The Romance Languages(翻訳)(8) | ポルトガル語学習のブログ

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あえてポルトガルのポルトガル語中心です。
言語学ネタも少しだけ。

分析的表現の過去時制は助動詞terおよびhaver(古ポルトガル語ではaver)
を使って形成されますが、haverのほうは現在では文学的形式でのみ使用されて
います。

古ポルトガル語では、ter、haverどちらも、形容詞的に使用される過去分詞
とともに使われ、名詞の目的語と性数一致させます。

eles tiinham as azes paradas
「彼らの戦線は戦闘準備が整っていた」

huu˜s arcos que eles aviam derrubados
「彼らが打ち壊したいくつかのアーチ」

terとhaverは、ある程度は意味的に区別されます(terは「所有する、
haverは「獲得する」」が、交換可能なこともよくあります。
この二つの動詞が助動詞として登場したことがはっきりとわかっているのは
15世紀で、このころから自動詞的に使われはじめ、過去分詞と性数一致しなく
なりはじめました。

[上に出ている例文のように、terもhaverも、「ter (haver) +目的語+過去分詞」
という構文で使われていました。「(目的語)が~した状態を持っている」
というのがもともとの意味だったのだと思います。
これがだんだん、ter (haver)+過去分詞の結びつきが強くなっていって、
この固まりで一つの時制をつくると考えられるようになっていきました。]


serは、古ポルトガル語では分析的表現の過去時制を形成するのに使われ、
自動詞とともに使われることは少なかった(chegar「到着する」、
partir「出発する」)のですが、この構造は古い時代に失われ、
西ロマンス語の他の地域よりも徹底されています。

[古い時代の文献を見ると、ser+過去分詞で過去をあらわす用法が
見られます(例えば、Os Lusíadasにも出てきます)。
フランス語の複合過去(être+過去分詞)と形は同じです。]


スペイン語と同じように、構文的に助動詞のように形成される「半助動詞」が
たくさんありますが、時制、法、アスペクトの意義をあらわす動詞の迂言的表現
にそれぞれの動詞固有の意味特徴がいくらかは保持されます。

進行形のアスペクトはestarであらわされ(さらには動きの動詞、例えば
andar「(文字通りには)歩く」、ir「行く」、vir「来る」)、現在分詞(ブラジル)
、a+不定詞(ポルトガル)と組み合わされます。

estou trabalhando (BP)「私は働いています」
estou a esperar (EP)「私は待っています」

未来時制はir+不定詞で、

予測をあらわすにはhaver de +不定詞で、
eu hei de matá-lo「私はたしかに彼を殺すだろう」

義務をあらわすにはter que +不定詞で、
tenho que matá-lo「私は彼を殺さなければならない」

[ちなみに、上で出てきた「西ロマンス語」というのはロマンス言語学では
有名なロマンス諸語の分類です(言語特徴をもとに東と西に二分します)。
東と西をわける「ラ・スペツィア=リミニ線Linea La Spezia-Rimini」も
よく知られています。くわしくはこちらへどうぞ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/ラ・スペツィア=リミニ線]