜しながらアブサランから向かってくる編隊を目視で視認するとラウラの顔は真っ青になった。
「何こいつ!?」
ラウラの目の前に表れたのは見たことない、新型のVFであった。
国籍標記は新統合軍の物があるが、IFFに反応がない。
IFFのない新型の新統合軍のVFは無論、レミアに強奪されたVFーXー8だ。
公表もされてないので新統合軍のデータベースに入ってないのも当然だ。
「くっ・・・・」
「旧型のD型なのによく動けるわね。」
先手を取ったのはレミアだ!
ラウラの駆るVFー1Dをただの旧型ザコと認識しており、一撃で撃墜できると思っていた。
旧型のVFー1を駆っていたのはエースの実力を持っていたラウラ、そう簡単にやられる程技量は低くなく攻撃を難なく回避した。
「ラウラ、凄いわね。訓練もなしに回避できるなんて・・・」
「それでも慣れてないからクァドラン・ローの時よりかなり腕が落ちてる。」
訓練もなしにVFー1Dでレミアの攻撃を回避したラウラだが、明らかにクァドラン・ローに乗ってた頃よりも技量はかなり落ちていた。
それもそのはずVFに乗ったのは今日が初めてであり、乗り慣れてないから。
操縦方法はカゴメのサポートもあってかある程度理解しているが、まだまだ不慣れである。
「前方で戦闘?新統合軍か?」
ラウラとレミア率いる部隊が交戦開始してから2分後、アムは追いついた。
最新鋭機ファントムを含む複数の敵機を相手に旧型のD型で単身奮戦するラウラの姿を見て並のパイロットではないなと言う感想を述べた。
ヴェルステンを1機撃墜し、はぐれゼントラーディ軍のリガードを撃墜している。
普通のパイロットでなければできない芸当だ。
「こちら新星インダストリー.所属アム・ ヒタチアから前方の新統合軍機へ。」
「通信?こちら・・・新統合軍ラウラ・ベルタリア曹長.......」
「ラウラ・ベルタリア?まさかキヨラ機動戦隊のラウラか?」
「そうですけども・・・・」
「なるほどね。」
アブサランから逃走中のレミアら反統合ゲリラをと交戦中のラウラに後方から追劇中の
アムから通信が入った。
突然の通信にラウラは迷うことなく通信に応えると、アムは予想もしなかった人物の応答に驚き善人じゃない笑みを浮かべ驚いた。
キヨラ機動戦隊のエースと言われた人物が目の前にいる。
ラウラは気がついていないが、アムはどんな人物かは知っていた。
アムは先の大戦以前にラプ・ラミズが指揮していたケアドウル・マグドミラの通信兵をしていた。
面識はなかったがキヨラ機動戦隊のエース、ラウラ・ベルタリアを知っていた。
まさかゼントラーディ軍の幼いエースが生きて目の前にいる。
なんたる僥倖!目の前に表れたラウラを見たアムはこの状況を利用しようと思った。
「まぁいいわ、ベルタリア曹長・・・・目の前の新鋭機の動きを止めて。」
「新鋭機?目の前にいる敵(デ・ブラン)ですか?」
「奴は私が乗ってた艦から奪った敵なの?奪われたら色々厄介なんだ。」
「了解しました。撃墜しないよう気をつけながら動き止めます。」
言葉巧みにラウラはアムの言いなりになった。
ゼントラーディ軍に対し強い忠誠心があったラウラは軍人としての使命感にかなり弱く、言葉巧みに物事を活用すればすんなり信じてしまう。
知らずにアムの言葉を信じたラウラはファントムに対し激しい攻撃を加える事になった。
「ラウラ!?さっきより攻撃的になっているわよ!」
「えっそう?」
「動きがさっきより素早くなったと言うか・・・・」
ラウラはあんまり気がついていないが、アムに命令されてから激しい攻撃に加え機体を操縦する時の動きも良くなっており普通の一般兵よりも上の実力となっていた。
バトロイド形態が得意だと認識しており、クァドラン・ローを操っているかのような機動を駆使しヴェルステン1機を撃墜した。
「動きが良くなったな、遊び甲斐があるわけだ。」
動きが良くなったラウラと戦うレミアはこの時を楽しんでいた。
今までつまらない雑魚しかいなかった戦場に殺し甲斐のあるエースが目の前に現れた。
旧型のVFー1Dとは思えない優れた動きをするので興味津々だ。
出てくるのであればもっと早く出てくればいいのにと思える程。
だが・・・・・
「動きが良くなったと言っても、クァドラン・ローの一般エースと同じ。実力の差を教えてやる!」
動きが良くなったとは言えラウラの実力は一般エースと言う強さのレベルでは平凡であるとレミアは評価し、難なく倒せると強く確信していた。
背後からアムのスタンピードがガトリングを放ってくるが、実力は眼中にない。
ガトリング攻撃を回避しながら、残骸を足場に跳ねるかのように動いてみせた。
「こいつ、動きが速すぎる!」
飛び跳ねるかのように動くレミアに攻撃的になってたラウラの頭が冷えた。
まるで化け物が迫りくるかのようだ。
この時のラウラの手は激しく震えていた。
そうこうもしているうちにレミアのファントムⅢの顔が殺意強めでカメラ越しに現れた。
「ラック・・・・」
「性能の違いを・・・・思い知るんだな!!」
「あグッ!!」
思いっきり殴ってきた。
一時的にカメラの調子が悪くなるほど強い衝撃を受けた。
殴られたラウラのVFー1は大きく後ろに吹き飛ばされるが、脚部バーニアを駆使して態勢を整えガンポッドを構え自身が得意とするクァドラン・ローの機動戦術を駆使して抗った。
なんとか持ち直したが先ほどの勢いを取り戻すことが出来なかった。
ラウラはこの時、夢はもう無理かも知れないと諦めかけていた。
【同時刻】
【新統合宇宙軍クラビウス基地.第34格納庫】
クラビウス基地第34格納庫ではトリコロールからのVFー5000が発進準備に入っていた。
パイロットはダークカラーのパイロットスーツに身を包んでおり、左腕には軍事警察を意味する『MP』の文字が描かれていた。
パイロットは整列し、赤いヘルメットを持っている指揮官が入ると一斉に敬礼をした。
「レフトウィッチから通報が入った、脱走兵がVFー1Dを強奪し艦から逃走した。我が隊は現地に向かい脱走兵を逮捕する。」
彼らの任務内容はラウラとカゴメの逮捕であった。
実はロイエンタールの命令に反発した艦長がクラビウス警務隊司令部に密かに通報しそれを受理し、警務飛行隊が出撃する事となった。
無論、この出撃は白川提督は知らない。
「現場到着後、該当機302番機がその場にいた場合もしくは遭遇した場合は即座に拘束せよ!」
「隊長、目標が抵抗した場合はどうしますか?」
「即座に撃墜・・・・と言いたいが情報を聞き出す必要がある。逃走できないように機体を損傷を与えろ!可能な限りな。」
抵抗したら逃走できないように損傷し拿捕。
極めて穏便に見えるが、場合によっては撃墜も暗黙の了解で承認されており、不慮の事故で撃墜に至ってしまっても不問とされている。
それが地獄の鬼よりも恐ろしい集団が新統合軍警務隊なのである。
「説明は以上だ!全機搭乗!」
警務飛行隊各隊員は搭乗の一声でそれぞれの愛機に搭乗した。
トリコロールカラーに塗装された最新鋭機VFー5000は次々と格納庫から発進して行き、目的地である輸送船団襲撃ポイントへ飛び出して行った。
幻影の集団は何も事情も知らず、ただラウラとカゴメを拿捕もしくは処刑しに向かう。
そしてラウラにとって運命の出会いとなる人物である大樹もまた、自身の小隊とジェフリー率いるダンパー小隊を率いて現場に先行して向かっていた。
次回予告
爆炎の中から目覚めた亡霊、異型のバルキリーの姿にラウラは恐怖を覚えた。実力の差と性能差からどんどん追い詰められていく中、漆黒の海から黒いバルキリーが戦場に舞う。
次回 マクロス外伝蒼い髪のメルトラン
【ファースト・エンカウンター】
地獄の海にもがけバルキリー!
前回
次回